第4話 知らなかったこと

 目の前にある男の子の顔。

 無論男子と、こんな状態になるのは初めて。

 彼女はもう一度、キスをする。


 すると、彼のほうも受け入れてくれたのか、力が抜けた。


 あっいや待って、舌が入ってきたんだけど、何これ?

 色々な所が舐められる。

 お尻の少し上が、なぜかぞくぞくする。 

 

 これやばいかも……


 その時、歩夢は考えていた。

 そうか、状態の差はあれ、単に俺が振られただけ、今フリーなんだったら、オレが誰と何をしようと問題ないのでは?

 そう判っていても、彼女とのこの状態、沙知がどう思うだろうとか、悪いとか少し気にしていた。


 だけど……

 そう、あいつは他の男を選んだ。

 オレは何をグジグジとしているんだ。


 彼女がキスしてくれた。

 同情でも何でも良い。


 今は…… 受け入れてくれるなら、彼女にどっぷりとハマり、あいつを忘れれば良い。

 そう、今はまだ、愛のない関係。

 だが人間など、以外と単純。

 体から始まる愛もある。


 そう思い、今彼女が欲しているなら、精一杯尽くそうと彼は考えた。

 口やかましく、注文の多かった沙知を満足させるエッチ。

 それを反応を見ながら、彼女用に調整をして、彼女を満足させよう。


 そう考え、開き直った歩夢に、容赦は無かった。

 ただ彼女、陵園 咲瑠を満足させる。

 その事だけを考えよう。


 

 彼女は、色々理由を付けていたが、言いたいことは単純。わざわざ皆に言っておいたのに、それを知っていて横から手を出すなんて許せない。

 学校でのグループも、彼も、すべて奪ってやる。


 まあまとめれば、恐怖とも言える、女の恨み以外の何者でもない。

 そう…… あの子から、すべてを奪う……


 そんな考えの元に、体を張る。

 だが、彼は熟練者。

 女の子が感じる場所と刺激の強さ、それを的確に攻撃をする。

「あのね。私こういう事、始めてなの。それにね、誰とでもするわけじゃないから……」

 定型句は言っておく。


「大丈夫、判っているよ」

 彼は優しく笑う。


 とっさに、手や足でブロックもするが、それも利用されて、全身がドンドン敏感になっていく。体が熱い、汗が噴き出してくる。


 気がつけば、スカートは穿いているが、下半身は脱がされ、服の下でブラも外されていた。


 このこたつ、通常品よりも足が長いタイプ。

 彼は十分耳や首筋に愛撫を行った後、手は胸や背中を刺激しながら、こたつへと潜っていく。


 その瞬間感じる、ぬるりとした感覚。

 その刺激は、いつも自分でいじっている所。だけどこれは…… 知っているものとは違う。


 そんな中、ドアがノックされる。


「今いい?」

 入ってきたのは、歩夢の母親だった。


「あら? 歩夢は?」

 無論パニック。だけど何とかお相手をしなければ……


「えっ、今トイレかですかね。わたし、ちょっとうとうとしちゃって」

「そう。少し聞きたいのだけど、あなたたちお付き合いをしているの?」

 そんな問いなのに、彼女は間髪無く答える。


「お付き合いをしています。大好きです」

 言ってから口を押さえる。当然、すぐそばで本人が聞いている。


「そう良かった、こたつで寝て風邪引かないでね。それと卒業までは子どもは駄目よ。あと三ヶ月、もう少しだし」

 そう言って笑いながら、ぴらぴらと手を振って部屋を出ていった。

 バレている?


 もう心臓がバクバクである。

 お子さんは、こたつの中で私を舐めています、など言えるわけがない。

 安心した瞬間、動きと刺激が復活をする。


「ひゃあうっ」

 あわてて口を押さえる。


 そこからは、ひたすら我慢であった。

 もう色々流れ出して、お尻のほうまでぐしょ濡れ。

 自分でも驚き、彼が上手いのか、このシチュエーションのせいなのか? 実はもう、何回も達していた。


 そのためか、彼がこたつから這い出してきながら、実は繋がっていたときも、痛みはあまり感じなかった。

 ただまあ、籠もっていたこたつの中は、すごい匂いだったが。


 彼女は、今まで知らなかった感覚を彼に与えられながら、それを受け入れ、堪能しまくってしまった。

 もう彼無しでは、生きられないと思うほど。


 それは、生物として、女のとしての本能?


 今まで、あまり関わりはなかった二人。だけど、同じ日に同じ様なショックを味わい、傷をなめ合う。


 何だろう辛さの共感? そして傷ついている彼をかわいそうだと思うと、きゅっと胸が……

 なんとかしなければ、そう思ったらなぜだかこんな事に……


 愛される中で、彼の優しさと、私のために頑張っている? んんー上手く言えないけれど、私が感じる良い所を探し、そこを刺激する。


 そう私のために、私を喜ばせようとしてくれている。

 私だけを見て、私のために……


 なんだろう、うれしい。

 切っ掛けは、最悪だけど初めての相手が尾道君で良かった……


 行為が終わる、彼がの中で脈動している。

 すると、中から出ていく……

 少し淋しい。

「あっ」


「どうした? 痛かった?」

「ううん」

 私は彼を見つめながら、小さく顔を横に振る。

「なんだか、うれしい」

「うれしい?」

「うん、初めての相手が尾道君で良かった」

 私は素直に、彼に告げた。


「そう? そう言ってもらえると、うれしいな」

 彼はそう言いながら、汗で張り付いた髪の毛を整えてくれる。

 そしてもう一度キス。

 そのキスで、さらに幸せを感じる。


「切っ掛けはあれだけど、付き合ってくれるのかな? それとも今日だけ?」

 勇気を出して彼に聞く、私の心は、この短時間で変わってしまった。

 上辺君なんてもういい。


「陵園さんが良ければ、今オレはフリーだし」

 彼はそう言うが、すこし困った顔をする。

 どうも、私ほどすっぱりと割り切れていないみたいなのが少し悔しい。


 歴史があるものね、悔しいけれど、でもいい。

 これからよねきっと。


咲瑠えるって言ってね、尾道君は、あっ歩夢って呼ぶから」

「ああ、歩夢でいいよ。咲瑠」

 ああ名前を呼ばれただけなのに、嬉しい。

 まだ髪をなでてくれている尾道君、あっ歩夢がドンドン好きになる。


 二人で、服を整える時間が恥ずかしい。

 なんかおまぬけだし。


 ここでやっと、ケーキを食べてお茶を飲む。

 二人して、お互いをチラ見、目があうと不自然なにへっとした笑い顔。


 そして、連絡先を交換して、嬉しい事に家まで送ってもらえる事になる。

 夜遅いから、当然らしい。


「ねえ明日って」

「ああ知っている、今日の次だ」

「は? うん、そうだけど、一緒に学校に行かない?」

 その言葉にちょっとだけ止まるが、彼はニコッと笑い。


「いいよ。何時くらいがいい?」

 そう言って、受け入れてくれた。

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