好みの違い(昴と光希)

昴と光希

 私には、幼馴染みがいる。

 彼とは、幼稚園の頃からずっと一緒。


「俺たちは友達だよ。おまえと離れることなどないよ」

 この言葉、私にはこう聞こえていた。

「俺たちは友達だよ。俺はおまえを離さない」

 ちょっとした違い。


 でも、友達はずっと友達。それ以上にはならなかった。


 中学校の時から、彼はモテ始め、他の娘を侍らせ始める。

 あの女、胸はあるかもしれないけれど、勉強は出来ないし運動だって……。

 中学校二年の時。私の心は、闇に落ちていく。


「昴、なんだよ態度が悪いぞ、彼女に謝れ」

「彼はそう言って、私をしかる」

 その言葉に、私はゾクッときてしまった。

 叱るときには、確実に私を見ている。

 でも、やり過ぎると、きっと嫌われる。それは、それだけは嫌。


 彼の彼女が変わるたび、そっといじめる。


 その間に、私にも幾多の告白が来たが、彼以外に興味は無く。すべて拒否していく。


 そして、チャンスがやって来た。


 大学の新歓からの流れで、飲みに出る。

 無論まだ二十歳前。飲んではいけない。

 でも私は、彼のグラスに少しずつチューハイを混ぜていく。


 そして、酔っ払った彼を、私の部屋に連れて行く。


 そっと服を脱がし、彼を抱きしめる。

 鍛え上げた体。割れた腹筋を指でなぞり、彼が反応するのを楽しむ。

 ドキドキしながら、ズボンと下着を脱がそうとするところで、彼が目を覚ます。


 彼は、一瞬状態が分からなかったようっだが、理解したのだろう。目を見開く。

「何をやっているんだ、昴」

「光ちゃんを頂こうかと」

「やめてくれ。幾らおまえがかわいくても、趣味じゃない」

「ちょっとくらい良いじゃない。試すと良くなるかもよ」

 あきれた感じで、光ちゃんはため息を付く。


「中学校の時から、事あるごとに人を襲おうとしやがって。俺はそんな趣味はないと言っただろう」

「えー友人だし、かわいいって、いつも言ってくれるじゃ無い」

「それはそうだが」

「直すから」

「無理」

 そう言って睨む。その目にゾクゾクする。


 思わず、キスをしに行こうとするが、アイアンクローを食らう。

「痛い痛い、離して。頭が割れる」


 ひどい。

「どうしてよ。胸が好きそうだから増やしたし」


「おまえの胸は、プロテインとベンチプレスで作った筋肉。大胸筋と言うんだ」

「せっかく、カップだってCになったのに」

「とにかく、顔がかわいかろうが男を抱く趣味はない」

「大丈夫。私が抱く方。優しくするから」

「するな。おまえ普通に女が好きだろ。どうして俺を抱こうとする」

「興味? 自信一杯の光ちゃんが、ひいひい言うところを見たい」

「サディストめ」


「はっはっは。今日の為に、鍛え上げた我が肉体。逃がしはせん」

 私は宣言し、両手を広げて彼に襲いかかる。

「どこの魔王だよ」


 ひどいことに、光ちゃんはフェイントからの、キドニーブローを打ち込み。まだまだだなと、台詞を吐いて帰って行く。キドニーブローは反則よ。


 そうして、彼が私の体に残していった、焼け付くような痛みに私は、のた打つ。


 次は、先に縛り付けてからにしよう。

 


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 怖い話でした。

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