第2話 七海の気持ち

 七海は、優太のことを兄妹のように。

 そう家族のように思っていたが、中学三年。ある日を境に、違った意味で家族となった。


 他の子に興味も無かったし、自分がそんなに優れているわけでもない。

 そんな自分が、背伸びをしないで気楽にいられる相手。

 それが優太だった。


 ところが、高校一年の途中から、優太の人気が上がっていることを知る。

 気が付けば背が伸びて、百七十センチを越えてきていたし、夏服から出ている腕などもかなり太くたくましくなっていた。


 自分が、命令したとはいえ勉強も頑張っているし、知らないうちに注目度が上がっていた。

 なんと言うことなの。

 彼が水面下でモテ始めたため、彼女は頑張った。

 エッチを……


 だが魔の三年目。

 そう世で言う、幸せホルモン。フェニルエチルアミンの大放出が脳内で終わる。

 人類という種は、子どもが一人で立ち上がり、普通の食べ物を食べ出せば、大昔は夫婦が終わっていたのかもしれない。



 そしてその影響なのか、七海の心に不安が生まれる。

 そう心の不安を、彼女は努力ではなく、見せつけて焼き餅を焼かそうと思い始める。


 本当に好きなら、焼き餅を焼いて愛してくれる。はず……

 その自信はどこから来たのか?

 そう、彼女は普通。

 まあ、優太もそんなに格好いいとか言う類いではない。


 だが、安易にそんな選択を取ってしまう。

 そして降って湧いたイベント。


 当然仲良しグループ、飛び抜けたキャラはいないはずだった。

 だーが、しかし。ダークホースの黒瀬くん。

 運動は出来るが、勉強はあまり得意では無い。

 そうこの年でも、結構子どもぽいイメージ。

 それが彼だった。


 しかし、おじいさまのお家。

 広いしでっかい。

 食べさせて貰った魚介類。

 好き。ここの家の子どもになりたい。


 それは、七海だけではなく、ここに参加した女の子、幾人がそう思ったのか?

 女性軍、七海、結衣ゆい和奏わかな愛菜あいな咲希さき


 魚が不得意な、和奏は拒否反応。


 家はすごいし、おじいさんは優しいけど、黒瀬だしなあ。

 そう考えたのが、愛菜と咲希。


 とりあえず、このお家何坪だろう?

 ボートや農機具、売ったら幾ら?

 そんな興味を持ったのが、結衣。


 そう、ライバルがいなければ、幾らでも正気に戻る機会はあった。

 だが、結衣は意外と狐さん。

 ふーん。七海ったら、鉄壁の関係。壊しちゃうんだぁ。

 家の中を興味ありげに観察しながら七海の態度が怪しくなる。

 そして、ちらちらと黒瀬を見ている雰囲気。

 結衣はそれに気が付いて、にんまりする。

 優しい優太君でも、決定的な現場を見て許すかなぁ?


 片や男のほうは、平和だった。

「すげえじゃん、黒瀬」

 単純にすげーを言っているのは、遠藤 亮太えんどう りょうた


「ああ。能ある鷹に小判だろ」

 にやっと笑いながら、この馬鹿な答えは、黒瀬 海翔くろせ かいと


 なんだ能力があれば、金が稼げるとでも?

「…… ああ、そうだな。豚に念仏的な?」

 これは、大谷 秀一おおたに しゅういち

 一番頭が良い。運動も出来る。フツメン。


 馬でも、豚に念仏でもまあ通じる。

「そっちの方が、意味が通じそうだな」

 どうでも良いが、豚に真珠は、新約聖書からの引用らしい。


「うん? どうした優太」

「いや別に……」

 優太は見てしまった。

 スマホで何かをしている寺田 喜一てらだ きいち

 彼は、ヘッドフォンをつけて、エロ動画を鑑賞していた。

 見なかったことにしておく。



「七海。えらくぽーっとして、お家を見てたけど」

 結衣が深い意味は無いが、興味を持ち七海に聞く。

「ああうん。家のおじいちゃんの家も田舎だけれど、こんなに大きくないから、すごいなーって」

 お家が妙に大きな理由。それは、私が話しを聞いた。

「昔、この辺りの網本さんだったみたいよ」

「網本さん?」

 七海の言った、網元、アクセントがおかしい。


「??」

「それって人の名前じゃなくて、船とかを持っていて、人に貸して上前をはねていた人じゃないの?」

 和奏が、めがねをくいっとしながら、説明をしてくれた。


「多分正解だけど、聞こえが悪いよ。レンタル屋さん? とか」

 愛菜がいつもの様に、ぽやっとした感じで話しに入ってくる。


 その答えに、皆がそうなのかと納得をする。


「へーやっぱり、お店って儲かるのね。雑貨屋さんをやりたいのよね」

 咲希が嬉しそうに暴露。だが少しおかしい。


「そんなのって、経営とか、そもそもお店を開くお金とかいるじゃ無い」

「ああうん。最近は、ネットに販売店を出すの。稼げたら実店舗」

「へーそうなんだ。ネットならお客さんはいるから、後はセンスね」

「そうそう」


 そこで、結衣が咲希に聞く。

「黒瀬に言ったら、金出してくれそうじゃん」 

 その瞬間に、咲希の表情が崩れる。

「いやあよ。金が出ても、売り上げよこせとか、それだけじゃなくて、その…… 体までとか言いだしたらどうするのよ? 私あいつとキスするのいやぁよ」

 どれだけ自分に自信があるのよと思ったが、横で愛菜がうんうんと同意をしている。


「えーでも。最初だけ我慢すれば慣れるっしょ」

 結衣がいうと、皆があり得ないという顔をする。


「えーそこまで??」

「うん。あれは駄目よ。まあ顔は我慢できても、自己中だし」

 愛菜がダメ出し。


 それを聞きながら、七海は悩む。

 そうリスクはある。

 条件とタイミングでは、その手のことをされる可能性はある。

 黒瀬はきっと、やめてと言っても止まらないタイプ。


 そう、でも、優太は好きだけど、目で見た財産はインパクトが大きかった。

 田舎で、海沿い。

 地価が幾らなのか、そんな事は全く知らない七海。


 そう大波が来たら浸かり、台風が来れば高潮にあう。

 この辺りは、意外と安い。

 半島になっているため、最寄りの駅から数キロバスで来たのに。


 心理状態とは恐ろしい。

 貶されれば気になり、褒められては気になり、普通ならそうはならない。

 だが見た瞬間、欲望が暴走をした。利用しようと考えたために、自分が思うより前のめりになってしまった。

 そう、大きな家に目が眩んだ……


 それは若さのためか、単に七海がおバカなためか。

 翌朝、彼らは出発をする。

 男達は寺田のせいで、色々なところを膨らませて……

 

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