第5話 憧れの熊肉
思わず目を擦り、もう一度ステータスを見る。
しかし数字が変わることは無い。
どうなってるんだ……
確かに謎の声はシロとクロを仲間にした時能力が上がったとか言っていた。
でも普通こんなに上がるのだろうか?
レベル1なのにHPが20から1000とか……
いや、最初が弱すぎたのか?
しばらく考えてみるが納得いく答えは中々見つからない。
俺はこの世界のことを全く知らない。
まだ森と狼と角うさぎしか見てないし。
そろそろ人が恋しくなってくる。
結局、情報が少なすぎるし考えても仕方ないか……
面倒くさくなってきたので考えるのをやめ、のびをする。
とりあえずまずは力の確認だ。
どれくらい強くなったのか確かめておきたい。
俺は近くに落ちている石を拾い少し先の方にある木に向かって投げてみる。
バッコーーン
「嘘だろ……」
まさかの木が抉れた。
いや、あの木が腐っていたのかもしれない。
もうひとつ石を拾い、今度は思いっきりそれを握ってみる。
ピキッ
「…………」
……握った石にヒビが入った。
石にヒビとかゴリラでも難しいのでは?
この世界での俺の力がどの程度なのかは分からないけど、絶対に握手する時は気をつけよう。
もし相手の骨とか砕けば、最悪傷害罪とかで訴えられそうだ。
異世界に行って逮捕とかマジでシャレにならん……
でも、そろそろ本気で森から出たい。
異世界料理とか食べてみたい。
それに硬い地面じゃなくてふかふかのお布団で眠りたいし。
俺はクロとシロに目を向ける。
「なあ、お前たち森から出る道とか知らないか?」
2匹は元気よく
「ワンッ」
と鳴いた。
どうやら森の出口を知っているらしい。
俺は2匹はに案内されながら森を進んでいく。
しかしこの森、本当に静かだ。
陽の光も入ってくるからジメジメしてないし、遭難状態じゃなければとても楽しめただろうな。
俺は、ボケーッとしながら歩き続けていたため前を全く見ていなかった。
「ワンッワンッ」
シロの慌てたような言葉に驚いて前を向く。
2匹は俺の前にいたはずだ。
なのに今俺と2匹の間にいるのは大きな熊だった。
「……え」
くま……森の中にくま、……森のくまさん
ふと、頭の中に有名な童謡が流れる。
あのくまさんは、熊の中でもいいくまさんだ。
目の前の熊を見る。
「ヴ〜」
めちゃくちゃ威嚇してる。
これは絶対いいくまさんじゃない。絶対仲良くしちゃダメなやつだ。
俺は昔テレビやっていたで熊肉の料理を思い出す。
クセは強いが美味しいらしい。是非一度食べてみたい。
俺は持ち歩いていた木の棒を構える。
少し前ならば勝てる気がしなかっただろう。
でも今はシロとクロもいて、俺自身も強くなったせいか全く負ける気がしない。
「ガァァァァァ!!」
熊が襲いかかってくる。
素早くシロとクロが回り込んで熊に噛みつき動きを封じる。
俺は動けない熊の頭に思いっきり木の棒を振り落とした。
『レベルが上がります。Lv1→Lv4』
結果として熊はあっけなく死んだ。ほぼ瞬殺と言っていいだろう。
レベルも上がった。ここまではいい。
問題は熊の頭に思いっきり木の棒を振り落としたことで木の棒が大破し、熊がグチャグチャになってしまったことだ。
飛び散った脳みそとかがグロすぎて食欲が下がっていくのを感じる。
シロとクロを見る。ヨダレが沢山垂れている。
うわっ…すごい食べたそう……
狼すげぇな……
「シロ、クロ、これ全部食べていいから」
2匹に言うとすごい目をキラキラさせていた。
2匹が食べ終えるまで、俺は新しい木の棒を探すことにする。
中々満足するものがない。
やっと納得いくものを見つけると俺は2匹の元へ戻り、熊を見ないようにしながら、木の根元に座る。
食欲はないものの何か食べなければ体がもたない。
俺は菓子生成でどら焼きを作り無理やり口に入れる。
ふと、前を見ると熊を食べ終えた2匹が物欲しそうに見ている。
どら焼きを食べたいらしい。
どら焼きをあげると、2匹は嬉しそうに食べる。
こいつらなんでも食うな……
2匹がどら焼きを食べ終えるのを待ち俺たちは再び出口を目指して歩き出した。
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