第8話 記憶と意欲

<兄> ♠️

陸上には、苦い思い出がある。

走ることとセットで思い出すので、できるだけ走る必要がない様にしてきた。

そこにきて空梨さんの提案。


「どうしたもんかね」


部屋には誰もいないのに口に出してみる。もちろん、答えを教えてくれる英雄が突然現れたりもしない。

誰もが思うことだろうが、スポーツを題材に小説を書く場合は、体験しておいた方が良い。

もう10年、まともに走っていないのだ。そんな奴がホイホイ書けるテーマではない。


「・・・」


もう答えは出ているくせに、ごちゃごちゃと、「仕方なく」やる理由を探している。

足が疼く。

脳が興奮している。

分かっている。

分かりきっている。

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