クラーケンの餡掛け丼の日
「ルフィナ様!! どうか、どうかッ! 本日こそッ」
――またやってる。
目の前には、ルフィナ嬢の手を無愛想男の許可無しに握る見た目も中身もクソ真面目な神官がいる。目だけが真面目を通り越し、ギラついていて……キモい。こいつ命が惜しくないのか、本気でそう思う行動ばかりで……同じ時間に店へ顔出す
手を握って
「今日もご来店ありがとうございました~」
そうルフィナ嬢の声が聞こえてきたから、今日も何事もなく扉の外へ出されたのだろうなと遠い目をしながらスープを口にした。今日はコッコの朝産み玉子スープだから、日を置いた玉子より独特の甘さが濃く感じる。
ホッとしながら、そういえばあの日もコッコの朝産み玉子のスープだったことを思い出した。
ルフィナ嬢と同じ出だが、男と女じゃ苦労もちがうとハンターになった当初は心配をした。何より、自衛力のない“魔力なし”だったのを知っていたから。
だが誰よりも強い
そんな彼女とメロに、港町の護衛依頼を終えて帰るところでばったり
港町から帰ってきて一週間後。
そろそろ彼女たちも帰宅しているだろうと、いつもの三人で依頼前の腹ごしらえに向かった。
店の扉を開くと、珍しく言い寄られているルフィナ嬢が目に入った。だってここに来る奴は、ハンターでなくとも概ねどこかで“
普通に接して欲しがるクセに無愛想を突き通すメロだから、誰も崇めたりせずに“友人”や“近所のお兄ちゃん”みたいに接しているから、忘れて言い寄ってる奴なのかとルフィナ嬢から視線を男へ移す。いや、全く知らん顔だな。ていうかアレ、着てる服といい、顔立ちからしても神聖国の神官だわ。
いつもとちがったドス黒い殺気を飛ばす無愛想男に、とりあえず何でこうなったか聞いてみた。
「…………メロ。アレ何だ?」
「
間髪入れずに帰ってきたのはゴミ発言。いいのかよそれで。
聞けば、
俺たちがメロと話し込んでいる間に、ルフィナ嬢は
「……ルフィナちゃん、さっきのは?」
「……? ああ、さっきの人ですか? ご飯食べずに五月蝿かったので“ご飯食べないなら出ていって”って追い出したよ?」
ニコニコと何でもないようにブランドと話すルフィナ嬢は、今日の丼とスープをのせたお盆を運んできてくれた。
ゴミでも普通にルフィナ嬢の飯食って口説きにかかった方がまだ見込みあったんじゃ……なんて思うけど、
一人どっちから手をつければいいか悩んでいる俺をよそに、相棒たちはそれぞれ丼とスープに分かれて手を出していた。
そんなこともあったな……と遠い目をしていたら、コトリと小皿が置かれた。爽やかな香りがたつ、皮の剥かれたジモの実が顔を覗かせている。
「これ、今朝採れたの。口の中がサッパリするよ」
小声でサービスねとウインクして調理場へ戻ったルフィナ嬢に感謝しつつ、夕日よりも黄色いジモの実を一房口へ運んだ。
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