第5話 混乱の末に

 咲希はノーパン。

 その向こうに、結衣がいるが、丸太にまたがっている?

 いや、ちがう。


 それを覗き込んでいる、和奏。

 愛菜がスマホまで構えている。


「それって、寺田? お楽しみ中だったのか、すまない」

 すかさず咲希は、優太の顔を掴み、テント内へ引っ張り込む。

 普段の動きからすると、信じられない素早さだった。

 寺田の腹に、倒れ込んだ咲希の頭がめり込む。


 咲希の胸に抱えられた優太の顔。

 一瞬の静寂の後、みんなは状況を理解する。


 興味本位で始めたおバカなことを、優太に見られたぁ。

「口止め」

「記憶の上書き」

 結構物騒な言葉が飛び交う。


 優太はいい加減、息ができずジタバタ。

 咲希の腕に抱えられた状態で、なんとか顔を上げ気道を確保。

 だがその行動で、ビキニトップ の結び目がほどけてしまう。


 咲希は、まだ気が付いていない。


 だが周りから見ると、咲希を優太を襲っているように見える。

「それは駄目。それならあたし」

 謎の、張り合いが始まる。


 テントからはみ出していた、優太の足がずるずると引っ張り込まれる。


 外からそれを見ていれば、ジタバタする足がテントに飲み込まれていく。

 まるで優太がテントに食われたかのように見えただろう。

 とても恐ろしい、夏の日中に起こったホラー。


 だが、中では優太は押さえ込まれて、多少もうろうとする意識の中で考えていた。

 七海の映ったあのビデオは、やっぱり消して貰おうと、寺田に頼むために探していた。


 一通り探したが、見つからない。

 寺田が沖まで泳ぐなど、絶対に考えられない。


 通りがかると、少し騒がしい女子のテント。

 八人用の大型だが、締め切られているようだ。


 どう声をかけようかと入り口で考えていると、咲希が顔を出したので、説明をした。そして今、引っ張り込まれた。


 今ここだが、さらに体がひっぱり込まれて、なんか一気に脱がされた。

 顔は、咲希の胸に埋まっている状態。


 咲希は咲希で、必死で掴んで確保している優太。

 このテントの中を、見られてはいけない。その思いで必死になっていた。

 多少、息や髪が胸に当たるのが、なんだかこそばくむずがゆい。


 少し状況が混乱しているが、テントを入ると、まず見えるのが咲希のもろだし下半身。

 引っ張られたために、咲希の胸から丁字型に優太。

 それに並んだ、もろだし寺田。

 その胸の上には結衣が、まだ座っている。


 腹ばい状態の優太から、肉食女子である和奏が水着を奪い去る。

 愛菜はスマホを構え多少オロオロしている。


「ああ、だめ」

 和奏は優太の足を持って、仰向けにしようとするが、首は咲希がぎゅっとホールドしている。

「折れる。くびぎゃおれりゅ」

 優太がたまらず叫ぶ。それを聞いて、咲希の手が緩む。

 くるりんと回転し、待ち望んでいた優太の物が…… でもか弱い。


 経験が無く、すぐに反応をしまくる寺田とは違う。

「あっ、ええと、これ使えるようにするには、どうすれば?」

 困惑する和奏。

 愛菜がおもしろがって指導をする。


「ほれ、ぱっくりと行け。噛まないようにね」

「えっこれ? おしっこするとこでしょ」

「優太のだよ。今食べないと、こんな機会もう無いかもよ」

 みんな、相当頭がおかしくなっていた。

 和奏はおそるおそる、チロチロと舐めた後、咥え始める。


 優太は回転できて、なんとなく自身状況も理解できたが、首を咲希にキッチリとホールドされていた。


 そう、軽くだが頸動脈を絞められている状態。

 足の上には、和奏が乗っている。

 太ももの上に乗っている胸。


 動かせるのは手のみ。

 それに目をつけたのは、結衣。

 優太の左手を持って来て、自らの股の間へ。


 そう至近距離で、寺田は見ている。

 また彼の物が反応する。


 そこからは、そうサバト。

 みんな、どこかおかしくなっていた。

 少し酸欠で頭痛がし始める頃、その非常識な世界は終わりを告げた。

 問題は、どさくさに紛れ、寺田は男になった。


 のちに彼は語る。

「人間一生に一回くらい、最高のチャンスを迎えることがある。それを確実につかみ取ることが重要なのさ。まあそこがピークだけどね」

 今の奥さんとの出逢いは、その時だったようだ。

 している動画で脅したとか……

 今は、何かにつけ、離婚するわよとおどされているとか……



