第3話 何か違う。自然との共生

「ふふーん。余ったご飯は、オムライスが一番」


 作っている間に、洗濯は、彼のチノパンやシャツなどへ移行。

 私の下着は、手洗いにした。


 チューハイを飲みながら、オムライスを食べ。

 整った彼の顔を眺める。

 来たときに比べれば、大分まし。


 たまに、ビクッとなって苦しそうだけど。何かしら?

 本当はスポーツ飲料でもあれば良いけど、この格好で買い物は、さすがにいやよ。

 あれ、でも彼。トレーニングをしているって。


 ふと思い出し、台所の引き出しを開ける。

「あるじゃない」

 パウダーのタイプ。水1Lに一袋。


 探すと、ボトルもあった。

「水じゃ駄目よね」

 お湯を沸かして、湯冷ましを作る。


 冷ましている間に、ちょっとトイレ。


「うっ。汗臭いし。たばこ臭い」

 確か消臭剤があったはず。なんで10本も? しかも2本空になっている。


 まあいいわ。ぱしゅぱしゅと吹いて、便座も除菌。

 お友達。使わせてもらいまーす。

「ふふっ。お友達だなんて変な人。神様が格上げしたのかな」

 出るときに、灰皿代わりのお皿や、スマホまで。すべて片付ける。


 しかも、スマホ。ロックされていない。

 ごめんなさい。画面には写真? いや動画。


 あっ。これ。

「これかあぁ」

 その映像ですべて、まるっと理解した。

 かなり衝撃。

 知り合いの。この手のものは、くるものがあるわね。

 普段の彼女からは、考えられない。


 ふと思い出す。彼女との会話。

 自然との共生。文明の中での暮らしは、人をむしばむ。

 なんか、そんなことを言って、キャンプとか誘われたわね。


 そっかあ。ナチュラリストとか、自然主義者って言う感じのグループなのかしら?

 それにしても、さっきのはちょっと違う気がする。

 自身が犬になってというのは、おかしくない?


 トイレに籠もっていても、仕方がないので出て行く。


 彼には悪いが、情報を漁らせてもらう。

 通信アプリの履歴。

 既読無視。3日前は普通。

 うーん。

 さっきの動画。一昨日の7時過ぎ。


 自分のスマホを取り出す。

 今日は家族でとか、さっきのメッセージにあった。


 チューハイと、オムライスがなくなるまで、考える。

 うーん。もう一本。チーズをちびちびと裂きながら、考える。


 今は、もう9時過ぎ。考えれば遅い時間。

 でも。彼の様子を見てきてと、彼女は言った。


 ええい。女は度胸。

 通話をタップ。

 だがでない。

「なーんだ」

 うーん。もう一度。


「もしもし。佳代? どうしたの」

 出たじゃない。少しあわてる。


「ああ。彼の様子。見てきたわよ。二日酔いで死んでたわ」

「そう。んんぅ。ちょっと。あぁっ」

「ねえ。あなた。一昨日の夜。7時頃。学校の近くにある公園にいた?」

「んんっ。えっ。あっ。居た。修行中だったの。ふっ。あっ。見たの」

「うん」

「気持ちよさそうだったでしょ。あっ」

「えっ? 気持ちよさそう?」

「はぁっ。うん。本当はね。山とかで、ゆっくりするのだけれど、時間がないときには、ああやって。町の中でも、自然の多いところで、自然に戻るの。ふっうう」


「さっきから、大丈夫? 何か、しんどそうだけど」

「ああ。今も道場で、精神開放中。気持ちが良いわ。見せてあげる」

 そうして、画面がビデオ通話に切り替わった。


 そして、彼女自身は通話しながら。後ろから胸に手。多分後ろから、誰かに突き上げられているのだろう。

 横の人は、通話が終わるのを待っているのか、ものが画角に入っている。


 ビデオに切り替えたためか、躊躇無く喉の奥まで飲み込んでいく。

 そして、彼女の向こうには、彼女のお母さんやお父さんも見える。

 画角には、入っていないが、きっとあのかわいい感じの妹も。どこかに居るのだろう。


「素晴らしそうだけど、私には無理よ。無論。大地君も無理って言っていたわ。もう私たちに近付かないでね」

「そう。残念だけど。分かったわ。気が変わったら、いつでも声を掛けてね」

 そうして。通話が切れる。


 通話を切って、しばらくは放心状態。

 さっきの光景が。目の奥に焼き付いている。

「どっと疲れた。完全にぶっ飛んでいるわ。さて、勝手をして、彼にも近付くなと言ったし。責任をとらないといけないかな?」

 

 すぐ横で、眉間にしわを寄せているのは、彼女の声で夢でも見たのか。

「悪いことしちゃった。うーん」

 人間。あんな事ができるのね。

 感化されたのか、ちょっとだけ試してみたくなった。

「私初めてなの」

 そう言って、毛布を捲る。




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 フィクションです。

 全くもって、想像のお話です。

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