興味に負けた(良人と亜麻衣)

第1話 優しい彼

 私は今、建物の影に隠れて、幸せそうに歩いている男女を目で追っている。

 あの人の横。あの優しい顔と、目を向けられる場所は本来私の位置。


 そうあの人は、かけがえのない。私の幼馴染み。

 大事な人。だった。


 私は欲望に負け調子に乗り。あげく彼を裏切り、あんな女に場所を奪われた。



 子どもの頃から、親も知り合いで、保育園の帰り。家が近い良人(よしと)の家へ私は寄るようになった。


 お母さんも一時間もあれば、余裕を持って迎えに来られる。

 だけど保育園は、一八時くらいまで。それ以降は駄目。そのため毎日ギリギリで迎えに来る。お母さんの仕事は、どうしても十七時を超えてしまう。

 

 この保育園じゃなければ、夜まで大丈夫だが、そういう所は電車での送り迎えとなってしまう。

 そのため、この保育園にこだわり、叱られながも、お願いをしていた。


 それを、見かねたのか、良人のお母さんが声をかけてくれた。

「いつも叱られているって聞いたけど、大丈夫?」

「仕事場を定時で出ると、ギリギリなのよ。会社に近い方なら大丈夫なんだろうけれど、電車の中。ラッシュ時に子どもを連れての移動は、ちょっと遠慮したくて」

「そうよね」

 そんな感じで、話が決まったらしい。


 よく分からないが、物心つく頃には、姉弟のような感じ。

 何故か時間になると、私は別のお家へ帰る。


 良人と一緒に居たい、もっと遊びたい。

 私は、何時の頃からかそう考えていた。


 でも、それは、小学校低学年まで。


 私は、理解した。

 彼の家で、私は異物。

 単なるお客さん。


 この家の家族は、良人のみ。


 でも、私は会いたくて。

 それは幼いながらも、彼を求めた私の心。


 小学校の高学年になり、求めるものは姉弟では無いと、友人とのたわいない会話の中で理解する。体の変化とともに。


 中学校でそれはひどくなり、彼の横で落ち着いていることができなくなった。

 付き合いが長いと家族のようになるという、皆とは違う。


 彼は、二年生を越えたくらいから、進化し始める。

 背は高く、体はがっしりし始める。


 学校の帰り、遠回りをして彼の家に寄り道をする。


 私は、彼に会うため部活もせず、真っ直ぐ家にお邪魔をする。

 彼の部屋へ入ると、真っ先にベッドへ倒れ込み深呼吸をする。


 枕、シーツ。ふふっ。


 満足をすると、宿題を取り出し勉強を始める。

 それが日課。


 そして私は失敗する。

 昨日、彼は捻挫をした。

 クラスが違うため、ついうっかり。

 怪我も大したことはなく、保健室で湿布を巻いただけ。

 病院にも行っていない。そんな怪我。本人も笑っていた。


 彼はうちのクラスよりも早く終わり、帰宅途中コンビニへ寄ったようだ。

 そう私は、追い抜いた。


 いつもの様に、至福の時間。

 満足するまで、ゴロゴロして彼を満喫する。


 そして聞こえる、彼の声。

「何してんの?」

「えっ?」

 その時、すごくだらしない顔をしていたと思う。

 だって、彼を満喫していた私。少しくらい驚いても戻らない。


 怪訝そうな彼の目。

 徐々に、私のアドレナリンは分泌を控え、ノルアドレナリンが大量に分泌される。

 多分ね。


 一気に興奮状態から、冷め。

 彼に見られた恐怖。嫌われたらどうしよう。

 そんな気持ちが、私の心を埋め尽くし、気がつけば彼を押し倒す。


 その時の動きは、暗殺者顔負けだっただろう。


 あっという間に、彼はベッドに寝かされ私は唇を奪い、下半身へ手を伸ばす。

 それがどういう事かはもう知っている。

 すぐに彼は、反応する。


 もうそれで、再びアドレナリンと、反応してくれたことでドーパミンも全開。

 その時私は狂っていた。恐怖と快楽。


 彼のものを美味しくいただき。その後告白をした。

 無茶苦茶な順番。

 彼は、「おう。そうだったのか」短くそれだけ。

 だけど彼は、真っ赤になっていた。


「嫌いになってない?」

「いやまあ驚いたけど、おまえだし。その、気持ちよかったし」

 そうして私たちは、付き合い方が変わった。


 ただまあ、普段は彼は部活があり、帰ってすぐにシャワーを浴びて、少しするとお母さんが帰ってきてしまう。

 あの甘美な彼の匂いを味わう事は、なかなか出来ない。


 でも彼は、気に入ってくれたようで求めてくれるし、私の体にも触れたがる。

 髪の毛も彼は長い方が好きだから、校則ギリギリまで伸ばしている。

 しているときに触れるのが、気持ちいいらしい。

 彼は、短髪だしね。


 でも、さすがに最後まではしていない。

 興味はあるけれど、怖いのもある。

 たまに、失敗して大騒ぎになるし。


 私は、満足。

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