第4話 それぞれの、思いは何処に

 でまあ、緊張感と酔いと、思いと…… 大人になった体。

 横にオスがいるわ。やっちゃいなと何かが訴える。


 タオルケットを羽織り、お互いをひとまとめに包み込むようにかぶさり、ふみやに抱きつく。そして勇気を出して、そっと…… キスをする。

「同情か?」

「冗談。小学校の時からの思いよ」

「マジか。気が長いな……」

 彼は、そう言った後。にやっと笑う。


「悪いな。気が付いていた」

 固まってしまった……


「えっ。まじ?」

「ああ。まじまじ」

「なんで?」

「何でって言われても、菜月ですら気が付いて、モテモテねって言っていたからな」

「げぇー……」

 言葉を交わしながら、タオルケットの中で、彼の手は私を抱きしめ。色々なところに触れる。そのたびに、私の体は反応をする。


「いいねえ。新鮮な反応」

「人で遊ばないでよ」

「やめていいのか?」

 彼の顔は、最高に意地悪だった……


「初めてなの」

「そうだな。いいのか?」

 そうだなって…… むうー。


「それを聞く? それに初めてって言って、どうしてそっちがそうだなって断言するの?」

「付き合った奴、いなかったじゃ無いか」

「それはそうだけど…… もう……」

 そうして、彼は初めてじゃ無いから、遊ばれまくった。


「いいねえ。慎ましやかな胸」

「悪いわね……」


 結局、翌朝バイトを休んだ。


 昼頃だろうか?

 チャイムが鳴る。

「うっさいわね」

 チェーンを掛けて、ドアを少し開けて、確認すると菜月が立っていた。


「ちょっと待って」

 今私はタオルケットを羽織っているだけ。


 あわてて戻り、ふみやを起こす。

「おう、体大丈夫か?」

「何とか…… じゃなくて、菜月が泣きそうな顔して立ってる」

 そう言うと、納得したようで、出ていく。


「ちょっと待って、なんか着て」

「何を?」

「あっ」

 洗ったまま、乾かしていない。

 臭くなったかな?

 それ以前に、きっと皺だらけになってる。

 もう一度、洗わないと駄目だ。


 バスタオルを投げる。


 それを見て、意地悪そうに彼は笑う。


「おう、おはよう。送ったとおりだ。結愛に慰めて貰うから、お前は圭介と仲良くすれば良い」

「なんで……」

「昨夜、見たから。聞いたから。ドアが開いたのも気が付かないほど熱中していたんだ。良かったんだろ?」

 そう聞いたときの、菜月の顔。

 まさか、行ったことを気がついていない? 行くって言っといて姿を見せないなら状況として、気が付きそうじゃない。 


「体力はすごいけど、圭介……触り方は雑だし、優しくないの」

「教えてやれば良いんだよ。頑張れ。じゃあな」

 そう言って、パタンとドアは閉まった。

 

 少しして、窓の下。道を歩く菜月は、誰かに電話をしながら歩いていた。


 圭介だろうけど……


 そのとき、窓枠に手を掛けて、私は覗いていたのよ。

 思ってもいないこと。私の後ろには、目が覚めた狼が狙っていたようだ。

「ちょっとそんな所、舐めないで…… んんっ。洗濯を…… しないと……」

 耳元に、吐息と共に声が聞こえる。


「良いよ。洗濯をして」

「ちょ。ああっ。むりぃー」

 圭介のことを猿だと思ったけれど、ふみやも大概だっただったようだ。


 その後、圭介は一人泣いていた。

 菜月には、誰か居たようだ。

 ひょっとすると、ふみやはそれを知っていたのかもしれない。


「圭介と仲直りをするの?」

「うん? なんで。お前もあいつとしたいのか?」

 そう言って、ものすごく怖い目をされた。


「いや、そんなんじゃ無い。そんな事あるわけないし。けれど…… 長い付き合いじゃない」

「生々流転さ。とどまることはなく、すべての物は絶えず変化し、移り変わっていくものだよ」

 フッとか言って、変な顔をして、親指を立てる。

 ニヒルな男のつもりらしい。


「そうだね。こうやっているなんて。数日前には思わなかったし」

 今、座っている彼と向かい合っているけれど、抱っこされていて、繋がっていたりする。


「そうだな。少し予定が狂った」

「何それ?」

「内緒だ……」

「もう」

 そして、私たちは一緒に暮らし始めた。


 そうして、何時だっただろうか?

 ふみやは、大学の先生と、菜月のことを調べていたらしく、ある日。その資料を大学側に提出したらしい。

 あくまでも、多分でしかない。


 その封筒は、差出人不明だったようだし、問題は、以外と偉い人で、妻子持ちだったという事。


 聞いても、本人はしらばっくれる。

 予定が狂ったのは、圭介を相手にしたこと、それを目撃をしたこと。追い詰める予定の手前で、勝手に転ばれたイメージだったようだ。


 その問題は意外と大事になり、そのニュースが話題になっとき、ふみやが嬉しそうだったので、女生徒を調べると菜月だった。


 だけどね、菜月も謎。

 圭介の家に行って、あのドアを通り、鍵を閉めていなかったのは、菜月。

 さらに、格好も、ミニのスカートにタンクトップ。

 そう。奇しくも、ふみやの為に、頑張った私が着込んだ、戦闘服と同じ選択。


 圭介…… そして私。

 あの日、菜月は何かを考えて、行動をした。

 そして、ふみやも何かを思って行動をしていた。


 でもあの日、ふみやが見たと言ったとき、隙間から見えていた菜月の顔は、本気で驚いていた。

 

 色々考えていて、ふと思う。

 離れていく心が、ふみやから伝わり、焼き餅でも焼かそうと、わざと浮気をした?

 菜月は、私辺りから、二人が怪しいかもよ、レベルで噂を流してほしかったのに、あの性格だから、頼まれたら断れず。乗っちゃった?


 ……まさかねぇ。 

 いくら、菜月でも……


「はい。おまちどう」

 目の前におかれた、パエリアとアヒージョ。


 私のしょっぱい失敗作とは違い、美味しいの。

 そして野菜たっぷりのミネストローネ。


 私の存在意義が、消えていく気がする。

 エッチの相手以外、できていない……


 こうなって初めて、理解をした。彼氏とか旦那が完璧だと、こっちが不安になるのね……

『お父さんは、私がいないと何もできないから』そう言ってお母さんが笑っていたのは安心感?


「うううっ。不安でストレスが……」


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 お読みくださり、ありがとうございます。


 オリーブオイルが高い。

 ヨーロッパでの干ばつが原因で、六百円くらいだったのに、いま一千八百円になっていて諦めました。


 さてさて、心の中は、おおよそ結愛の予想が正解です。

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