第4話 そして、好美は消えた

 その後もやはり気になり、ちょこちょこと聞いていた。

 すると……


「うーん。そんなに気になるんだ。なら、誘えば良かったね」

 とまあ、自白をした。

 やるような気はしたが、本当にするとは。

 そこからまあ、精神的な物なのか、俺は好美とできなくなった。


 すったもんだがあって、別れを切り出した。

「俺は男として駄目になったようだ。恋人としては失格だな」

「どうしてだろうね? まあ恋人じゃなくても、幼馴染みだし。使えるようになったらまた付き合いなおすでも良いし。わたし、究ちゃんとだったら、赤ちゃんも産んでみたい。どんなのが出てくるんだろう?」

 どんな子供じゃなく、どんなのが出てくるという言葉が気にかかる。昔の映画であったなぁ。寄生体で腹を突き破って出てくる奴が……


 最後に、ズドンとプレッシャーをくれて、でもまあ、会う回数は減っていった。


 俺は大学に入ったが、好美は落ちた。

 俺は理解していなかったが、あの事件。

 内申書か何かの申し送りでもあるのか、不利になったのではないかと、親たちが噂をする。


 そうして、好美は伝手を通じて工場へ就職をしたが、数ヶ月後。奇妙な視線を向け、セクハラ全開の班長を半田ごてで突き刺し、退職をした。

 幸いにも、周囲からの擁護があり、事件にはならなかったようだ。


 それでも、受験をしてみたり、真面目そうにしていたが、せっかくの就職先をと、うだうだ言い続ける親父さんにぶち切れて、家へと転がり込んだ。


 とまあ、そういう流れだが、ある日、好美は帰ってこなくなった。


 捕まったのが警察ならば、家に来るだろう。

 だが何か捜査をしている感じもなく、ぷっつりと消えた。


 三日ほど経ち、むろん親父さんとかに聞いたが、知らなかったらしく。大騒ぎになる。

 ああ、うちに転がり込んだのは知っていたらしい。

「一度は別れたらしいが、君となら。何時孫が生まれるかと思っていたのだが、何処へ行ったのか?」

 親父さんと一緒に、警察へ行き、届けは出した。

 だが、成人の失踪。


「捜索願い? 子供? それとも老人かな? 事件性は?」

 捜索願いを出しに行ったらこれだ。


「そりゃあ。きみ。かわいそうだが、ふられたんだよ。君よりいい男ができて転がり込んだと言う事だ。良くあるんだよね。あーきみ。無理に追いかけるとストーカーとかになるから駄目だよ。君が逮捕されちゃうからね。男は黙って彼女の幸せを願う。それが男の心意気という物だよ。はっはっは」

 腕組みをして、うんうんと頷きながら言いたい放題をいって、最後には人の肩をバシバシ叩く。

 そして、さらに話は追加される。

「まあ若いうちなら、次も見つかるさ。元気を出して」

 うだうだと、本当に言いたいことだけ言って、断られた。


 とまあ…… そういう事だ。

 事件性のない、成人はもれなく失踪届だそうだ。


「事件にでもならないと、捜査はできません」

 受け付けた、若い警官はぴしゃりと答える。

 事務的で、嫌いなタイプだが、なぜかさっきのオッサンよりは、好感が持てた。


 人間の感情とは、不確かな物だ。



 だが、好美は数日後。海に浮いていた。

 発見まで比較的早く、そんなには傷んではいなかった。


 だが、顔などに暴行の跡。

 だが、それだけで、他はひどくなかったらしい。


 血液型と歯形?

 持ち物が残っており、好美だと断定された。

 遺伝子検査は省かれたようだ。



 葬儀の後、俺は違和感を感じていた。

「あれは本当に…… 好美だろうか?」

 行動自体には制限がないが、体は普通の女の子。


 何か、やばい事件に巻き込まれたのか……


 そう、学校の前でうろうろしていたのは、好美のようだった。

 ある日、俺のスマホを見て、研究室の奴が教えてくれた。

 写真を見せていて、その中に写っていた。

 理系だと、メモ代わりにスマホのカメラを使うことがあるのだよ。

 機械の奥側を確認するとか、配線のメモとか。

 決してホーム画面にしていたわけでは無い。


 多分だが、いつも見かけるたびに雰囲気機が違うので、判らないし多分だよと言っていたが、写真を見せながら、噂を辿ると、噂を流した奴は、飲みに行こうと言って断られた奴。

 腹いせに流したようだ。つい、ぶん殴ってしまった。悪いのは右手。頭では殴っちゃ駄目だと考えていた。だがまあ俺の右手、よく分かっているようだ。


 だが、誘われて飲みに行くのは、全くもって嘘かというと、そうでもないらしく、いわゆる屑な奴。そいつと肩を組んでどこかへ行ったと言うが、そいつは学校に来ていないから詳細は分からない。


 もやもやが溜まる。

 だが、人とはいい加減な物で、月日と共に忘れていった。


 数年が経ち、普通に結婚して子供が出来た。

 貧乏だが幸せな暮らし。

 だが、小学校に入った頃、子供が言ったんだ……


「おとうさん。蟻地獄の巣に、アリさんを入れると楽しいの?」

 その台詞を聞いて、ドキッとする。


「かわいそうだから、人間が手助けしちゃいけない。もし、そのアリさんが神様から重要な役目を貰った勇者アリさんだったら、殺しちゃったおかげで地球が滅ぶかもしれない」


 子供は素直。

「わかったぁ。ありさんが、大きくなったらライダーになるんだね」

「そうそう」

 適当なことを言って御茶を濁す。


 うん? あれは、バッタだったか?


 まあいい。

 問題は……


「突然、蟻地獄なんてどうしたんだ?」

「こうえんの、しゅうかいじょ? あそこのおやねのしたにあるの」

「そうなんだ」

「そしたらおばちゃん、じゃない。おねえちゃんが、アリを入れると楽しいよって教えてくれたのぉ。お父さんもきっと好きだって」

「そうか……」


 そっと、頭をなでる。


 だが、記憶と共に、嫌な思いがぶり返す。



『しーちゃん。おもしろいね。ほら必死で砂をかけてる……』

 幼いときの記憶……

 つい窓から、暗くなった外を覗く。


「ねえっ」

「うわぁ」

「そんなに驚かなくても……」

 背後にいたのは嫁さんだった。


 だけど、その手には昆虫標本が……




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 お読みくださり、ありがとうございます。


 うーん。映像だと思うと、そこそこいけそうですが、文章だけとなると難しいですね。もっと行間を使えば良いのか? アスキーアートを混ぜる?

 ホラーは映像ばかりなので、小説を読んでみます。

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