第2話 かの女は……

「なんで、三回も」

 つい興奮し、胸ぐらを掴む。


 彼女は、半泣きで涙を浮かべる。

「試したけれど、いまいちだったって…… それで、相性もあるからって言ったの」

「相性…… それで、結局もう一人か」

「うん……」


「相性って、そんなに違うのか?」

「あーうん。こっちの状態にもよるけれど。ずいぶん。その……長さとか、角度とか、スピードとか」

「どこからの情報だ?」

「自分で…… 家にいたくなくて、一年の時。泊まり歩いたから」

 さっき手を離したら、床にへたり込んだ彼女。

 じっと目に涙を溜め、こっちを見上げてくる。


 さっき三人と聞いて、もう涼葉の相手をするのはいやだと考えたが、もっと経験のある彼女を、なぜか俺は、抱いてみようと考えた。


 それは、決して愛とかではない。怖がりおびえた彼女を、何だろう? 支配したい? そんな気持ちがわき上がる。


 平和な世の中で、封じ込めているオスの本能なのか。それは解らない。


 彼女の涙を、ハンカチでそっと拭く。

 その行動に驚いているかの女に、しゃがみ込んで、顔の高さを合わせ、耳元でそっと囁く。

「お前には、つまらないことをした償いを取ってもらおう。こい」

 そう言って、彼女の手を引く。


 教室に戻り、荷物を持つと、家へと連れて行く。

「へー。直向君のお家。参考書が山積み。すごいね」

 普段なら、シャワーを浴びて、軽く何かを腹に詰め込み塾に行く時間だがいい。


 彼女の頬に手を当てるが、いやがる感じはない。

 それどころか、目を閉じる。


 覚えた通り、ゆっくりじっとり攻めていく。

 上から順に、ゆっくりと時間をかけて。


 彼女はもう、体温が上がり。発汗がすごく、自分で脱ぎ始める。


 周囲を中心に、そしてたまに、敏感な所を指先で軽くノック。そしてこすりあげる。


 反応で分かるが、すでに幾度か軽く達している。

 もう目の焦点はあわず、顔を見ているようだが、ぼーっと何処が見えているのか。


 その後、指だけで数回。

 口でと思ったが、なんだか駄目だった。


 周囲からじらしていると、彼女が自分で入れようと腰が暴れるが、押さえ込む。


「いじわる」とか、「早く」とかやかましい。


 じわっと入れ途中から早く、真っ直ぐではなく天井に向けて……


 もうその後は、騒ぐのを抑えるのが大変だった。

 えーと、「おかしくなる」と「何これ」が一番多かったかな?

 ひたすら何これを繰り返していた。


 そして、ひたすら俺は、お勉強。

 場所と角度。そして強さ。

 反応を見ながら、試させて貰った。


 組み合わせも変化させ、教科書の技を試す。


 その結果、四つん這いにさせて背後からと、向き合って抱っこするのが一番良いようだ。


 そして、彼女は燃え尽き、動けなくなった。

 今度は、「むり」しか言わなくなった。


 仕方が無いから、家まで送っていく。

 途中スポーツ飲料を、一リットルほど一気飲みをしていた。


 その理由は、家に帰って、ベッドを見て愕然とした。

 あわてて、洗濯機を回す羽目になったよ。



 そして、いい加減、俺の反応の無さに、しびれを切らした彼女。

 塾のない土曜日の午後に、会うことにする。

 夕方からはあるんだけどね。


 いつもデートは、土曜の午後だった。

 買い物に行ったり、映画を見たり、食事に行ったり。

 そう普通の恋人たちの行動。


 今日も、待ち合わせは、近くの公園。

 なんか、すごい勢いで走ってきた。

 でもまあ、彼女に会って開口一番。

「もうだめだよ。別れよう」

 そこから入る。


「えっ、どうして。なんで。晴翔と居る時が一番安心できるし。ねぇ」

 それを聞いて思わず、笑いが出る。

「今、自分でバラしたな。誰と比べているんだ?」

「えっ。あっ。誰でもない」

 だが顔に出る。見ていなかったんだなぁ。


 コイツ賢いけれど、人との付き合いは下手なんだ。

 色眼鏡というか、涼葉は賢いから、完璧とかずっと思っていたし、そう見えていた。

 うちの親も、涼葉に任せておけば良い。なんて言っていたし。


 さっき、乃愛を呼んでおいた。

 スマホから伸びるイヤホンを、涼葉に差し出す。

「聞いてみろ。どうして俺が怒っているのか分かるから」

「怒っているの? やっぱり。どうして、ねえ」

「聞けば分かる」

 イヤホンを装着したのを見て、再生をする。


 眉間に皺を寄せ、怪訝そうな顔。

 それが、いきなり変わる。

 何でと思ったのだろう。

 俺に、何かを打とうとして、男が何かをして来て、通話を押した。それに気が付かず、会話が録音されている。


「どうして、なんでこれ?」

「お前がかけてきて、俺に全部聞かせてくれた。おかげでお前がどういう奴か分かったよ」

 そう言うと、むきになる。いつものパターン。

 晴翔は何も知らないくせに。そう、いつものこと。


「分かったって何? 少し興味があって、他の人としてみただけよ。結果的には、晴翔とするのが落ち着けるし、そう…… 肉体的なものは少し違うけれど、精神的には、一番満足が出来るの。これは、他の人と経験が無いと分からない事なの」

 それが当然という感じで、説明をしてくる。

 それはそうだろう。経験が無いと比べようが無い。


 俺もそうだった……


 「お前は、簡単に経験と言うが、された方の気持ちが分かっていない。そう、今、重要なのは、これを聞かされた時の俺が感じた気持ち…… お前が、理解できるか知らないが、行こうか」

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