久々、浮気(隼人と雫)

第1話 活発系運動少女。雫

「へへーん。隼人。早く来なさいよ」

「ちょっと待ってよ。雫ちゃん」


 雫は、名前と容姿に似合わず、活発な女の子だった。

 川でも、土手でも走り回る。

「あーたのしい。走るとさ。頭の中が真っ白になって、気持ちいい」

 そして、危ない奴だった。

 まあ。気持ちが良いのは、分からないでもない。


 小学校4年生の時は、50mで8秒6位の記録を出して、市だったか、県だったかの、選抜に呼ばれたこともあった。ちなみに、その時僕も9秒くらいだったと思う。

 だけど、高学年。

 5年生くらいから、急に女の子ぽくなって背も高くなった。

 成長痛とかもでて、5年生の時から呼ばれることはなかった。


 知った子が、ジュニア選抜の練習会に、呼ばれたらしいと悔しがり。泣いていた。


 だが、ぼくは、心を鬼にして雫に言った。

「宿題を済ませろ」

「ひどい、こんなときには、さっさと済ませてから。ほら雫。僕のをごらんとか言って見せてよ」

 そんなことを言ってくる。


「それってちょっと間違えると、変な人だよ。この前も。校門に近くに、でたって言っていたよ」

「なに? それ」

「多分雫は、練習をしていたから。会っていないけれど、コートを着ていて。下に服を着ていない変な人が出るから、気を付けなさいって、先生が言ってたよ」


「何それ? 何が楽しいの?」

「わからないけど、女の子におち○ちんを、見せるんだって」

「ふーん。変わっているね」


 そんな話を忘れた、6年生の時会ったらしい。

「思い切り、蹴り飛ばした」

 そう言って雫は喜んでいた。

 ちなみに、今のタイムは、僕とほとんど同じくらいで、8秒5くらい。

 今年も呼ばれなかった。


 そして中学校。

 雫は、陸上部へ。

 ぼくは、興味があって、剣道部へ。

 ところが剣道をする奴は、子供の頃から道場に通っていた。

 初めてと言ったら、「えい」とかけ声をかけながら、体育館の周りを、すり足でくるくる回る。

 ある程度したら、正座で見学。


 足が、しびしびで、体育館のモップがけ。

「だーどうする?」

「先輩達かっこいいけど、防具とか道具も高いしな。体験終わったらやめるか?」

「防具を買ったら、やめられないよな」

 中学になってできた友達と、話しながらふとグランドを見る。


 日の当たる中。

 歯を食いしばりながら、スタートダッシュを繰り返している。

「中学生も、先輩になると体が凄いな」

 横で座っている中田が、ぼそっと言う。

「すごい筋肉」「すごい胸」

 そして顔を見合わせる。


 筋肉と言ったのは、俺。

 胸と言ったのは、中田。

「あーうん」

 お互いに、何か納得。奇妙な連帯感。

 ただまあ、まだこの頃は、付き合うとかそんな感情はまだない。


 3日も経つと、俺たちは足の皮がベロベロに剥げて、泣きが入り始める。

「やっぱり、やめようぜ」

 中田はそう言って、サッカー部に行った。


 そして、モテ希望でサッカーに行ったけど、走ってばかりとぼやいていた。

 その頃、俺は素振りが練習に加わった。

 「防具は、此処に共有のがあるが、使うなら使って良いぞ。だが、甲手と面は強烈だぞ。耐えられるならな」

 そう言われて、つい匂ってみた。


 俺はその行動を、ものすごく後悔した。

 初めて、目にしみる匂いという物を経験した。

 

 その晩、親に向かって一生のお願いをした。

 父さんは、高校の時に選択授業で、柔道か剣道があったから知っていた。

 何とか、買ってもらった。


 そして、よし1年もトレーニング開始する。

 そう言って、真新しい袴と銅を着けと胴を着け。

 甲手と、竹刀を持って、学校の周りをランニング。

 昔は、裸足でやっていたらしい。

 夏場は、やけどすると笑っていた。


 そして。

「隼人。足マッサージ」

 そう言って、漫画を読みながら、足をこっちに投げ出してくる雫。


「あーもう。ぐにぐにと揉んでいく」

 マッサージなんか知らないと言ったら、本まで持ってきて勉強させらられた。

「俺だって疲れているのに」

「じゃあ、後でやってあげる。順番ね」

 そう言って、まともにしてくれたことはない。


 悪い考えが浮かび、思いっきり脇をこそばす。

「うきゃ。うひゃはは。ちょ。ととと。やめてぇぇ」

 パッと手を離す。


「うーひどい。涙が出た」

「リラックスできただろ。宿題。ほれ」

「あーもう」


 そんなことをしながら、2年生。


「よーし。そこまで」

 1年経つと、そこそこ打てるようになってきた。

 無論、先輩が隙を作り、わざと打たしてくれている。

「おまえ、まだ、打突の時見ているな。目線で攻撃が分かるから。躱しやすいぞ」

「おす。気を付けます」

 そして、短距離と中長距離は、俺の方が雫より早くなっていた。

 剣道の、打ち込み。常時ストップアンドゴーをしているみたいなもの。

 そして、防具を着けてのランニング。

 強くもなるさ。

 100mを12秒後半から13秒で走っていた。


 雫は13秒台。


 そのため、最近は秘密特訓をしている。

 そもそもは、ひもで引っ張るらしいが、雫の背中を押して走る。

 たまたま、競争して。俺が、勝ったため。

 悔しがっていた雫が、ひらめいたと言って始めた。

「どえわー。走れ走れ走れ」

「ちょちょちょ。早い」

 こんな感じ。

 そして、河川敷なので、アクシデントもまあある。

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