そんな趣味はない(大地と薫)

第1話 知らなかった現実

 その日。神は死んだ。死んでなければ殺してやる。

 俺は大地。大学2回生。


 周囲は薄暗くなってきた。

 大学の帰り、駅へ向かうため。

 俺は人通りが少ない。公園を突っ切る。


 この公園。近道に良いのだが、夜も遅くなれば。色々と物騒なところ。


 ここは広いし、木が茂っているせいで、外灯の数が不足している。

 暗いところが、かなり多い。


 そのため、行為を見せたがりなカップルか、それを狙う痴漢。はたまた、行為中のカップルに、俺たちも混ぜてくれよと言ってくる。危ないグループが多い。だが、今の時間は、まだ健全なはず。

 俺はそんな、公園を突っ切っていく。


 その途中。


 そうだ。

 俺には高校1年生の時から、恋人として付き合い始めた幼馴染みがいる。

 子供の頃はおてんばだったが、今はロングヘアで落ち着いた。お嬢さんな感じになっている。髪の毛を伸ばし始めたのは。

 そう。確か高校3年の時だったか。

 部活も終わり。短くしなくていいとか言って、伸ばし始めた。

 しばらくして、ある程度長いと、束ねるのに便利ねとか言って笑っていた。そんな記憶もある。


 そう。丁度。ぽつんとある。

 外灯の下。


 

 リードの付いた首輪をはめ、グレーチングをまたぎ。自らスカートをまくり。

 男に放尿を見せている女。

 そうまさに。あいつが薫(かおり)だよ。


 行為が終わり、男が一歩近付く。素早く髪を束ね。男がきっと出しているのだろう。

 嬉しそうな顔をして。腰の辺りに手を回し。頭を振リ始めた。


 男が、鞄から何かを取り出すと、いそいそと自らの股間へ装着する。

 すると男が、手元で何か操作する。

 体は、一瞬ビクッとするが、その間も、頭は動き続けている。


 やがて動きが止まり、舌なめずりする顔が見える。

 そして、リードに引かれ。おぼつかない足取りで、どこかへ行ってしまった。


 俺はただ木の陰で立ち止まり。ずっとその場にたたずむ。

 警官に、職質されるまで。



 翌日。自室のトイレで便器を抱えて寝ていた。

 口の中が気持ち悪い。


 何をどう言って、警官に開放されたか覚えていない。ただ、恋人に裏切られた事をひたすら言った事は覚えている。


 警官は何度も、離れようとしたが、声を掛けたなら責任を取れといって、たしか。

 最後、奴らは逃げたな。誰にも聞こえない緊急通報が来たとか言って。


 昨夜。帰って来るなり。

 そうか。消毒をしなきゃと思って、手近にあったバーボンの瓶を。

 口に突っ込んだんだ。

 そしたら、気持ち悪くなって、便器に慰めて貰ったんだよな。


 ふと気がつく。あいつが来たときに、そういえば使った。

 愛しかった便器が、途端に汚く思えてきた。


 家中を除菌する。

 本当なら、すべてを買い換え。すべてを焼却し殺菌したい所だ。

 途中で、自身もまた消毒のため別のバーボンを咥える。

 うがいをして飲み込み。一気にむせる。


 だが知っているか。バーボンの二日酔いは結構きついんだ。

 吐く息まで、バーボンが匂う。


 スマホには、お気楽なメッセージが届いている。

 既読スルー状態。

〈今日は疲れたよ。お休み。ちゅ〉

〈おはよう。昨日は忙しかったけどぉ。今日は会えるよぉ。授業終わったらご飯でも行くぅ?〉

〈まだ寝てる? 体調悪いのかな? それとも忙しい?〉

〈帰りまーす。気がついたら連絡ちょうだーい〉

〈お休みなさーい。明日は、ちょっと実家へ、顔出さないといけないから。明後日ね〉


 俺はそれを眺めながら、すっかり除菌され、綺麗になった便器と仲直りして、仲良く酒を酌み交わしていた。

 スマホが手元にあるのは、うっかり便器に落とそうか、悩んでいるからだ。

 リセットするなど、思いも寄らない。


 すると、チャイムが鳴る。

「ああ? 俺は留守だ」

 さっき酒を買いに行ったときに、買ってきた。たばこに火をつける。

「猛毒って言うのに、なにも起こらないじゃないか」

 最初ちょっとむせたが、すぐ慣れた。

 紫煙を吐く。


 それをつまみに、バーボンをあおる。


 それを眺める。双眸。

「ちょ。大地さん。何してるの?」

「あ゛あ゛っ? だれだ?」

「誰だって。大丈夫? 私が分からないの?」

「あー佳代だったか。あーそうそう。あいつと仲良しの佳代ちゃんだぁ。おもしれぇ。どうやって入ったんだ。飲むか? ずっと。かわいい便器ちゃんと。飲んでいたんだ。ずっと愚痴を聞いて貰ってさあ。ははっそうだよ。ずっとだ」



 大学に行くと、大地が昨日も今日も顔を出していないと、薫が心配をしていた。

 電話には出ないし、既読は付いてもずっと返事はない。

「家が近いし、今日は用事があるから、ちょっと見てきてくれない? 大地って一人暮らしだから心配なのよ」


 そんなことを、友人の薫に言われて。見に来た。

 大地さんは幾度か会った事も。食事に行ったこともある。

 誠実そうな、爽やか青年? 薫がいなければ、声を掛けたい人は沢山居るだろう。身長は180cm位あって、ちょっとがっしりだけど、武道をしているため、トレーニングをしていると聞いた。こそっと、筋肉かっこいいわよと薫から聞いた。


 でも。今。

 目の前に居る。こいつは誰?




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 これ、upして、大丈夫かな。

 フィクションですから。

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