優しさの限界
第1話 隣りのゆーちゃん
私には、幼馴染みがいる。
小さな頃から、兄妹のように育って来た。
お母さんに叱られても、ゆーちゃんだけはかばってくれた。
私はいつも、考え無しに突っ走るって叱られる。
でも、考えていないわけではなく、少し我慢ができないだけ。
許してくれない周りが悪い。
別に、犯罪とかしているわけでも無いし……
中学校の時も、つい店で、食べたくなってお菓子を食べた。
その時も、なぜかゆーちゃんに叱られて、そのままレジに行った。
何か説明をしてお金を払い、お店の人に少し叱られた。
中学校の二年生頃。
あるゲームが流行っていた。
だけど、家もゆーちゃんちも貧乏で、ゲームなんか持っていなかった。
家の団地とは違うけれど、近所で、ゆーちゃんと仲が良い子がいた。
男の子で、少し顔と性格が悪いけれど、ゆーちゃんとは気があうらしく、たまに遊んでいた。
その子は、
小学校の四年生くらいの時、お母さんが浮気をして別れたらしい。
ゆーちゃんは、その前から仲がよく一緒に遊んでいたけれど、その離婚後は、良くない歳上の人達と遊んでいるらしい。
その幾人かは、ゆーちゃんとも知り合いだけど、私は一緒にあそんじゃだめと言われていた。
深井 希夢は、少し荒れていた。
父親が親権を取った後、帰っても誰も居ない家。
最初は、自由だと遊んでいたが、一人っ子の弊害ですぐにつまらなくなった。
たまには、
お母さんが居た頃は、あそこの団地の子だと知られると、遊んだだけで叱られた。
まあそんな仲で、あいつは貧乏で色々な物を知らないから、小学校の時は色々な物を見せびらかしては優越感を得られる相手だった。
他の奴だと、『そんな物、当然持っているよ』と答えが返るが、こいつなら『すっげー』となる。
それは小さな自己顕示欲を刺激する。
そう彼と居ると、自分が偉くなった気がする。
だけど、時間が来れば帰ってしまう。
その内、夜にも遊べる似たような連中と彼は遊び始める。
夜中に親が仕事をしていれば、家に居なくとも判らない。
一晩中あそんでも、朝帰れば良い。
そいつらは、歳上との繋がりもあり、色んなことを教えてくれる。
そして大抵、だめだと言われることは楽しい。
寛太は困っていた。
幼馴染みの
こいつは、色々なところで危なっかしい。
お母さんの、
そう、玲奈さんは夜のお店で働いていて、麻衣は夜になると俺の家にずっと居た。
ボケボケしていて、目が離せない。
だがある日、ゲームをしてみたいと言う。
今流行のゲームは、アバターを作り、ネットワーク上の仮想空間で集まりスローな生活をするもの。
ゲームの内容的に、少し借りてと言うわけにはいけないし、本体を借りても、ネットワーク環境など無理だ。
「だぁー。仕方が無い」
いやだったが、麻衣を連れて深井の家へと行く。
「おーい居るか?」
「おっおう、ちょっと待ってろ」
インターフォン越しに会話。
カメラを見てきっとあわてたな。
ばたばた、ゴンという音が聞こえた。
階段を降りてきて、靴下が滑ったようだ。
玄関に転がりながら、ドアが開いた。
そう、ボケボケ麻衣は、玲奈さんの娘。
父親は知らないが、玲奈さんは面食いということで有名だ。
顔が良い奴ばかりと付き合い、振られるを繰り返している。
ただし、玲奈さん本人も、美人なんだよ。
もてない深井と関わらせたくなかった。
こいつは絶対、麻衣を物で釣る。
そして、麻衣は釣られるだろう。
それが判っていたのに、連れてきてしまった。
それからはまあ、ゲームをしながら、友達と話をできるレベルくらいにはやり込む。
俺は此のゲームのことを知らないから、仕方が無いが、深井鼻息を荒くして付きっきりで教える。
ちょこちょこ手が、背中だったり肩に触れるのが気になる。
ああ、焼き餅が……
おれは、麻衣が好きではあるが、こいつと一生暮らすのは嫌なんだよ。
絶対俺の心が、ストレスで壊れる。
色々な考えが足りず、人に迷惑をかける。
今までそれを見てきたし、できるフォローはしてきた。
でも、うんざりしているのに…… こいつの横に知らない男が立つのも嫌なんだよ……
「こら、深井。さわるんじゃんねぇ」
ちょっと触れただけとでも言いたそうに、こっちを向く。
「なんだ二人、付き合ってんのか?」
すごく嫌そうに聞いてくる。
「兄妹みたいなものだ」
「じゃあ良いじゃん。おれ、麻衣ちゃん気に入っちゃった。お菓子食べる?」
「いいの? ありがとう」
ああ、もうだめだ餌付けされた。
帰りに麻衣に対して、しつこく説明をする。
「良いか俺がいないときには、絶対あいつの所に行くな」
「なんでぇ?」
なんで…… だとっ…… ぐっ。
「あいつと付き合いたいのか? エッチしたいのか?」
「うーん? よくわからないし」
こてんと首がかしげられる。
「あいつと付き合うなら、俺は、もうお前と遊ばん」
禁断の技を使う。
「それはやだ……」
それを言ってしまうと、いつものことだが、泣きそうになる。なだめて、頭をなで、手を繋いで帰った。
だがまあ、この手のゲームは、せっかく作ったアバターとか気になるらしく、遊び方を知っているだけではなく、日々変化をする状況を、話しするのが楽しいらしい。
つまり麻衣は、俺に黙って行きやがったということだ……
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