第3話 興味と裏切り

「あーやべ。ねちゃったよ」

「この子、酒飲んだの、初めてじゃないの?」

 皆一様に、やべえという顔をするが、すぐにまあ良いかと思い直す。


「あれだよ、不可抗力だよ」

「そうだな、飲ませたわけじゃないし」

「まあ、あれだな、このままはあれだし。遊び場へ行くか。お前車だろ」

「そうだな」

「この子、真面目ちゃんだから、手を出しちゃ駄目よ」

「わーっているよ。すぐ面倒になるし。おれら二〇を越えているから、逮捕もんだしな」

「まあいこうぜ。店員に見つかるなよ。面倒になるぞ」

「あたしらが囲むよ」

 そう言ったが、しっかり見つかる。


「どうしたのその子?」

「クラスの子なんだけど、グラスを間違えたらしくて、テスト勉強もあったしね。ちゃんと連れて帰るし、酒を飲んだことが広がると面倒でしょ。問題にならないから大丈夫」

「あーまぁ、それなら良いけれど、ほんと問題にならないようにしてよ。罰金ごついんだから」

「あー、はいはい」

 適当に見逃して貰う。


 ********


「うんっあっ、ああっ」

 うん。あの子の声?


 目が覚めると、ソファーに寝ていた。

 見たことのない部屋。知らない天井。

 見回して、私は息をのむ。

 クラスメートの彼女達。

 男の人の上や下。

 

 でも、嫌そうではなくどっちかというと、喜んでいる。


 男の人の上で、ぐにぐにと腰を振っている子が、私に気がついた。

「目が覚めた? 気分。うんっっどう?」

 私は、答えられず、でも、目も離せない。


「さすがに、そんなにみないでよ。うっんっ。もう、話しているんだからじっとしてよ」

「バカだろ。腰を振っているのはおまえだろ」

「あれホントだ。やあねえ」

 この状態で、そんな軽口。


「お水は、冷蔵庫にあるし、適当にっっ。まっ満足したら送っていくしぃ。じゃそういう事でよろぉー。あうっ」

「見られて興奮か? 変態め」

「何か目覚めそう。今度外でする?」

「良いかもな。ほれっ」

「んっっあっああ」


 そんな事が起こっているのは、彼女だけではなく。

 ベッドルームが2つ。

 そして、ソファーベッドでも。

 その子は、男の人二人を相手している。

 上と下で。


 そんな非日常なところで、私は理性を飛ばす。

 あんな顔。とろけてしまいそう。

 部屋全体に漂う淫靡な匂い。

 私の鼻から入り、脳みそを刺激する。


 彼との行為を思い出す。

 未だ彼とは、ここまでしていない。

 あの先にあるのが、この世界。


 無意識に、自分の手が自身を勝手に刺激する。


「うん? したいの? おいで」

 そのささやきにふらふらと、近寄ってしまう。

「あらぁ、良いの? じゃあ」

 クラスの子。見知っているけれど、今日の今日まであまり話しもしたことは無い。

 でも優しくキスされ、その子の下に居る男の人が私の大事な所を刺激する。

 彼とは違う手、ぎこちなさはなく、的確にでも優しく刺激される。


 気がつけば、服は床に。


 やさしく。ほんとうに優しく初めての体験をし、初めてなのにその先を知ってしまった。


 マッサージ道具で目の前に火花を飛ばし、理性を失う。


「あーらら。はまっちゃった?」

「この子、才能というかえっちだわ」

 人によって違う。

 私は貪欲に求める。


 ぐったりとして、力尽き。

 シャワーを浴びて覚醒する。

 まだ何か入っているみたい。

 それだけで、脳がおかしい。

 愛のない快楽。


 良人はどうせ部活で会えない。そう安心して彼らと遊んだ。


 そして、道ばたで良人達と会ってしまう。

 買い出しだろう。両手に持った袋。隣には例のマネージャー。


 私は、彼らの一人と、食事の帰り。

 遊び部屋へ行くつもりで、私のスカートの中へ彼の手は伸びている。

 差し込むつもりだったおもちゃが、落ちて転がる。


「あーもう。最悪」

 私はそれを拾い、彼と足早にその場を後にする。


 良人は見た。

 私たち二人を。

 良人は気が付いた。

 転がったおもちゃを。


 そう。それがどういう事か、気がついただろう。


 そして彼は、何も言わず目を伏せ、私から目をそらし、横を向いた。そう彼女の方を。


 それだけで、十分。

 この前カラオケで見た映像のように。

 この日、私たちは道を……。別の道を歩み始めた。




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 砂の惑星、歌えねえ。

 最近は、早いし高い曲ばかりで歌える曲が無い。


 谷村新司さんの訃報を見て、書き始めたのに何故かこんな作品に。

 初めてカラオケで歌ったのが群青でした。素晴らしい人たちの訃報が続き落ち込む日々。


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