三角関係(健太と恋)
第1話 皆仲良し?
向こう3軒両隣と言いますが、区画的に家と恋(れん)の家。
向かいに一軒。同じ年頃の子供が居る。
家が、おれ健太(けんた)。隣の恋(れん)の家。
家の向かいに、遥陽(はるひ)。
子供の頃は、どこかの家に預けられて、色々な行事を、親はこなしていた。
途中で、住宅地の中で子供会なるものが発足して、さらに関わりが深くなる。
中央にある公園に、冷暖房完備。給湯室を備えた住民交流会館などが出来て、そこにいつの頃か、雑誌や不要図書が寄付され、学校帰りの子供達が集まるたまり場となった。
近くの住人が、当番的にいつも誰かが居て、ある程度までの時間なら、保育園的な受け皿ともなっていた。
中学校になると、遥陽は持ち前の運動神経と、負けず嫌いな性格でめきめきと存在感を示し、恋は穏やかな見た目と、吹奏楽でフルートを披露して人気者。
だが、僕は、2人の本性を十分すぎるほど知っている。
僕と違い、超が付くほど負けず嫌い。
それでも恋は、僕のことを気に掛けてくれるし、好きだった。
たとえ、2人にとって僕は、腐れ縁で。見下し、自身の溜飲を下げる存在だとしても。
人気者の2人。
だが、さすがに中学生。そんなにドロドロする関係などありはしない。
たまに、男も女も見知らぬ奴が入ってきて、グループ交際を幾度かして、いつの間にか来なくなる。
それは、裏で、恋と遥陽がお互いにおどしていたから。無論直接では無く、親衛隊みたいなのが居て、チクるだけ。
「おいおまえら、最近。恋の周りを○○って言う奴がちょろちょろしているがどんな奴だ?」
そう言って、遥陽が聞けば良い。
逆もまたしかり。
どうせなら、さっさと2人がくっ付けば良いのに。無論本心じゃないが、くっ付いても問題は無い。
お互いの負けず嫌いがネックになることを、3人とも長い付き合いで知っている。
そう、僕が間に入って、双方向のプライドを満足させなければ、関係が続かない。
そして、中学校は卒業。
舞台は、高校へ。
人生の中で、大多数は気ままに、はじけられる時代。
ここでも、2人は人気者。
とっかえひっかえ、相手を変える。
だが、プライドが高いが故に、おかしな事が起こる。
中学生のときと違い、恋が遥陽相手に対抗心を燃やし。適当に相手を決めて、付き合うと、相手の男は舞い上がり、一気にステップを詰めてこようとする。
ちょっと買い物デート、次は映画。
帰りに、キスでもと言って、恋相手に唇を尖らせてくる。
これは、恋にとって、恐怖以外の何物でも無かった。
「よく知らない相手と、口を合わせる? 冗談でしょう。気持ち悪いわ」
「でも、それがキスじゃ無いの?」
そう僕が言うと、キッと睨む。
「興味はあるけれど、よく知らないというのが、駄目なのよ」
テーブルをバシバシと叩く。
「じゃあ張り合って、付き合わ無ければ良いじゃ無い」
「それは駄目。私のプライドというものがあるの。分かる? あんたみたいに勉強でも運動でも、負けてしまっても、まあ良いやなんて、ヘラヘラは出来ないの。せめて、遥陽に勉強で勝っている奴を選んだのに。どいつもこいつもキスして良いって聞いてくるの。ひどい奴なんか、いきなりよ。それも映画館で。思わずぶん殴ったわ」
光景が目に浮かぶ。
「どうするの?」
「何とか、ハグだけは何とか。それと、服の上から、胸を触らせるくらいなら、何とか我慢できるかも」
「それ、ハグは顔が見えないけれど、離れ際にキスしてくるよ。絶対」
そう言うと、想像ができたのか。いやそうな顔をする。
「それに胸を触るとき、絶対嫌って言う気持ちが、顔に出るよね。恋だもの」
「あーうん。出るわね。なにその、恋だものって。健太のくせに私を馬鹿にしているの?」
「馬鹿にはしていないけれど、長い付き合いだもの。分かるさ」
「演技くらいできるわよ」
そう言っているが、すでに機嫌は悪い。
「どれ」
そう言って、胸に手を伸ばす。
家が隣で、僕に対してだから、恋の格好はほとんど部屋着。タンクトップとスポーツブラ? 短めのキュロットスカートだが、ウエストはゴム。
ゆるゆる、ぐだぐだな格好。
「ひん」
そう言葉を発し、自身の胸を腕でカバーする。
当然顔は、般若。
「なにを、するのよ」
「さっき言ったのに、全然じゃん。数度しか会わない、見知らぬ奴相手なんか、絶対無理だろ」
プライドをあおると、基本乗ってくる。
「ぐっ。突然だから、びっくりしただけよ。触る前に言いなさいよ。私の胸を触って気持ちいいでしょ感謝しなさい」
「いや、一瞬だからよく分からない。大きな方じゃ無いし。さわり心地って、大きさで差があるのかな?」
「しっ。失礼ね知らないわよ。男ってば、どいつもこいつも大きい方が良いだなんて。それなら、牧場でも行って、乳搾り体験でもすれば良いのよ。胸がって言う言葉だけで最近傷つくわ」
そう言って、完全にお冠。
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