第4話 秘密と混乱

 昨日……

 七海の行動は見ていた。

 そして、優太も気になっていた。


 そしてそれをわざわざ言うために、結衣達が周りに来る。

「あれ、いいの?」

「まあ今日のは、黒瀬のおかげだし、あいつがじゃなく、どう見ても七海がしたくてやっているんだろう」


 甲斐甲斐しく、黒瀬の世話をしている。

 むろん、他の子も、一応このイベントのホストとも言える黒瀬には、気を使っているが……

 その行動は、少し常識を超えていた。


 それは分かっていたが、そう最初は黒瀬の犯罪行為。

 トイレへ行った、七海が襲われた。

 気が付かなかったことが悔やまれる。

 だがここは、仲間しか居ない閉鎖された海。

 本当に、まさかだった。


 だが、映像が進むにつれ、七海はぎゃくに奴を求める。

「これはもう、強姦じゃ無いな」

「いまは、不同意性交な」

「何でもいいよ」


 いま、彼らがビデオを見ているこの時間、本人達の心の中では、黒瀬も七海も失敗だったと理解をしていた。

 黒瀬の頭の中で繰り返される『お粗末ね』と言う言葉。

 これのおかげで、一晩中寝られなかった。


 七海は、初めて別の男として、積み重ねた歴史そして優太との相性を理解した。

「あの事は、絶対内緒ね」

 黒歴史として、封印をすることを決意する。


 だがその一回の過ちは、見られていた。

 人間悪いことはできないようだ。

 いや、それが彼たちの人生においての試練か運命か、先祖の導きか……


 その目撃談は、優太に口止めされたが、寺田の願望を満たすための撒き餌としてばら撒かれる。

 女の子としゃべりたい。

 その利己的な望みの前に、抑止力とはならなかった。


「誰にも言うなよ」

「なによ寺田」

 こうやって、映像と共に広がっていく。


 二日目、みんなは何事もなかったように泳いでいる。

 昼からは、片付けをして夕方には帰る予定。


 慣れない海水浴。

 意外と疲れがあり、昼食後だらだらと過ごしていた。

 ビーチソファーに寝転がる結衣の元に、寺田がやって来た。

「誰にも言うなよ」

「なによ寺田」

 

 そっと見せられるスマホの画面。

「企画もののエロ動画?」

 結衣は意外と人当たりがよく、寺田とかにも普通に接してくれる。

 少し男ぽい女の子。

 下ネタも平気。


「これって…… あーららっ。優太君は知っているの?」

「ああ見せた」

「みたんだぁ」

 そう言っている、結衣の胸の先端が、つんとなっていることに気がつく。


 つい指先で突っついてしまった。

 ボタンがあれば押してしまう本能のような物。

「あんっ。さわるな」

 睨まれた。


 だがとがめるより先に、スマホを奪い、愛菜や咲希のいるところへ行く。

 みんなを誘うと、テントへと入って行く。

 それに、のこのこと付いていく寺田。


 一緒に入っても叱られなかった。

 女子側のテント、思わず深呼吸。


 スマホから漏れ出る音声、つい小さなテントまで張ってしまう。

「知っている人のこう言うのって、なんかくるのがあるね」

「でも、優太君どうするんだろ。これって知っているの?」

 和奏が寺田の方を向く。


「本人も見た」

「そうなんだ…… てなんで、あんた大きくしてんのよ」

 みんなが一斉に見てくる。


「そもそも、なんで寺田がここに居るの?」

 いきなり追い込まれる。

「いや俺のスマホ……」


 焦り始めた寺田だが、和奏がとんでもない事を言い始める。

「そういえば、男子って出るんでしょ」

「そうそう、おしっこみたいに」

「えーみたい。でも、寺田きもい」

 そんな事を言われて、開き直る。


「ばかやろ。ここはそんなに違いは無い」

 思いっきりセクハラ。

 一世一代の度胸を決め、自分の海パンを下げる。

 ピンと跳ね上がる何か。

 叫び声は上がらず、集中する視線。


「あーお父さんの、こんな感じだった」

「弟のと全然違う」

「口々に、観察と意見が飛び交い相談が始まる」

 男兄弟が居る、結衣と愛菜は意外と見慣れているし、興味が勝つ。

 それとも、まだ酔っていたのか……


 いきなり、寺田は押し倒される。

「撮影する」

 愛菜がそんなことを言い出す。

「ええ? 気持ち悪いよ」

 咲希がそう言うと、結衣が答える。


「出てれば良いじゃん。そうだ外見張っといて」

「えーそれはそれで、やだ」

 そう、興味はあった。

 知識としては知っているし、だが、実際見たことはない。


「誰がする?」

 押し倒された寺田の胸の上には、結衣のお尻が乗っている。

 かれは、状況よりも、薄い布一枚を隔て乗っているお尻を凝視する。


 当然、彼の一部はそれにより限界まで大きくなる。

「直接触るのは、汚そうでやだ」

「アルコール消毒する?」

「ビニール袋かぶせて、上からなら大丈夫じゃ無い」

 なんか結構ひどい相談をされる。


 そんな中、咲希はやっぱり嫌で、外へ出ようと入り口を捲る。

 大人数で、テントの中。

 中はサウナ状態。


 捲ったところから吹き込む風が、気持ちいい。

 そんな事を感じていた咲希だが、目の前に驚いている優太の顔。


 しゃがみ込んで、顔の位置を合わせて優しく聞いてくる。

 あんな事があったのに。

「寺田を知らない? 探しているんだけどさ、見当たらないんだ」

「えっ。あっ」

 知っているが、流石に優太に見られたくない。


 テント内で、行われている凶行をやめるように、手をパタパタする。

 だが、何を考え違いをされたのか、水着がズリ下げられた。


「やっ、何すんの。違う」

 テントの中を覗き込む。


 すると、咲希の大事な所が寺田の目の前に。

 それだけで、彼は発射してしまう。

「ぎゃあぁ」

 叫び声が上がり、心配になった優太は、一応声をかけて中を覗き込む。


 そう…… そこには、混沌があった。

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