 さて、そんな馬鹿騒ぎの最中、テントへ誰も来なかったのはなぜか、そう、一晩落ち込んだ黒瀬は、泣きの一回をお願いして、七海の手を引き、岩場の奥。

 みんながいる浜からは見えない、奥まった感じの砂浜へ連れて行く。


「キスはしないでよ、それときちんと満足させて」

 優太には見せない態度を見せる。


「あっああ。頑張るよ」

 七海はシースルーのビーチウエアを着たまま、水着だけを脱ぐ。

 ひっぱられて、破けるのを嫌がったからだ。

 黒瀬は跪き、入念に愛撫を始める。


 だがその岩場、係留されたボートから丸見え。

 そしてトイレはボートにあり……


 大谷や遠藤により、黒瀬の必死な行動は記録された。


 何もなかった様に、夕方には荷物をかたづけておじいさんの家へ帰る。

 塩水でゴワゴワだった髪や体を洗い流してほっとしていたが、七海や黒瀬は少し違和感を感じていた。


 そうみんなの距離感がおかしい。


 それは帰りの電車でも。


 駅に着き七海はいつもの様に、優太へと手を伸ばす。

「帰ろ」

 後ろめたいが、確かに何時の顔はできていたと思う。


 だけど……

「良いのか? 黒瀬、行っちまうぞ」

 彼の返事はそんな感じで、ひどく冷たく……


「なんで、黒瀬? あれは、彼がボートで送ってくれたりしたから、ちょっと持ち上げただけよ。みんなだって」

「あら? 私たちあんたみたいな事までしないわよ。ねー、ゆうちゃん」

 結衣が優太の肩に、肘をかけてもたれる。

 ゆーちゃん? なんで、言葉も態度も、いつからそんな? なれなれしい……


 そう、結衣や和奏が優太の両側に立つ。

 愛菜は一歩出遅れ、咲希は渋々寺田と手を繋ぐ。


 その光景は、大谷や遠藤に突き刺さる。

 せっかくのイベント、気が付けば、優太の一人勝ち。


 その鬱憤を晴らす。

 印籠のようにスマホが突きつけられる。

 そこには、黒瀬に奉仕させる自分の姿。

「なっ」

 つい手が出るが、スポーツ得意の大谷。

 反射神経は良い。


「そんじゃあ、優太のおごりでカラオケでも行こうぜ」

「ちょっと待て、何で俺が」

「当然だろう」

「私たちも出すわよ」

 彼らは、楽しそうに去って行く。

 

 それからしばらくの期間。「あれは、雰囲気で…… ただの気の迷い。もうしないから、あいつとはもう会わないから……」家に来ても入れないから、スマホでうだうだ言っていたが、諦めたようだ。


 そしてその日、結局来たカラオケ。

 そこで、大谷や遠藤はどん底にたたき落とされた。


 咲希が寺田と付き合うことになったと発表。


 そうあの時、咲希は必死で優太を抑えていて、出遅れた。

 優太が引っ張られて奪われ、状況に気が付いたとき、彼は猛獣共に食い荒らされていた。

 屍状態の優太…… とても混ざれない。


 呆然としている咲希の肩に、そっと手が置かれる。

「僕たちも楽しもうじゃ無いか」

 元々、咲希は全裸。


 のし掛かるエロ魔王、勉強熱心なこともあり上手い。

 そして、綺麗とか汚いとか躊躇をしない。

 敏感な所を、舐められまくってしまった。

 そう初めてなのに、彼女は快楽の深淵を見せられた。


 そして……

「もう、僕たち恋人同士だよね」

 そう言って、横にねころがり、頬杖をついて私を見下ろしながら、にやっと笑う彼。

 胸の敏感なところを刺激していた手が離れる。

「あっ」


 彼の手にはスマホがあり、映っていたのは『僕のこと好き?』『―― 何でも良いから、もっとぉ』そんな事を言ってみだれている自分の姿。

 そう…… そんな事を聞かれてすぐに、彼とのキスを再開。

 彼のキスは、脳を蕩けさせる。


 彼女は、寺田の手を取った。


 人は、一度経験してしまうと、強烈な快楽に贖えない……

 依存症の論理。

 離れても時間がたつと、体が求めてしまう。

 悪魔のような男、寺田。彼は目覚めさせてはいけない男だった。

「ふふっ、ここはどうだい?」

「あああっ」


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 お読みくださりありがとうございます。


 気が付けば、寺田が主人公の感じになってしまいました。


 えー、未成年の飲酒、不純な異性交遊は犯罪です。

 演出として書かれていますが、極力…… できれば…… マネをしないでください。

 また岩場での、魚介類の採取は違法な場所があります。気を付けてください。


 ではまた。

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