第2話 引けないプライド

「明けおめ」

「あけおめ?」

「そう。隔離明け」

 恥ずかしそうに茉莉まつりが笑う。


 ハンバーガーのセットとか、アイスとか買ってきたようだ。

 今夏休みなのは、当然学生だけで、親はお仕事。


「ふぅ、今日も外は暑かったよ」

 そう言って、パタパタと自分を手で仰ぐ。

 中に居ると判らないけれど、外から入ると、暑いらしい、エアコンの温度を下げる。


 風量が上がると、彼女は立ち上がり、エアコンに向かう。

 茉莉まつりは投稿合戦の撮影途中でも、足の太さが気になると言っていたからなのか、今日は麻の薄いブルー系膝丈スカート。上も麻のシャツだが、薄くて下に着ている黒いキャミソールが見えている。


 問題は、エアコン下、つまり窓側に立つとスカートが透けて色々が見えそう。

 つい、じっと見てしまう。

 振り返った彼女と、見つめていた俺。


 えーとという感じで、妙な空気が流れる。

「うん? 何か気になるものでもあった?」

 彼女の優しさなのか……


「あーまあ、窓側に立つとね、色々と透けるんだなと。気を付けないと駄目だよ」

 そう言うと、なぜか彼女はスカートの上からばふっと股間を押さえる。


「えっち」

「はい、そうです。高校二年生のわたくし、エッチでございます」

 とりあえず、そう宣言をして、頭を下げる。


「ねえ、この前の写真、どれが良かった?」

 横に座りながら、彼女は俺の耳に顔をよせ、囁くように聞いてきた。

 肩に乗る手の平の暖かさ。

 そして距離感。

 曝し事件前よりは、距離が近い。


「なんで?」

「なんでって、何を送っても、グッドスタンプなんだもの」

 そう言ってジト目。


「いや、全部良かったし」

 さらに、超至近距離でジト目。


「えー、じゃあーぁ、その中でも一番はどれ?」

 俺は、来た写真を探す。


「これかな?」

 それは少し右上から、恥ずかしがった彼女が、胸をフレームに入れて撮ったもの。

 寝間着と、見えている撮影範囲、照れた顔が三位一体。


「えっこれ? もっと…… 恥ずかしいのも送ったじゃない?」

 うん、右手はスマホを持っているから、左手だけの手ぶらとかもあった。


 だが表情は、この初期にしていた、照れ加減が良い。


 うーんと考えて、聞いてくる。

 いや、悪い予感はした。

 元々、涼葉すずはの下着姿写真が発端。

涼葉すずはのも見せて」

 言うと思ったよ。


「えっいや。それは友人と言っても、非常にセンシティブで、コンプライアンス的にはどうだろうと考える所存でございまする?」

 そう言うと、一瞬考えたようだが、断言する。


「私が許す」

 もうびしっと。

 その時、手が伸びてくる。


「取ったぁ。どれどれ? えっ??」

 スマホを取り上げた彼女は、俺に足を向けるまでくるりと向きを変え、ずべっと寝転がった状態で、窓際にむいて一人で写真を見始めた。

 そうだよなぁ、最後には、あいつ一人エッチの写真まで送ってきたんだもの……


光樹みつき君に見られていると思ったら、すごく興奮した。今度しない?」

「ばか、お休み」

 そういう文言が最後。


 上半身をねじりながら、ギギギとでも音がしそうな感じで起き上がり、こっちを見てくる。


 そして口が、かぱっと開く。

「えっ、ちょっと待って、涼葉すずはと付き合っているの?」

 それはもう、かなり驚いた感じで聞いてくる……


「付き合っていない。よく見ろ。百花ももかから例の写真を送ったことをバラされた後、自分で見られたと思って、奴が勝手に興奮し始めて、送られてくる写真がどんどん過激になってきたんだよ……」

 そうして、見直していた彼女の手が止まる。

 今は、俺に足を向けて仰向け。


「あっこれ、動画……」

 彼女は、ポチッと押す。


「あっうん。だめ光樹みつき。そこ感じちゃう。あっああっ」

 少しハスキーな涼葉すずはの声が、スマホから流れる。


 その動画、俺は気がついていなかったが、見られていると彼女が言っていたとおり、最後まで五分ほど撮影をされていた。

 光樹みつきは動画だと気が付かず見ていなかったが、映像の中で涼葉すずは、の体、一部分が動画で分かるくらいずぶ濡れ。


 茉莉まつりは途中、「えっ」「そんな」とか言いながら最後まで見たようだ。

 俺は氷が溶けて、ぬるくなったジュースをすする。


 そして、横をふと見ると寝転がっていたはずの、茉莉まつりはいつの間にか俺の横にいた。


 ガバッと抱きしめられて、一緒に倒れ込む。


 そう、まだ昼過ぎ、親は仕事。 

 時間はある。

 若い男女。

 動画により、撒き餌はされた。


 当然……


 涼葉すずはに負けたくない。

 今確保をしないと、取られるかも。

 茉莉まつりの心の中に潜む悪魔が、そう断言をしたらしい。

 器用に俺は、床側へと引っくり返される。


 茉莉まつりはおもむろに、俺にキスをしながら、服を脱がし始める。

 そうは言っても、俺のズボンだけね。

 ニョロンと出た、大事な部分が、握られる感触。


「えっなんで、私なんかじゃ…… むう」

 少し彼女は考えると、顔が俺の下半身に向けて移動する。

 すると、ぬるっとした感覚。


 怒濤の展開にパニックだが、男のこぉー。

 感覚を受けた瞬間いきなり大きくなった。そのせいで、むせたようだ。

 やがて彼女は満足をしたのか、はい上がってくる。


 もう、彼女の顔はものすごく照れて、そしてすごく真っ赤。

 なんなら少し涙ぐんでいる。

 だが行動は止まらず、俺の上にゆっくりと座り込む。


「ひうっ」

 うーん痛いんだろうなあ、顔がそれを物語っている。


「駄目そうなら、やめた方が……」

「駄目、やめてなるものか……」

 そう言いながら、その様子を、自分のスマホで撮影していた。

 スカートなら見えないのに、わざわざ捲るから、その視覚的刺激で俺のはさらに元気になる。

 当社比二倍くらい?


 その所為か、彼女は痛みと涙をこらえた不思議な笑顔。

 やってやったと満足そうで、数分だけで俺の我慢ができなくなった。

「あっ、ちょっと駄目」

 おれがそう言うと、彼女は理解をしたのだろう。上から退き、またぱくんちょと……

 どこで覚えたんだ、そんな事。

 まあおれ的には、最高だったけれど。


「無理しないでいいのに……」

 彼女の頭をなでる。


「駄目よ、勿体ない。それに、これが私のつくし方。したいときにはいつでも言ってね」


 その晩、俺に対して涼葉すずはから『いやぁぁー』と言うスタンプが連打された。

 きっと茉莉ライバルが何かをしたのだろう。


「あっそうか、明日行くね、午前中居る?」

 そんな文言が飛んでくる。


「居るけど?」

 秒も置かずレスがくる。


「何か買っていくね♡」

 その日、彼女達の間で、何があったのか俺は知らない。

 ただ二人の行為は、これから、エスカレートしていく。

 そう高二の夏休みは、非常にただれた生活となる。


 そして、中途半端に何かを知った百花ももかは、暴走を始める。

 いつもの様に……

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