神様の導きは誰のため
第1話 除夜の鐘と初詣
「うーん。いい人だというのは、十分知っているんだけどさぁ、なんて言うの? ときめきがないのさ」
私は友達と、話をしていた。
テストが終わり冬休み。
再来年には受験があるから、年明けは女子グループで集まって初詣に行こうという話しがまとまる。
大晦日の三十一日は、近所の神社へ行かねばならぬお務めがあるのだよ。
そう氏子代表を、家のおじいちゃんがやっていたから、世代交代でお父さんがやることになった。
年末の三十一日に神社に行って掃き掃除。
こいつは、精神修行。
掃いても掃いても、ご神木から葉っぱは落ちる。
「どうして家って、お宮の氏子代表なの?」
「昔庄屋だったから、ひいじいさんが飲んでしまったけれど、町の方までぜーんぶ家の土地だった。それに名前も
「あーそういう。財産だけ無くなって、お役目だけが残ったと……」
「そうだな」
そう言って父さんは笑う。
父さんは、結婚養子だ。
お母さんとは、学校のクラスメイトだったらしい。
そして私の横にはいつもにヘラと笑い、修行のような掃き掃除を手伝う男。
感情が常春。
なんと言うか、優しいというよりは、突き抜けて優柔不断?
何でも許すし、文句を言わない。
昔、額を切る怪我をさせたことがある。
左の眉のところ。
私が落ちそうになって、ブランコを止めたとき。
結構ガンと音がして、見たら彼は血を流しながら笑っていた。
それでも、まだ私に、怪我は無いかいって聞いてきた。
その後あわてて病院に行ったら、二針縫ったって。
今でも彼の顔には傷がある。
セパレート眉毛だって、よろこんでいたけど。
「そうそう、それで今晩は一緒に居るけれど、明日の初詣は女子会なのよ」
親がいるから、十一時を過ぎてもまだ外に居る。
年が明けると、皆に『おめでとうございます』と言いながら、祀ってあったお酒を注いで回る。
いわゆる御神酒。
だから私たちも、少し舐める。
「今年もよろしくね」
彼がそう言って微笑む。
暗くても分かる。
そうキスくらいは、幾度かした。
興味本位。
だけどその先は、求めても来ないし、痛そうだから……
あれ? そうだ求められて、一度断ったんだ。
まあ恋人ではない。
友達以上の関係だけど、恋人未満。
「あした、何処に行くのか知らないけれど、この社は龍神様だからね」
「知っているわよ、そんなの」
そう言い返す。
そうして行った初詣。
人混みの中、私は簡単に人混みに飲まれ、気がつけば誰も居なくなった。
いや人は周りに、大量に居る。
皆とはぐれただけ。
仕方が無く、お参りを行う。
そして横に来た男の子。
うちの学校で、かの有名な格式君じゃあーりませんか。
「お参りに来たんですね」
「ああ、君は宮守さん。新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします」
そう言って、きっちりしたご挨拶。
「よろしくお願いします」
こいつは正月から縁起が良いや、神様のお導きね。
私は舞い上がった。
「一人で来たんですか?」
「いや家族と、はぐれちゃってね」
そうして彼は、振り返り人混みを眺める。
シュッとした横顔、そして彼はお金待ち、スポーツも出来て勉強も出来る。
彼がどうしてうちの学校に来たのか、七不思議の一つとなっている。
「あっ、いたいた」
ご年配、彼のご両親のようだ。
「明けましておめでとうございます」
双方でご挨拶。
「あら、かわいらしいお嬢さんね」
「ええクラスメートの
彼が紹介をしてくれた。
なんだか嬉しい。
「あらそうなの、これからも隆史ちゃんをよろしくね」
そう言ってにっこり。
「こちらこそです」
そう私は、正月から最高の始まりだと思った。
それから私は、皆を探す。
そして、さっさとお参りしたことを叱られる。
皆は
問題は水の出口が竜だったこと。
「ここも、水神様なんだ」
同じ系統の神様は、仲が悪いからね。
昔から聞いた言葉。
でも私には、最高の出逢いをくれた。
そう、学校が始まり、彼と一段関係がアップした。
「隆史ちゃん、学友は選びましょうね。あの格好あまり良いところのお嬢さんだと思えないわね」
「判っているよママ」
「本当かしら、中学校の時のような騒動はやめて頂戴、大学の同門というのはこれから先重要なの」
「判ったから」
多賀恵と別れてから、そんな会話が格式家の家族で行われた。
そう彼の中で適度な関係……
意図した物は何なのか?
「ねえねえ、あの二人」
「えー付き合っているの、信じられない」
年明けの学校で、そんな噂が立ち始める。
「ねえ、天都くんあれ良いの?」
「別に付き合ってた訳じゃないし、まあ」
多少はショックだった、だけど、運命にとって多賀恵は腐れ縁と言っても良い。
学校帰りにゲームをしたくて寄って帰る。
ソフトごと持って行かれて、半年以上も帰ってこなかったこともある。
未だに帰ってこない、漫画の単行本。
まあ色々と、そして、キスはしたが、その先はなんであんたとそう言って拒絶。
運命は誰にでも優しく、人当たりは良いが、怒らないわけではない。
その閾値を超えたとき、大抵そういう人間の方が怖い。
良くある話し。
「犯人はどんな方だったでしょうか?」
「いや普段は温厚で、いい人でしたよ」
そう、いつもニコニコ、限界を超えるとぶち切れる。
彼はそんなタイプだった。
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