タイミングの重要性

第1話 知らないうちに

何時いつからなの?」

 信じられない事に、友人からコミュニケーションアプリで誤爆があった。

 たぶん、涼葉すずはから、光樹みつきへ向けたえっちなポーズ。


 だから私は、問い詰める。

「何が?」

「彼女…… 付き合っているんでしょ?」

「―― 付き合ってはいないな」

 この間、やっぱり……


「でも…… えっちな写真を送る仲なんでしょ」

「んーまあ、茉莉まつりとは……」

涼葉すずはと……」

 彼と私、声は同時。でも相手が違う。


「えっ?」

 当然お互いに驚く……

「へっ? 茉莉まつり? ちょっと待って、えっ?」


 涼葉すずはは誤爆ではなく、新しく買ったちょっとセクシーな下着を見せびらかしたいだけで、M字な格好とかで送ってきた様だ。

 そう、普通ならその位じゃ誤爆だと思わないけど、普段がねえ。

光樹みつきくんが好き」

 あの子は、こんな台詞を、私に向かって平気で言う。


 そしてこの二人が、コミュニケーションアプリでIDを交換するのを、仲介したのが私なのさ。


 そう私は、光樹みつきと幼馴染み。

 でもヘタレで、中学校三年生の時受験勉強とか、ほとんど一緒に暮らしてた。

 それなのに、告白すらできない。

 光樹みつきはモテたけれど、高校に入って背が伸びてからは手がつけられない。


「髪をかき上げて、フッとか言えば、それだけで幾人かが恋に落ちる」

「それは百花ももかのひいき目だよ、全然そんなことなんかないし」

 そう言って、彼は困った顔をして笑う。


 ―― 実は、百花ももかというのは、思い込み突っ走り野郎なので、恋愛対象にはならない。小学校の時から彼女のおかげで、俺は碌な目にあっていない。


 腐れ縁的に、一緒にいるが、もうね。



 花火大会、百花ももか涼葉すずはは丁度熱を出して来なかった。


 そして、茉莉まつりが、待ち合わせ場所にいた。

 浴衣姿は普段と違い、ドキドキするには十分だった。

 普段の振り回されるだけの花火大会とは違い、ゆっくり楽しめたし、暗い中で、一瞬だけ照らされる横顔。

 もう十分だった。


 帰りに、あまりに人が多く、少し避けるために神社側にはいった所で告白をされた。

「ずっと言いたかったんだけど、ずっと横に百花ももかが居るから言えなくて、付き合っていないんだって?」

「そうだな、腐れ縁かな」

「じゃあ、もっと早く言えば良かった」

 そう言って、妙に目立つ赤い唇が、近寄ってきた。


 そう告白を受け、初キスをその日にした。

 だけど、まだ付き合ってはいない。

 なぜか、俺の心にストップがかかる。

「ごめんな」

「いいわよ。今更あわてないわ」

 そんな状態だが、仲は良くなった。



 そして、今こいつの何度目か分からない勘違いから、いきなり付き合っているでしょと来たんだ。

 思いっきり驚いた。

 

 でまあ、名前が違う。

「なんだよそれ?」

「ちょっと確認をするから、ああ疑惑の写真そっちに送るから見ておいて」

「はっ?」

 すぐに着信。

 見るけどさ、涼葉すずはの下着姿でエッチなポーズ良いのかな? とりあえずセーブ。


「はっ何それ? そんな物見たって嬉しくないわよ、あんた私より二センチ大きいからって調子に乗りすぎ……」


 電話を切って、脱力中の百花ももか

「そんじゃあな」

「うん、ごめん」


 部屋から出て、階段を降りようとしたら捕まる。

 気がついたようだ。


「ねえさっき、茉莉まつりがどうとか言っていなかった?」

「いや祭りに行けなくて、残念だったなと」

「あっお祭り…… ごめんね熱が急に出ちゃって、検査をしたら流行病で、今待機中なの」

 簡単にそう言われて、俺は驚く。


「馬鹿野郎、そんな時に呼ぶんじゃねえ。濃厚接触者じゃねえか」

「濃厚接触? えっキスだってしてないし、会って話をしただけだよね」

「そう言うのを、濃厚接触と言うんだよ」

 思わず、頭を抱えてこめかみをグリグリする。


「ええっ? エッチしたりじゃないの?」

「………… 帰る」

 何か言っているが、バカは気にせず帰ることにした。


 熱は出ていないが、俺は真面目に五日ほど部屋に籠もった。

 むろん、まともな奴とはやり取りする。

 それ以外は既読スルーだ。


 だが、どこから回ったのか、涼葉すずはの下着姿写真が俺に回ったことが暴露されたらしい。


 涼葉すずはから俺に向かって、訳の分からんスタンプが連打される。

 その後ぽつりと、問いがくる。


「どう? ドキドキした?」

「あーうん」

 とだけ返す。


 するとだ、真っ赤な顔でニューバージョンが送られてきた。

「おお、ありがとう」

 返す返事に困った俺は、そう返した。


 高校二年生の多感な俺を、完全にこいつは殺しに来ている。

 キス顔のアップとか。

 来る度にグッドスタンプを、即押していると……

 涼葉すずはから来る写真が、そう、過激になってきている……


 そう、なんと言えばいいのだろう。

 セルフヌードから、一人エッチ?


 そして同じように、涼葉すずはの下着姿写真が俺に回ったことが暴露されたあと、茉莉まつりからもそんなの見ちゃ駄目と言って、写真が送られてきていた。

 無論、グッドスタンプは連打。


「えっ、こんなのが嬉しいの?」

「うん、嬉しいよ」

 当然返す。


 そうすると、こっちはこっちで、写真と共にどれだけ思っているとか、好きとか、どんなポーズがいいとか質問が来る。

 隔離中は、そんなこんなで、俺の心の中に変なものが溜まっていった。

 

 そして、その時はやって来た……

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