運命は残酷で

第1話 兄妹な二人

 寂れた商店街……


 そこに並ぶ、店がある。

 昔ながらの定食屋と、乾物屋。


 定食屋は分かるだろうが、乾物屋など下手をすると知らない人が居る。

 そう大概の物はスーパーで手に入るし、昆布から出汁を引くなどプロじゃないとしない。


 定食屋の娘と、乾物屋の長男は一つ違いで、仕事中店でうろうろしないように俺の部屋へ放り込まれていた。


 そう俺達、途中まで兄妹だと思っていたが、違っていたようだ。

 だって、ずっと藪瀬 歩美やぶせ あゆみは家にいた。

 ずっと一緒に風呂も入ったし、一緒に寝ていたし。

 朝起きると、大抵いなかったけれど。たまには朝にも寝ていた。


 まあおやっさん達、うちで飲んでいて、夜中に連れ帰るのだが、休みに日などはまあ良いかと放っておいたようだ。

 割下 研わりした きわむ

 今中学一年生。歩美は小学生だが、生意気にも俺より背が高くなってしまった。


 そして……

「ほら風呂へ行くぞ」

「うん。先に行ってて」

 そんな事を言って、もじもじすることが増えた。


 研は、ずっとお兄ちゃんだと思っていた。

 でも両親は、お互いにいるし、うちの都合で、預けられていた事実。


 お仕事は遅く、店は夜九時まで。

 仕事帰りに、駅から商店街を通るお客さんを捕まえるのだとか。

 そして、夕方からは、定食屋さんなのに、お酒を飲んで少しおつまみにおかずを取る人が多くて、子供がお手伝いをするお店じゃない。


 それに比べて、研ちゃんの家は、夕方までに配達が終わると、お店が閉まってしまう。

 それでまあ、預けていたんだとお父さんが言っていた。


 実は、私が人見知りをし始め、研ちゃんから離れなかったとも……


 小学校も高学年になると、男の子はバカだけど、女の子は誰かが好きとか言う感情が芽生えてくる。

 ○○君は足が速いとか、勉強が出来るとか、お兄さんがかっこいいからきっと良くなるとか?

 でも私は別に、そうはならず。研ちゃんさえいれば、良いと思っていた。


 いつもの様に、学校から、割下のお家へ帰る。

 漫画を読んでいて、研ちゃんが帰ってきたら一緒に宿題をする。

 普通にご飯を食べて、お風呂に入り、寝る。

 それが、普通の生活だった。


 でも体は、その頃から変わってくる。


 そして色々と知るにつれ、恥ずかしくなる。

「もう一緒にお風呂入るのやめる」

 言ってしまった。


 昔からだったので、頭や体をずっと洗ってもらっていた。

 だけど触れられるとドキドキするし、くすぐったかった感覚が何か違う感じになりゾクゾクするようになった。

 目の前でぶらぶらしている研ちゃんの物も、随分大きくなったし。


「それはね、体が大人になってきているの。第二次性徴期。習ったでしょう」

「習ったけど、感じ方とか気持ちまで変わるの?」

「そう。変わっちゃうの」

 そう言って先生は、遠い目をする。


 先生は、三十歳までに結婚をするつもりだったけれど、駄目だったらしい。

 一度、いきなり休んだ日は、友人とやけ酒? を飲んだとか。


 それでもまあ、一緒に勉強はするし、仲良し。


 そうして、高校へ向けて研ちゃんが勉強を始めた頃から、少し変わった。

 何がと言うのは判らない。



 おれは、すっかり女の子になった、歩美が気になり始めた。

 今までクラスの奴が、○○がかわいいとか、胸がとか色々言っていたが気にしたことはなかった。

 だがそれが、三年になった頃。いきなり来た。


 不意に、女の子と手を繋ぐのが恥ずかしくなり、近くにいるとドキドキし始める。

 誰かが言っていたように、胸からウエスト。そしてヒップへの曲線が気になる。

 ヒップ対ウエスト比はWHRと呼ばれ、七十パーセント程度の差で男は女性に対して性的魅力を感じる研究結果がある。

 それは生物としての発育度合いを、見た目から判断する能力であり、本人の意思では制御できない。


 そして、研の第二次性徴期は、少しゆっくりだったようだ。


 他の子にはドキドキしても、歩美には大丈夫だった。

 それがおかしくなった。


「ばかだなあ。たまってんだよ。抜け」

 友人からのありがたい助言。

 スマホで、怪しいサイトを見ながら、情報を頂く。


 そこで見せられたのは、知らない世界。

「なにこれ? 痛くないの?」

「最初は、痛いらしいけれど、慣れると男の三倍くらい気持ちが良いらしいぞ」

 などと謎情報を貰う。


 そして聞くと、クラスでは幾人か経験をしている奴らがいるという事実。

「子供が出来るんだろ。どうすんだよ」

「薬局とかコンビニで買ってくるんだよ」

 そう言って、四角いパックを見せてくれた。


「何これ? イチゴ味って」

「そう言うのがあるんだよ。これだよこれ」

 そう言ってスマホで、そっち方面の影像を見せてくれる。

 そう、ぱっくりと咥えているもの。

「へー。美味しいの?」

「しらね。気持ちは良いらしい」


 でまあ、そんな事はとりあえず余所へ置いておいて、その日から猿になった。

 言われて試すと、ぞくぞくして変な感じだったが、ぞくぞくが良い。

 なんか背中にも、ぞくぞくが来た。

「うううっっ。なんだこれ。あれ? へにょへにょ。すぐには駄目か」


 ベッドで座ってやっていたが、それを覗く目が一対。

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