第5話 知った理由と俺の心。そして幼さ。

「これやばいよね」

 そんな会話が、地元の町では広がっていた。

 そう、通知を見たクラスメート達。


 そんな頃。

 着信の履歴を、悲しそうな目で見ている茉莉。

 治療…… 洗浄中だった。会いたいのに会えない。

 今すぐあって、わーと言って泣きたい。

 でも…… 言えない。


 親しくても他人。

 幼馴染みだったら、頑張ったら言えたけど、告白をして友達ではなくなってしまった。

 診察後で、警察の人を待っている。

 薬はすぐに飲んだ。


 初めてじゃなかったのが、お母さんにバレた。そこはまあ良い。


 お父さんが、ずっと辛そうな顔をしていた。

 その理由は、後で分かる。


 家へ帰った後で聞いたら、見かけた事。それもキスシーン。

 最悪な事に、湊太も一緒に見た……


 結局家族で、その日はゆっくりすることにした。

 そう家族みんなが、湊太に言う事を躊躇した。


「湊太君は良い子だが、まだ若い。飲み込めるかな?」

「うーん。どうかしら? 茉莉のことは後で考えるとして、無茶したりしないかしら?」

「あー。あるかもな。出合さんにも一緒になって、聞いていただかないと駄目か……」

「茉莉にしたって、そんなに隙があったわけじゃない。クズなのは、そのなんとかって言う子だけど、茉莉も湊太君も辛いわね」



 翌朝。

 約束通り、タックルを抱えて、後野家へ向かう。

 そう言ってもすぐ近所。

 楽しい釣りだが、足が重い。


 そうそう、昨日は見た事のない。真面目顔の紬にされた。

「きちんと話を後野さんから聞いて。絶対にその方が良い。その上で、浮気なら…… その、頼ってくれていいから。ねっ」

 そう言って。


 到着後、チャイムを押す。

 出てきたのは、パパさんだが、格好が普通。

「おはようございます。今日はヤメですか?」

 疲れた顔を見てそう思った。


「ああ。おはよう。釣りは、ヤメだが…… 少し話もある。道具はその辺りへ。上がって」


 でまあ、ママさん共々話を聞く。


 不同意性交等事件。いきなり言われた言葉。

 犯人は、色事。

 他田野と約束した待ち合わせに、奴が勝手にやって来て、アイスはまあ、おごりだったらしく。いきなりキスされた。

 そこを俺達が見た。


「あそこで、叱るために出て行っていれば。幾度もそう思ったよ」

 パパさん。拳がぷるぷるしている。


「でも、あの年頃の娘は、親の手を離れているんでしょう?」

「そうだな」

「あれが襲われている感じなら、俺だって車から飛び降りましたよ。アイスに騙されました」

「そうだな。その後、奴の顔にアイスを突き立てたようだが、それで余計に怒りを買ったらしい。すぐに公園のトイレで……」

 頬を伝う涙。目は真っ赤だし。当然、ママさんも。


 俺は怒りとかそういうモノは湧いてこず、パパさんの言う言葉が、非現実な何かのように聞こえてくる。

「警察とか、病院は?」

「ああ。すぐ行った。警察は、知り合いの弁護士さんに連絡をして刑事告訴までした。だがまあ、少し学校は休ませる」

「はい。本人は元気ですか?」

「まあ、元気ではないが、今、湊太にも、ちょっと会いたくないらしい」

「あー。そうですか。うんまあ。どんな顔していいのか判りませんし」

 そう言ったら、ママさんが口を開く。


「私だったら、抱きしめてとか言うんだけれど。若いから怖いのかなぁ」

「お医者さんも言っていたじゃ無いか、PTSDのケアも必要だと」

「いえ。きっと付き合いが長くて、好きが足りないのよ。ほらよく言うじゃ無い。幼馴染みが付き合うと失敗するって」

 ママさんが、暴走をしている?


「あーまあ。茉莉が悪くないという事は判りました」

 そう言って、立ち上がったものの、茉莉の部屋に行こうか行くまいか悩んでしまう。だが、よかれと思っても、俺が強引に何かをすると、確実にあいつの機嫌は悪くなる。


「うんまあ。会わずに帰ります。奴は捕まったんですか?」

「一応、被疑者? 扱いで昨夜警察が会いに行ったようだよ」

「チッ」

 つい舌打ちをしてしまった。


「あー。湊太。犯人は警察に任せて。手を出したりするなよ」

「残念ながら、喧嘩は茉莉以外とは、した事が無いです」

「ああ。うん」


「それじゃあ。あー。お大事にで良いのかなぁ? ―― すみません。言葉が出ません」

 その時になって、泣いていた。


「ああいい。気持ちは分かる。いいか。無茶はするな」


 そう言われて、家に帰る。

 その日は結局寝て過ごし、気が付けば、夜だった。

 玄関先に、釣り道具を置きっぱなしで帰ってきた事に、今頃気が付く。


 スマホを見ると、紬から問い合わせが来ていた。

「あー。色事の野郎は糞だった」

 とまあ、返した。


 だが、それのおかげで、噂が飛び交い。学校は騒ぎになる。



 翌日学校へ行くと、雰囲気が違う。

 色んな所から目線がこっちへやって来る。

「おはよ」

「ああ。おはよ。何この雰囲気?」

 そう言った瞬間、紬の顔がやばっという感じに変わる。

「実は土曜日……」


「おらぁ、席に着け。後野は体調不良でしばらく休む。色事はまあしばらく欠席だ」

「先生。何があったんですか?」

 誰かが叫ぶ。



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 普段省くところまで書いていると、中編になってきた。

 もうちょっと続きます。

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