第5話 裏切りには、罰を

「えっ、何これ?」


 周りには、仲良し馬場、奥平、内藤、原たち。

 むろん関係していた男たちも、三親等くらいのご友人。

 つまり、元泰君の連れの連れくらい。


 そこまで、絡んでいたんだよ。おかげで大人数になってしまった。

 そいつらは、倉庫で転がっているが、信美が見ている景色はそうではない。


 そう、すでにゲームの中。


 枯れたプールの中。

 仲が良いどうし、足首を鎖で繋がれている。

 鎖の真ん中には、U字のアンカーが打ち込まれ鎖の移動は出来るが、微妙にヘリには届かない。むろんアンカーには、足は通らない。


 そして糸鋸。


 考えれば分かる。

 足を、切らないといけない。

 天井から、シャワーのようにプール全面に水が降り始める。

 意地悪なことに、かなり冷たい。


 元泰君は、最初。躊躇無く相手を殴ると足を切った。

 だが、足にハマっていた錠が、アンカーを通らず溺れた。


 そう昨日から、幾度となく皆死んでいる。


 それなのに、以外と人間は丈夫なようだ。

 俺はかなり、精神的弱いのだと知った。


 すべての罠は、自己犠牲の上で脱出を出来るようにしてある。


 そう、腕を犠牲にするとか、足を犠牲に。


 死んでも、生き返り別のゲーム。

 それをループする。


 相手に与えるためには、俺はその光景を見続けなければいけない。

 まともな精神だと耐えられないが、どこか壊れたらしく、覚めた目で見ることができる。

 それが良いのか悪いのか……


「おう、どうだ?」

 信堯がサンドイッチを持ってくる。


「皆強いな」

「そうか、見られないのが辛いな。お前ばかりが苦しんでいるように見えるぞ」

「仕方が無い。ヘタレだから、結局どっちもが苦しむが、奴らが地獄に落ちて、俺が管理者だと思えば」

「おまえ。ルシファーだったのか?」

 そんな軽口が嬉しい。


「そうだな」

 お手伝いさん達が、ちょっかいを出しているが黙認だ。


「あにさん。反応戻せませんか?」

「あー。やってみる」

 すると、いきなり叫び出す。


 ちょっと調整。


 こうやっているうちに、感覚の調整とか色々が出来るようになってくる。


 そして、限界を超えた苦痛とか、快楽で文字通り逝くということが分かった。


 なら、元泰君には、記憶から映像を呼び起こし、被害者が受けた、その苦痛を彼に投影することを考えた。

 そう、殴れば、自分が痛い。


 レイプすれば、その苦しみと恐怖。それを存分に味わって貰う。

 周りで見ていた奴。手を出した奴。すべてに与えていく。


 思っていたゲームからは外れたが、以外と効果があり、屈強そうな奴らが泣き始める。

 そう言えば、捕虜の尋問とか拷問に有効だと、どこかで読んだ気がする。


 そうして、三日もすれば誰も動かなくなった。


「昔、武田勝頼を裏切った小山田信茂は、裏切り者めと信長に一族が殺されたらしいぞ」

 信美にそんな事を言って見る。


 だがまあ、反応はない。


 見ていたが、最後には皆許しを請うていた。

 被害者の痛みを、体験させるのが一番効果があるようだ。


 そうして、学校の騒動と警察の騒動が残ったが、不思議なことに加害者が誰も居なくなってしまった。


 そして俺は、親とは折り合いが戻らないまま、信堯の家に転がり込んだ。


 そして、光莉ちゃんはこの時期だが、晴れ晴れとした表情で転校をしていった。


 なんと俺にも友人が出来た。ほとんどは同情からだったが、まあ良い。


 それで当初と違う大学に入り、静かに暮らすはずだったが、奴が枕元に立つようになったんだよ。


「えーんえーん。お腹すいたよぉ」

 そう言って、いきなりビジョンが流れる。

 殺人現場と犯人。


 のうのうと暮らす姿。

「お腹すいたよぉ―。ちらっ」

 人が動き出すまで、それをされる。


「あーもう。分かったよ」

 部屋を出て、お願いしに行く。


「こんどは、連続殺人犯だ」

「りょーかい」

 なぜか嬉しそうに手伝ってくれる信堯。


「えっ。今度は男」

 嫌そうな顔をするお手伝いさん達。


 何の儲けもなく、善意だけで手伝ってくれるんだ。

 仕方ないか……


 今日も、怪しい黒いワゴンが走っていく。



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 お読みくださり、ありがとうございます。 

 まだまだ、ダークモードから脱出できません。


 男と女の恋愛。-短編集-の方で、いま書いているのは、遭難からの出会いと奇蹟の脱出? みたいな流れなので平和かもです。

 たぶん……

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