心の隙間と同情と。そして破局

第1話 幼馴染みと友情

 ふと目を覚ます……


 エアコンが効きすぎなのか、少し寒い。

 ぬくもりを求めて、となりに寝ている、結月ゆづきに張り付く。


 だが…… うん? 抱き心地が違う。

 なんだか、一廻り小さい。

 肩も胸も……


 そっと髪をかき分け、顔を見て、オレは動きを止める。

 思い出した……


 そうだ…… 俺のかわいい結月は、他の男に走ってしまった。


 それで落ち込み、幼馴染みであり、無二の親友であるこいつらに、メッセージを投げた。


 おれ、富樫 圭介とがし けいすけ根木 ふみやねぎ ふみや

 そして、大海 菜月おおみ なつき影野 結愛かげの ゆあ

 四人は、小学校の頃からの仲良し。


 ふみやと菜月がそもそも仲良しで、近所での公園で遊んでいたところに、おれが、仲間に入る。そして、学校から帰ると、各部屋を点々としながら遊んでいた。

 そして、菜月が風邪を引き、学校を休んだときだったか、何かの時に、結愛がやって来て、仲間に混ざった。


 中学校の時、思春期の洗礼を受けて、多少ギクシャクしたが、仲は良かった。

 そう、幼馴染みが長く、皆が兄妹のような感じ。

 むろん、皆がそう思っていたのかは知らない。

 俺がそう思っていただけ。


 高校になって、ふみやと菜月が付き合い始め、結愛に付き合うか? と聞いたのだが……


「圭介は雑だから嫌」

 そう言って、きっぱりと断られた。


 やいのやいのと言い合っていたら、ふみやと菜月がやって来て、思わず聞いてしまう。

「俺って雑なのか?」

 そう聞くと、二人は顔を見合わせ、当然だというように……

「「雑」」

 声をそろえて言ってきた。

「グハッ……」


「圭介は周りのことを見ないで、自分中心だからなぁ」

「そうそう、デリカシー無いし」

「声が大きくて怖いし、掴むときも力が強いから痛いし」

「あっ、それあるぅ。一応こっちは女の子なんだから気を付けてよね。なんだっけ? 親しき仲にも……」

「おっ。続きはなんだ? 菜月」

 ふみやが嬉しそうな顔になる。


 ふみやは、細面のどちらかと言えば真面目な女顔。

 身長も百七十五センチもあり、モテる。

 普段は物静かで、おとなしそうだが、コイツは意外と冷酷。

 無駄と思えば、スパッと関係を切るため、友人は少ない。


 逆に、菜月は周りに気を配り、人なつっこい。

 優しすぎと言うより、人を甘やかせる?

 すぐに、色々なことを頼まれ、追い込まれていく。

 それなのに、お願いをされると、嫌が言えない。


 結愛は、結愛なんて名前なのに、竹を割った性格? と言うのか、親しくなると結構ずけずけと言ってくる。

 そのため、結愛と菜月がセットでいると丁度良いようだ。


 二人とも、美人ではないが、かわいい系で校則ギリギリまで髪を伸ばし、一見すると姉妹のようだが、性格が顔に出るのか、菜月の方が柔らかい顔で、結愛は目付きがきつい。身長も結愛の方が高く百六十五センチくらいで、菜月は百六十あるかないかというくらい。


 体つきも、菜月の方が出るところが出て、結愛の方がフラットだ。

 だけど中学校のときに、見せ合いっこをしたら、ちゃんと膨らんでいたから、今はもっとあるだろう。


 それが高一の時の話し。



 そして、今。

 大学生になり、俺にも彼女ができて、グループに混ざってきた。

 だがいまいち、新参者というのを気にしてなのか、皆と遊ぶことを嫌がっていた。

 そして、多田野 結月ゆづき は元カノへとジョブチェンジした。


「圭介は雑だし、私だけを見てくれないから……」

 そう言って、部屋から私物を引き上げていった。


「雑って言われた……」

 その事がショックだった。

 みんなに言われて、俺なりに気を付けていた。

 それなのに……


『振られた。慰めてくれ……』

『わかったぁ』

 そんな文字や、スタンプが帰ってきた。


 そうして、最初に来たのが、菜月だった。

「皆も、その内来るでしょ」

 そう言って、テキパキとつまみという名の料理を作ってくれる。


「簡単なものだけどね」

 そう言って、出されたのは、キュウリ揉みから始まり、豚肉で巻かれた、野菜類やエノキ。

 大根のサラダや、揚げ出し豆腐など、ヘルシーなのかそうで無いのかよく分からないもの。

 鳥せせりの、ピリ辛炒めは美味かった。


 酎ハイを飲みながら、くだを巻く。

「また雑って言われたんだよぉ」

「うんうん。気を付けているみたいだけど、とっさには出るからねぇ。女の子は、三ヶ月くらいで、夢から覚めるから。そこから後は、減点が積み重なっていってマイナスになると少し考える。まあ大きな減点が無かったから、今まで続いたんだし、駄目だと三日くらいで覚めるし」

 そう言って、意外とぐびぐびと飲んでいるが、菜月はそんなに強くなかったはず。


 話し込んでいて、ふと気が付くと菜月の酎ハイが、俺用のストロングに変わっていた。

 冷蔵庫から出すときに、間違えたのだろう。

 まあ良いか。


 この時期だ。菜月は羽織っていた上着を脱いでいるため、薄着でタンクトップから、ブラが見えている。

 トイレにでも立ったのか、目の前で短めのスカートが目を引きつける。


 結月と別れてから、してねえ。

 皆が早く来ないと、やばい気がする。


 自分の理性が、不安になる。


「どうしたの?」

 そういって、菜月は丸みのある、くりっとした目で見下ろしてくる。

 ミドルの髪が、その時少し垂れ下がり、彼女はその髪を指でたくし上げ、耳へと掛ける。

 二の腕から脇へ。

 つい目が行ってしまう。


「何でも無い……」

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