第2話 高校の時 その1

「本当か?」

「こんなもの、嘘言ってどうするんですか?」

「まいったな。それに、他にも被害者がいるって?」

「います。奴らのスマホに、写真があります」

「見たのか?」

「見ました」

 悩み出す、先生。


 悩める中間管理職。


 今の校長は、教育委員会からの出向組だったはず。

 さあ、どうする先生?

 おもしろがっているのが、顔に出たのか、睨まれる。

「こっちだけで、警察呼んだらぶつぶつ言われるからな。校長を連れて行く。ちょっと一緒に来い」


 校長室を、ノックする。

「はい。どうぞ」

「「失礼します」」

「うん何だね。その子の問題かな?」

 ニコニコと、笑顔で迎える校長。


「あーまあこいつが持ってきたには間違いありませんが、警察案件です」

 その瞬間。校長の表情から、笑顔が消え、立ち上がろうとして、机に手をつきそこね。床を転がり出てくる。


 めがねを直しながら立ち上がり、聞いてくる。

「いっ、一体何があった?」

「脅迫並びに不同意性交です。あー写真もあったから、盗撮もかな」

 俺が答える。


「きっ君はどういう関わりだ?」

「今日。新に事が起こりそうなところを、クラスメートの淳と共に防ぎました。すると余罪が、奴らのスマホに入っていました。捕縛はしていますが、急いでください。また警察への連絡をせず奴らを離した場合、殺人事件に発展する可能性があります。早急に対応をお願いします」

「くそう。どうして。あと1年だったのに」

 おや、校長から、本音が出たが仕方が無い。見つけたんだもの。


「警察に電話をして、すぐに行く。場所は?」

「クラブの部室棟です」

「分かった。犯人を逃がさないようにな」

「はーい。先生。行きましょう」


「おう」

 先生と2人、小走りでグランドの方へ向かう。

「しかし、しらっと釘を刺すとは。おまえ、楠田だよな。うちのクラスの」

「入学してきて、もうすぐ2ヶ月です。先生のクラスで、お世話になっています」

「嫌みな奴だな。覚えてないわけじゃない」

「そうですか? あっ、あそこです」

 表に、淳と女の子が立っていた。


「奴らは?」

「穴掘って、逃げていないなら居るだろ。中で、顔を突き合わている理由もないしな」

 女の子の方をちらっと、淳がみる。


「ああ。なるほど」


「証拠のスマホは?」

「これです」

 純のポケットから、三つ出てくる。


 先生に渡すが、パスワードが掛かっていて開けないようだ。

「どうやって開けるんだ?」

「ああっ、適当に押すな。ロックされる」

 そういうと、手を離し、落としやがった。

 あわてて、空中で掴む。



「何をしているんですか?」

 そう言って、掴んだスマホを持って中に入る。


「なんだよ、こら。早くほどけや。今なら許してやる」

「そう言って許す奴、今まで見たことありません。大概覚えてやがれとか、夜道に気を付けろとか。俺の右手が、黙っちゃいないとか言うんです。ああ。先輩のだったんですね。ありがとうございます」


 顔で、ロックを解除して先生に渡す。


「これです。顔認証で開きますので、適当に押さないでください」

「画面ロック自体は解除できないのか?」

「たぶん解除するときに、PINかパスワードが必要です」

「そうか」

 そう言いながら、顔つきが変わる。


「こいつら、全然知らなかった。学校であっても。普通の顔していたのに、こんな……」

 先生の頬に涙が伝う。


 すると、ピタッと指が止まる。

「これの、コピーの仕方知っているか?」

「コピー? 転送ですか? いくつかありますが、先生にメールとかで送ると、共犯ときっと勘違いされるので、USBか何かで繋いで……。そのかわいい子、二年生ですか?」

「そうなんだよ、かわいいだろう。安西と言うんだが、テニス部でな。胸も……。あっいや。またロックとか掛かると、警察がだな。困るのかと思ってな」


「聞かなかったことにします」


 そうこうしていると、外からパトカーが入ってくる。

 駐車場で、止まる。すると、校長先生がすぐに挨拶をしに行く。


 こっちを指さし、案内してくるようだ。


「事件というか、被害者は君?」

 警察官は、すぐに彼女に声をかける。

「はい、そうです」

「名前、良いかな」

「小縁 雪菜(こべり せつな)です」

「歳は?」

「いま15歳です」

 なんだか、かきかきとメモを取る。


「その被疑者(ひぎしゃ)は、中かな」

「そうです。それと、奴らの携帯です。消されると困るので、こっちで持っていました」

 ロックを解除した奴を、一番上で渡す。

「これロックは、かかっていなかったの?」

 警察官の目付きが厳しいから、しらを切ろう。


「いや顔認証なのか、奴らが撮影をするつもりだったのか、見たときはロックがかかっていませんでした。まあ中が中なのでちょっと確認をしていて」

「見たのは、聞いていないことにするから、君も忘れてあげてね。それと、勝手に見るとプライバシーの侵害による損害に対して、損害賠償請求出来るし、勝手にパスワードを入れてロックを解除したりすると、不正アクセス禁止法に抵触するので罪に問われる可能性が高いからね」

 そう言ってから、怖い顔をして部室の中へ入っていった。


 外では、もう一人のお巡りさんがニコニコと笑っている。

 体全体から、近寄るなと言う雰囲気が出ている。


「おーい。応援」

「はい」

 そう言って、連絡をし始め、数分後には関係者以外、下校になった。


 帰ろうとしたら、捕まり。肩に手が置かれる。

「捕縛時に、殴ったんだってね」

 うん、いい笑顔で告げられる。

「話を聞きたいから、一緒に来てね」

「はい」

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