第3話 意見の相違? 何言ってんだこいつ?

 お母さんに叱られて、ひろちゃんのお家に置いていかれた。

 おまえはおバカだと、恥をかかせないでと叱られた。


 でも、でも。ご飯が美味しい。

 思わず、おかわりをする。


 お風呂に入って、あわあわなお風呂おもしろい。

 ボデーソープを、ジャグジーに放り込む。木村のお父さんが必死の思いで買ったお風呂。ボディーソープの一撃で、フィルターがダメージを食らう。だがそんなこと慶子は知らない。


 お風呂から出て、ジュースを一杯。

 そして、アイスも。

 しあわせ。ここのお家の子でも、良いかもしれない。


 

 翌朝。目が覚めると、部屋には誰もいない。

 でもヤバイ。あわててトイレに走って行く。


 トイレから出て、下に降りようと思ったら。声が聞こえる。


 「さすがに、それはないだろう。今は先生に言われて、頭に血が上っているだけだろ。奥さんあれだから」

 

「そうねえ。奥さんあれだから。今のうちに、普通の子になれるよう。慶子ちゃんを教育するのも正解かもね。まともになれば、かわいい子だし」

「だが、母親があれだぜ」

「そうねえ。黙って何もしなければ。美人なのに」

 階段の途中で、つい聞いていると、ひろちゃんが出てきた。


 私を見て、なんだか気まずそうな顔をする。

 どうしたんだろう。

「起きたのか?」

「うん。ねえ。さっきの話」

「ああ。上に行こう」


 また部屋に戻る。

「ねえ。お勉強が出来ないと駄目なの? さっき、木村パパとかが言ってたけれど。教育して、普通の子にしないとって」

「ああ。そうだな。勉強は大事だな。でもほかに、あんまりおバカだと、人にだまされたりすることがある。そういうものも。大事なお勉強だと、お父さん達は言っていた」


「じゃあ一杯お勉強したから、ひろちゃんは、かわいげが無いの? 違うの? お母さんは言っていたけど」

 それを聞いて、僕は固まる。

「えーと。パパさんも、同じこと言っていたのかな?」

「お父さんは、ひろ君はしっかりした子で、利発だって言ってる」

 お互い、相手の親のことはパパ。ママ呼びをしている。


「じゃあ良いんだよ。特に慶子はかわいいから、気をつけられるように訓練しないとね。この夏休み。その辺りもお勉強しよう。基本は人との接し方。教材は『青い罠』辺りかな『注文の多い料理店』も気を付けるには良いのか」

 僕はぶつぶつと、本棚に並ぶ本を眺める。


 すると下から。

「ご飯よ」

 と、声が聞こえる。


「ご飯だって。降りよう」

「うん。木村ママのご飯。美味しいから好き。家のお父さんも、ごはん美味しいけど。たまに、こだわって、男の料理とか言って作るから。材料費がかさむんだって、お母さんが言ってた」

「あれ。パパさんが作っていたの? 上手だね。前に食べたチキングリル小悪魔風って言うのもそうなの?」

「何とか風って言うのは、イタリア料理だったかな?」


「おっと危ない」

 話しながら、降りていたので。慶子が階段を踏み外しそうになり、とっさに支える。

「ふわぁーびっくりした。気を付けてよ」

「何だよそりゃ。転けそうななったのは、おまえだろ」

「えっ。あっうん」


「助けたのは、俺なんだから、ありがとうだろ」

「えっ。あれ?そうなの? でも、お母さんは、とりあえず。近くに人がいたら、その人を叱れって。あれっ?」

「それはおかしい。直せ」

「ううー。分かった」


 気を付けながら、階段を降りる。


 わいわいと話をしながら、方針を決める。

 全教科1年生から、自分の勉強総復習もかねて教えることと、平行して夏休みの宿題も始めること。


 午前中は復習。昼から宿題。元気があれば、夕方から別教科の復習となった。

 お父さんが、あきれていたけど。

「お受験でもするのか?」

 お母さんに言っていた。


「あら。良いわね。今は私立でも授業料は無料よね」

「それ以外が、高いらしいよ。何とか負担金とか協力金とか」

「そうなのね」


「お受験て?」

「えーとね。中高一貫とか、大学まで一緒になっている学校があるのよ。そこだと上に上がるとき。優遇されるの。楽でしょ」

「じゃあ。中学で入れば、高校受験とかで、苦労しなくて良いのか」

「そうね。でも大変みたいよ。入学するのが」

「そうなんだ」


「そこって、どうやって入るの?」

 慶子が聴いてくる。

 お母さんが、少し笑いながら答える。

「すっごく。一生懸命。お勉強をすれば入れるわね」

「一生懸命。お勉強。そうなんだ。お母さんが勉強なんか、しなくて良いって、言ったけど。色々なことをするのに、勉強しないと駄目じゃない。嘘つきだね」

 そう言って、少ししょぼくれる。


「この夏休み。一生懸命勉強するんだろ」

 そう言って、頭をなでる。

「うんそうね。頑張る」


 そう。食事のときは言っていました。

 科目、1年生算数。


「そうそう。このおはじきとか、コイン。懐かしい」

 目下、算数セットで遊んでいる。

「おーい。お勉強」

「あーうん。もうちょっと」

 そして禁断の、おままごとセットを見つけ目が光る。

 凄く怪しく。

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