第2話 従姉妹のお姉ちゃんと、二人がかり
「そうねえ。元はそんなに悪くないから、とりあえず彼をモテる感じで仕上げて、あっでも、等しく才にたけた者が居ないと。そうよ二人揃ってはじめて、神の作りたもうた光景が見られるというもの……」
お姉ちゃんに聞こう。
そうして、彼女は連絡をしてしまう。
軽く相談をしただけなのに。
その瞬間、彼は片足が罠に落ちてしまったことに気が付いていない。
蟻地獄の待ち受ける巣に……
そしてその巣には、二匹のやばいものが待っていた。
だがまあ、美しい男を見ようという執念は、彼女にはかなりのものがあり、欲望に忠実な
そこに現れた、大学生の女。
彼女は、十八の頃に付き合っている彼がいた。
ふとした喧嘩の時に言われた言葉。
『かまととぶって、つまらん奴』
そんな事を言われて、あげくに捨てられる事になった。
別にぶっているわけではなく、彼女は単なる無知だった。
ベッドの中でも、寝転がり体を硬くしたまま。
ただ、されることに従っていれば、まだましだったかも知れないが、くすぐったいから嫌、そんな事は嫌と口にしていた。そう彼女はある面、素直だった。
二人で盛り上げるとか、そんな事は、思いもよらないこと。
そう、繋がって相手が果てるだけの行為。それで、相手が満足をするなら。彼がしたがるから仕方なく相手をしていた。
そうその先を、考えてもいなかった。
愛し合うと言う意味。
自分も感じて、いけるという事など知らなかった。
振った男の方は、逆にアダルトなビデオを見過ぎていた。
妙に後ろの穴に執着があり、指を入れられたこともある。
まあ良くある、何穴責め系? その影響だろうが、同時にすれば、それで喜ぶと本気で思っていた。
女の子と付き合ったのも、彼女が初めてだった。
だが彼は、見栄を張る。
「幾人もの関係があったが、その中でも最悪な女だ」
こんな暴言を吐き、それから関係はギクシャクして、結局別れることになる。
悲しみに暮れた彼女は、付き合いをすっ飛ばして、行為について真面目に勉強を始める。そして…… 体験ではなく、頭で理解をする。
その深さと、特殊性。
性癖という闇……
そう、気になっていた事。
彼が拘っていた後ろの穴への執着。それは何だろうと……
まず、SMがヒットする。
ネット上で記事を読みあさり、次に某サイトの会員のとなり、あふれるビデオを見まくる。
吊るされたり、垂れ流したり……
そして、調教ものから、複数の人数ものへと移り変わり、男同士へ……
そんな怪しい情報収集。
そして彼女は、怪しい同人誌を入手する。
カリスマ性のある上司と、頼りない部下。
相談に乗りつつ、乗ってしまうベタな展開。
だがその絵は美しく、彼女は衝撃を受ける。
二十歳を越えた頃には、や○い系にどっぷりとハマる。
無論リアルは、全然。
没頭するあまり化粧っ気のない、ラフと言うよりだらしない方へと変わっていた。
だがまあ、気になる修行はしていた。
勉強を始めてすぐから、相手を喜ばすテクを見つけて喉の奥までとか、栓とか……
基本を飛ばして、少し行きすぎた訓練。だが、ピアスは怖くて、踏みとどまったようだ。
そんな中途半端に壊れた、彼女。
従姉妹からのメッセンジャーアプリでのお誘いを見て目が光る。
「実はこんな事をたのまれて、先ずは、
リアルで…… 育成……
『
バイトはしていたが、彼女が回るサイトは、定額制やサブスクリプション。
化粧品代も、服代も使っていない。
たまに興味を持った、大人用のおもちゃを買うくらいのものである。
彼女は、
何なら、その費用分を盾に、体で払って貰おうとも考えていた。
妄想だけで、二年くらい彼氏もいない。
縛って…… これをねじり混んだら、どんな声で啼くかしら……
「
かくして、彼らは邂逅をした。
「新界さんと、深井さん。よろしくお願いします」
「先ずは美容院ね。ツーブロックの黒髪なんて……」
「でも、上司役なら……」
「彼なら、『タチ』じゃなく『ネコ』に寄せた方が良いと思わない?」
「うーん。そうかそうね。じゃあ。ショートでふわっと言う感じ?」
「あっでも、校則があるから脱色とかパーマは使えない」
「むううっ。
結局、妥協に妥協をして、気弱キャラに寄せる。前髪は目にかかる程度にカットをして、普段は持ち上げてごまかすという妥協点を見いだす。
パーマではなく、ムースで揉みボリュームを出す。
服装も、無地系でチノとシャツ。それにジャケット。
だが、当然主戦場は学校。
着ていくことは出来ない。
「あーまあ、そうだよね。高校生かぁ。早く卒業しなさい」
あげくそんな言葉まで……
だがそんな彼らの行動を、見つめる目。
当然、
諒威が、『明日は用事があるから会えない』などというメッセージを送ってきた。
当然、今までの長い歴史の中で、家のことなどで、そっちを優先されることはあった。
だが、今日のことについては、おばさまにも聞いていない。
彼の友人達にも事情聴取済みだ。
「怪しいと思ったら、何あの女達? パトロン? でも…… あの子は、知っている。同じクラスの…… えー、あー…… 委員長ね」
そうして、距離を置きながら、背後を付いていく。
その後は、コーヒースタンドなどで楽しそうに談笑。
だが、さっき着替えた服装で、諒威の見た目が変化をして、通り過ぎる女達の目線が気になる。確かに変わった。
「ちっ。あの女も見たわ。こう見るとお兄ちゃん、モテる部類かしら?」
普段の適当な格好と違う。
いつも、デニムに、おばさまが買ったポロシャツかチェックのシャツ。
高校生になり、身長も百七十センチを越えて、男らしくなってきている。
「むうぅ」
幼馴染みで、いつでもそばにいてくれると思っていたけれど、これは考えないとまずいかしら……
思ったこととは違うが、概ね諒威が考えた方向に向かい始めた璃子。
だが、かといって、簡単には素直になれない。
告白をされるなら、お兄ちゃんの方からの方が良い。
そんな思いを持っている彼女。
きつい性格も、何もかも隠して尽くす気持ちはある。
―― でも、やっぱり、お兄ちゃんから告白はして欲しい……
こうして悩む事になる。
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