三角関係からの自爆(淳と架そして真途花)

第1話 子どもの頃

 朝、架(かける)を会社に送り出す。

 そして、真途花(まどか)はマンションの隣に住む淳(あつし)の家へ赴き。いつものように鍵を開けて中へ入る。

「うわ酒臭」


 リビングから続く、ベランダの窓を開ける。

 風が、流れ込み。籠もった匂いを押し出していく。

「仕事とは言え、毎日じゃ体が壊れるよ」

 ベッドルームをのぞき込み、脱ぎ散らかした服をたたみ、洗濯物を抱えて浴室へと向かう。

 これは旦那である、架も知っていること。


 仲良し3人組で育った3人。

 子ども達も仲良しにしようと、隣同士で部屋を借りている。


 出会いは、幼稚園? だろうか。

 元々は、架と淳が隣同士。

 親同士も仲がよく、夏場は庭でバーベキューをしている。

 新興の住宅地ではなく、少し田舎のため苦情などでない。


 そこから、数100m離れた所に、家を建てたのが真途花の親。

 幼稚園で、親が話をして仲良くなったようだ。

 無論、新築の挨拶等で顔見知りではあった。


 順調に、仲良く小学校を経て、中学へ。

 当然、真途花が先に思春期へ突入。エストロゲンに支配され。

「憧れの先輩が」

 などと言う話を聞かされはじめる。


 これにより、架と淳も遅れて、テストステロンの支配を受け、色々なことに張り合うことになる。名前の出た先輩。勉強が出来ると聞けば、二人とも勉強を頑張り、運動が出来るとなれば運動を頑張る。

 それが何故かに、気がついたのは架が先で、真途花に告白をする。

 幼いながらも、二人は付き合い始める。


 中学3年になって、淳は異性と恋心について興味を持ち始めた。

 その時、ずっと隣にいた真途花への気持ちに気がつくが、すでに付き合っている架が居るため、遠慮する。


 まあ、淳はモテた。

 勉強は出来るし、運動が出来る。

 架の横には真途花が居るが、淳はフリー。

 だが幾人か付き合ってみるが、真途花と比べてしまう。


 そのため、色々なところが目に付き、長続きはしない。まあどっちもが幼い、中学生の恋愛。簡単に終わってしまう。


 仲良く、高校へ進んだ頃。少し変化が起こる。

 クラスの女の子。

 昨日は普通だっただが、昼休みを過ぎてから、様子がおかしい。


 恋心に気がついてから、真途花をずっと見ていた淳は、幸せに浸りきっていた架と違い。女の子の機微に聡い。

 淳は、架を誘い2人で、その女の子を見張る。


 放課後。上級生と合流し、男子部室に引っ張り込まれる。

 上級生は、男が3人。


 近寄り、聞き耳を立てる。

「おら、グズグズするんじゃねえ」

 声を聞いて、覗こうとするが、窓はワイヤー入りのかすみガラス。ご丁寧に窓の前にロッカーでも置いてあるのか、全く中が見えない。


 やがて中から、すすり泣く声と、先輩達の声。

「おう。じゃあ、これを持って警察に行こうか。万引きは犯罪だ」


 聞いている二人は、心の中で叫ぶ。監禁して、何かを強要するのも犯罪だ。

「どうすれば」

「そうだな、手か口でいいや。ほれ、見たことないだろ。よく味わえ。いやなら、下の口にステップアップだ。したことないんだろ。何事も経験だ」


「黒だな」

「ああ。行くか。3人だったよな」

「ああ」

 2人でひそひそと、段取りを決める。

 淳が先に、携帯で動画を撮影しながら、突っ込む。


 続いて架が飛び込む。驚いて固まり。下半身丸出しの状態で突っ立っている、先輩達を容赦なくボディーブローで、無力化していく。

 架と淳はテストステロンの支配を受けていたときに、駅前にあった、キックボクシングを少し習った。

 もっと本格的にする気だったが、顔を腫らして帰るため、真途花が泣いてしまった。

 そのため今は、スパーなしのトレーニングコースに、月2回ほど通っている。


 あっという間に、無力化して、現状のまま後ろ手に縛る。

 勝手に、スマホをいじり、女の子に確認する。

 これが証拠の、写真か?

「えっ、どうしてそれを」

「外で聞いた。他には何もされてない?」

「うっうん」

 スパッと、その写真を消すが。次に表示された写真。他の女の子が、もっとひどいところまで、被害を受けていたようだ。


「淳。他の奴らのスマホも確認しろ」

「おう。顔認証だから楽勝だな。あーと、これは、なかなかお宝だが、コピーしちゃ駄目?」

「だめ。削除もするな。先生を呼んで、警察だ。この子の万引きの証拠だけでいい」

そう言った後。

 今回の、話。つじつまが、合わなくなる事に気がつく。

「ちょ待て、消しちゃ駄目だ」

 あわてて淳に声をかける。


「えっ。消しちゃった」

 二人で、顔を見合わせる。


 焦っている2人に、横から声が掛かる。

「あの、ゴミ箱に入れただけなら、戻せば大丈夫です」

 そう教えて貰い、復活させる。


「ごめんね。今日の話をするのに、何故そうなったかを説明しないといけない」

「はい。自分のまいた種です。責任を取ります」

 その言葉に、ちょっとむかついた。


 顔で分かったのか、淳が止めようとするが、言ってしまう。

「高校生が、どうやって責任を取るんだよ。必ず親に話しがいって、親が責任を取るんだ。未成年て言うのは、そういうもんなんだよ」

 偉そうに説教するが、中学校の時にいじめを見つけて、相手をぶん殴り。親に迷惑をかけた経験が、架と淳二人ともにある。

 そのため、今回は手加減をしたボディーブロー。拳も痛めない。前の時には、殴り損ねて小指を折った。


 俺がそう言うと、女の子はうつむいて、ボロボロと泣き出す。


「おい、なんだよこれは。ほどきやがれ」

 やっと復活したようだ。

 まあボディは苦しいだけで、意識はあったはず。

「やだね。騒ぐと人が集まってくるぞ。その粗末なものを、見世物にするなら止めないがな」

 そう言うと、自分たちの格好に気がついたのだろう。おとなしくなった。


「ちょっと、先生呼んでくるわ」

 女の子と、淳を置いて、職員室へ向かう。

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