自爆(賭と小春)
屑だけど好き。 ……だった。
湯目尾 賭(ゆめお かける)は、幼馴染み。
ご先祖様が開いた湯治場の、7代目だか8代目。
私の家は、近所のお土産屋をしている。
丁度、年の近い子供が私たちで、小さな頃から遊んでいた。
だけど、彼のお父さんは、堅実に商売をしたけれどうまく行かず、自分の思いを子供に賭けた様だ。ご先祖様のように、チャンスを掴め。そう言われていたみたい。
おかげで、子供の時は、彼にお小遣いを随分取られた。
その事で、小学校で問題になった事も幾度かあった。
当然彼は、私だけではなく、他のクラスメートもかもにしていたようだ。
それは、中学校でも続き。いつかは、ヤバイグループとももめたが、けろっとして彼らと仲良くなっていた。
いつもひょうひょうとして、何を考えているのか分からない。
でも、学校の勉強も出来て、凄く賢い。
運動も出来て、彼はモテた。
でも誰とも付き合わず、ずっと私と仲良くしてくれる。
私は、ずっと中くらい。容姿もまあ。そこそこ。
何故か彼は、小春は一緒に居ると安心する。
そう言ってくれる。
私に合わせたのか、高校も普通の公立高校。
そこでも、彼は本領を発揮する。
幾人かの、女の子を賭けで縛り。小金を稼ぐ。
私は知らなかったが、後の同窓会で聞いた話。
私の前では、普通の彼だった。
ガラの悪い奴らと、連み。
実家のコテージ型の離れを、勉強部屋と言って使っていたみたい。
私は、そっちには誘われなかったので、詳細は知らない。
だけど、顔は見えないけれど、インスタントカメラを使って撮影した物を、売っていたり色々。年頃の男の子達に売れたみたい。
彼はグループの中で、重要だけど表に出ない。
そんな立場を守る。
そして、地元の国立大学へ進学。
仲間達の数人も、入れたみたいだけど。大多数はついて行けなかったみたいね。
私も、ついて行けず。商業系の短大へ入った。
でも、家は近く。関係は変わらなかった。
でも寂しくて、彼に告白して一線は越えた。
彼は優しく、でも初めてじゃなくて少し悲しかったが、彼は私と違う。モテたもの。
彼の絡むグループは仲良く何かをしているみたいだけど、私は関わることもなかった。
「奴らはバカだから、近寄るな」
彼に、釘を刺されていた。
そんなとき、私たちの学校で、密かにお金の欲しい子達が、単発のアルバイトをしているのが、学校にばれ。騒ぎになる。
誰かに、仲介された男の人とデートをする。
そこにお金が絡み。
紹介料を、取られる。
この時は、10%位だと聞いた。
でも、問題が起こったときには、助けてくれる。
その中で、浮かんだ名前に、聞いたことのある名前をいくつか聞く。
私は、彼に聞く。
「学校でこんな事があったけど、関わりはないよね」
「あいつらバカだからなあ。おまえは近寄るな。いい話には絶対裏があるから」
そう言って、優しく笑う。
そして、優しく甘えさせてくれる。
そして、彼の言葉は本当だった。
アルバイトをした子達は、その事をネタに、深みにはまっていく。
その話を、友人から聞く。
「彼女たち、本格的に、売っているみたい」
食堂の一角にいる、数人のグループをこそっと指さす。
一緒にいるのに、目線はずっとスマホ。
やがて、1人。2人と抜けていく。
この頃から、彼はパチンコ屋に頻繁に通い出す。
でも、打つわけではない。何かを調べメモをする。
家にいくと、パソコンが進化していた。
きらびやかなLEDが、中身を照らし色が変わっていく。
「綺麗」
それに、モニターが3つ接続され、よく分からないグラフや数字がどんどん変わっていく。
「凄いだろ。重要なのは情報なんだ」
軽く説明されたが、よく分からない。
でも。
「パチンコや競輪競馬、ボートレース?」
「そうだよ。特にボートレースは6艇だからね」
「買っているの?」
「買わないよ、売るのさ。世の中バカが多いんだ」
「そうなの?」
「ああ」
そんなことを言っていた彼は、数年後。姿を消した。
グループの末端が逮捕され、芋づる式にチームが捕まったが、彼にまでは届かなかった。だけど本職の人達は許してくれなかった。奴は拉致られた。
一緒に彼と、大学に通っていた人が言ってくれた。
「奴は多分。責任を取らされた」
そう言って、その人は泣いていた。
彼の家族は、失踪届を出したが見つからず。
もうすぐ7年がやってくる。
かれは、何もなかったように、ひょっこり帰ってきそうな気もするけれど、私もこの春。結婚をすることに決めた。
凡庸で優しい人と。
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その辺りに、よくありそうな話。
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