ミステリーぽい何か

妻が死んだ

「もしもし、救急車をお願いします。寝室で妻が……」


 俺は、仕事中に忘れ物に気が付き、うちへ電話を入れ、理奈のスマホにも着信を入れたが、どちらにも応答がなかった。


 そして、家へと帰ってきて、妻の死体を見る羽目になった。


 救急の人はすぐに警察に連絡を入れ、俺は会社に連絡を入れる。


 旧姓、吉田 理奈よしだ りな。俺の妻で、幼馴染み。

 小中高そして大学と、一緒に通った。

 そして大学四年で、内定を貰ったときにプロポーズをした。


 その時、理奈が初めてではなかったことに驚いたが、彼女の言う通り、「裕介と結婚するのは私くらいよ。大事にしてね」と言う言葉通り、お世辞にも顔がいいとは言えない俺だ。


 だが、理奈はかわいい系。

 年よりも若く見えるし、まあモテてはいたと思う。




 現場検証では……

「あそこの監視カメラは、何も写っていないのかい?」

「ええ、防犯のために付けたのですが、妻が嫌がりまして、電源が入っていません」

「そうか、それは残念だね」


 そして、警察官が見つけたのは経口避妊薬だったり、まあ色々。


 スマホのロックも、俺には解除できなかった。

 肌身離さず持っていたしな。


 妻の体には、体液が残っていて、前夜行為があったか聞かれたが、ないと答える。それに俺との時には必ず着けていたしな。



 検死から帰ってきて、葬式。


「裕介くん。ひどい顔だよ。大丈夫かね」

 そう聞いてくるのは、理奈の親父さん。

 当然子供の頃からの知り合いだ。


「ええ、ひどいのは昔からです」

「いや、そうじゃなくて」

 反対側で、理奈のお母さんが首を振り、おじさんの追求は収まった。



 会社でも、腫れ物状態。


 さすが警察、すぐに容疑者が浮かぶ。


「この人物に心当たりは?」

「いいえ。ありません」

 だが、他にも……


 スマホのロックが解除できたらしく、浮気の証拠が出てくる。


 そして、当日会った人間の目星が付く。

 そうそう、コイツだ。


 パートがらみかと思ったが、美容院の店員だったのか。

 澤井 蒼大、二十五歳ね。

 

 他にも二人。

 パート先の社員と、出入り業者。


 取り調べをしたが、全員否認。

 家に指紋があったのは、澤井のみ。


 することだけをして帰ったと言うが、犯行時間もぴったり。

 言い逃れも出来ない。


 そして、警察は嫌がったが情報を貰い、慰謝料請求を行う。

 当然だろう。



 俺は少しだけ、小金持ちになった。

 保険料と慰謝料。


 家にいると思い出すので、売ることにした。

 まあ買い手が付くかは不明だが。


 子供の頃からの記憶が、ふと思い出される。

 アルバムを見つけて、引っ張り出してくる。

「小学校時代。この頃は良い奴だったよなあ」

 写真の中に残る、あいつの笑顔。


 だが中学校になると、俺の顔から笑顔が消えてくる。

「あいつが率先して、俺を虐めていたのは知っていた」

 女の子には手を出さなかったが、男は締めたらすぐに白状をした。


「そうそう、それが元で、あいつが逆に孤立をして…… 懐かしいなあ」

 二年の時には、逆にあいつの顔から笑顔が消えている。


 そして、なぜか同じ高校へ。

 お互いにビックリした。

 家同士で付き合いもあったし、顔も会わせたけれど、高校の話はしていなかったし。


 ひょっとしてこの頃に、誰かと付き合ったのか?

「まあ良いけれど」

 大学の三年。後期になって、あいつが急に近寄ってきたのはなぜだろう。

 大学の入学式で一緒に取った写真は、すごく嫌そうな顔。

 なのにだ。人が変わったように、毎日……



 俺は知らなかったが、警察は知っていた様だ。

 澤井とは付き合いが長く、保険金を狙っていたこと。

 やつが、店を欲しがっていて、その軍資金を稼ぐため。

 その雑な計画が、メモ帳に残っていたようだ。


「仲間割れか?」

 などという事も、詰められた様だ。



 奴は当然だが、否定をした。


「まあ、分からんが、済んだことだ」

 あいつの荷物は、実家へ送ろう。


 そう思い、片付けをしていると、小型のカメラを発見。

「理奈じゃなく澤井がセットをしたのか。よく警察に見つからなかったものだ…… メディアはマイクロSDカード」


 パソコンに差し込む。

 小型なのに動体感知式。


 澤井との睦み事が映っていた。

 ベッド脇にぶら下がっていた、目隠し用カーテンにセットされていたから。ベッドを斜め上から見下ろす角度。


 うーん? 色々がありすぎて、おかしくなったのか、アダルトなビデオでも見ている感じで何も感じんな。

 ただ、表情で理奈が満足をしていないのは分かる。


「澤井君、君下手だね…… もっと角度を付けて……」

 ふっ。


 そして犯行現場。

 バッチリ映っていた。



 そう、あの日……

 帰ってきたときに、奴が出てくるのを見た。

 すれ違ったのに、俺が旦那とは思いもしなかったのだろう。


 玄関は開いていて、そのまま中へ入る。

 理奈は寝室で、満足をしなかった体をいじっていた。


 理解した俺は、毛布をかぶせて……


 だが、それが失敗。

 相手が分からない。

 スマホも開けないし。


 そう相手も殺そうと思った。だが、それを調べるのに金をかけるのは勿体ない。

 それに、この状態。


 考え、警察に任せることにした。


 間男は、さっきの奴だろう。ならば。


 確実に心臓が止まっていることだけを確認し、救急車を呼ぶ。


 後は、事実だけを言えば良い。


 それは、思いのほか、うまくいった。


 すべては、奴がかぶってくれた。


「理奈。お前は幼馴染みとしては最悪の部類だが、まあ感謝するよ。計画とは逆になり、保険を俺が貰うことになった。ありがとうな」


 そして俺は、証拠を削除して、マイクロSDカードもつぶす。

 念入りに、隠しカメラを探す羽目にはなったがまあ良い。


 理奈がすぐに計画を実行せず、五年もの期間。一緒に暮らした理由は不明だが、それは俺の考える事じゃない。


 家の鍵を閉め、俺は新しい暮らしに足を踏み出した。



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お読みくださり、ありがとうございます。

もっと練り込んだ話を書きたかったのですが、今回はこのレベルでご容赦ください。

ミステリーやサスペンスを書いていらっしゃる方々には脱帽します。


『犯人捜しを楽しむのがミステリー。 犯人が分かっていて、犯人をどう追い詰めていくかを楽しむのがサスペンス』と言う決まりらしいです。少しそっち方面にも挑戦をしてみます。

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