BR的な何か。

第1話 彼らは転移した。

「修学旅行だからって、羽目を外さないように。良いわね」

 担任の荒川 美紀先生が張り切っている。


 北海道への三泊四日。


 四クラス。

 各クラス四十人。

 百六十人プラスアルファの大移動が始まった。


 貸し切りの飛行機。

 先生に乗務員さん。


 全員で、百八十人。


 無事その旅が始まった……



 みんなそう思っていた。


 だが、ガクンと機体が落ちる。

 エンジンに異常が発生、いきなり止まってしまった。

 電気が落ちる。


 機長は叫ぶ、「各部チェック何が起こった?」


「異常ありません。それよりも現在地ロスト。アンノウンです」

「なに?」


 すべてのシグナルがロスト。


 そして、勝手に高度が下がっていく。

「なぜだ。フラップもエルロンもすべて異常なし」


「アナウンスを出せ」

『当機は、原因不明の現象により当機はこれから緊急着陸します。シートベルトの着用をお願いします。また、ポケットからペンなどの尖ったものを出して下さい。そして衝撃に耐える姿勢を取って下さい』


 無線でも、メーデー。救援コールを伝えるが、入感はない。


「何が起こっているんだ?」


 飛行機は、ジェット推進。今のように、ゆっくり滑空などは普通しない。

 勝手に左へと旋回し、見えている陸地へ向かっている。


 物理的に不可能な感じで緩やかに着陸する。


「この機はいつから、垂直で離着陸できるようになったんだ?」

「機長が知らないもの、私が知るわけないでしょう」

「さて、どうする?」


 そう言ったとき、頭の中に直接声が響く。


「あー、てすてす。聞こえるかな。私は…… 君達の意識の中にある、まあ神のような者だ。これから、この島で皆、仲良く殺し合いをしておくれ。最後の一人は勝者として、皆の幸運を持たせて帰してあげよう。良いかい。生き残れるのは一人だ。きちんと殺し合いをしないと、介入をするからね。そんじゃあ、はじめぇ」


 そんな、気の抜けた合図が聞こえた。


 当然、皆動かない。


 五分が経ち十分が経つ。

「何だよもうぅ」

 そんな、子供がかんしゃくを起こしたような声と共に、いきなり飛行機のエンジンが爆発し、火が上がる。


「うわああぁ」

 流石に皆が、動き始める。


 乗務員さんがあわてて、ハッチを開き。緊急脱出スライドを展開する。

「荷物は持たず。ハイヒールなどは脱いでください。怪我のないよう頭を抱えて」


 そう言われるが、さっきの話が本当なら、過酷な状況になるのは分かっている。

 特にジャングルかどうか知らないが、森ならば持ち物が多い方が役に立つ。

 貨物室の、荷物がなくなるのが惜しいが、そっちまではどうしようもない。


「七海。逃げるぞ」

「えっ、荷物は置いていきなさいって」

「バカ、外を見ろ。森しか見えない。何でも持っていないと、困るのは自分たちだ」


 そう言って、七海の荷物も持って外に出る。

 それを見た奴らが幾人か、手荷物を掴み走り出す。


 俺は、相馬 律そうま りつ、手を引かれているのは幼馴染みで、悩んだ末に彼女にした生田 七海いくた ななみ


 ガキの頃から、仲良く育つと彼女になりにくいらしいが、クラスの奴が七海ちゃんて結構かわいいなといった時。俺は一歩を踏み出した。


「えっ本気?」

 とか言われたが、他の奴に取られるくらいなら、俺が一生面倒を見る。

 そう決めた。


 親父さん達にも「嫁に貰って良いですか?」と聞いたら、「いいぞぉ」と言われたから俺のものだ。


 スロープを滑る。


 そして、いやな予感がするので、速やかに離れて森の中へ入って行く。

 先生が向こうで、「勝手なことをするな戻ってこい」などと言っているが、さっきの声が言っていたことが本当なら、逃げないとまずい。


 目の端で、俺の行動について、理由が分かった人間達、何人かが森へと走る。

 固まって居ると攻撃される。


 いつか見た映像の飛行機は、ひたすら燃えていたが、今回は爆発をした様だ。


 音と振動がこっちまで来た。

 俺達には聞こえなかったが、アナウンスがあったかもしれないし、無かったかもしれない。

 神という奴が、遊びたいならアナウンスをしているだろう。


 ちょっと落ち着いてから、飛行機のあった浜へと戻る。

 本当なら、見せたくは無いが、七海も連れて行く。

 置いていけば、襲ってくださいみたいなものだ。


 近寄るだけで、香ばしい匂いと、髪の焼けた匂い。


 意外と皆、逃げたようだ。


 海の方へ向かい、散らばった荷物やペットボトルなどを探す。

 文明のない雰囲気がする。無人島ならそういうものがきっと役に立つ。


 水に浸かっていたが、自分の荷物を見つけた。

 七海も見つけたようだし、引き上げる。


 他にも使えるかもしれないと、目に付くものは引き上げておく。


「助け合いは良いけれど、最後に辛くなるよ。それも楽しいかぁ。がんばれ」


 また、ふざけた声が聞こえる。



「今の所は、まだ良いだろう」



 見通しのいい海岸より、全体が見られる山側。

 だが山側には、何が居るのかが判らない島。

 虫、動物、植物。すべてが敵になる可能性はある。

 気温は少し肌寒い? 二十度から二十四度くらい?


 島をくるっと回り込み、川を探す。

 あまり大きくはないが、川を見つけて、水場からは多少距離を開けて、上流へ向かう。

 ワニでも居たら怖いからな。


「駄目。ちょっと休もう」

 七海が先にへたばったようだ。


 乾いた岩の上に這い上がる。

「下が堅いから痛いだろ」

 お尻が痛そうだから、抱っこをする。


「ごめんね。痛くない?」

「ああ、柔らかくて気持ちいい。こういう状況じゃなければ始めるところだ」

「もうっ」

 軽く体当たりをしてくる。


 軽口は付きながら、周りは警戒をする。




 第二話に続く……

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