第2話 楓の異変

「ほい。これでも食ってろ」

「おにぎり?」

「そう。いつもの。塩と海苔だけ」

「このバランスが良いよね」

 そう言いながら、もうかぶりついている。


「それで何を食うんだ?」

「ほへ?」

「昼飯」

「ざるうどんか、冷や麦?」

「そんなもの、茹でて水でしめるだけじゃないか。自分でできるだろ」

「うー作ってもらうのが良いのよ。わかんないかなぁ」

「甘えんぼか」


 安全策で3束ほど茹でる。

 2束だと残らない可能性がある。


 ただまあ、うどんだけというのもな。

 卵があるから、拝借して、だし巻きの巻いてない奴を作る。

 

 ネギの小口に切ったものが、冷凍にああ、あるな。

 鶏肉を少し小さく1.5~2cm角で切って、炒める。

 柄スープと豆板醤に砂糖に醤油。酒。ショウガを入れて、ちょっと振り、水溶きの片栗を掛け回す。最後にネギを散らす。


 レタスをちぎり、洗ってさらに食べやすい程度に小さくちぎる。

 大きいと食べないからな。

 夏だし、レモン果汁とオリーブオイル、塩こしょうで、軽く和える。


 皿に盛り、テーブルに向くと、ざるうどんは残っているが、その他は全滅だった。

 分かっていたが、容赦ないな。


「レタス。これも食えよ」

「えー」

「文句を言うな。さっきの鶏肉も捻挫には良いんだ。ビタミンKや良質のタンパク質がとれる。レタスもビタミンCやビタミンE、免疫力アップにつながるβカロテン。それに、食物繊維もとれる。ビタミンCは日焼けにも多少効果がある」


 そう言うと、もそもそと食べ始める。

「あっすっぱ。おいしい」

 気に入ったのか、普通にしゃぐしゃぐ食べ始めた。


 僕は、うどんをすすり始める。

 あっ、さっきのショウガを入れよう。

 そう思って、器を持ちショウガを少し入れて混ぜる。


 うんうんこれだ。

 食べ終わって、洗い物と片付けをする。

 ふと見ると、すでに楓はソファーで転がっている。


 横に座り頭をなでる。

 短めの髪だが、さらさらとして気持ちが良い。


「ねえ」

「うわっ起きていたのか?」


「うん。それでね。わたしテニスの推薦受けようかと思って」

「そうか」

「うん。昨日も中途半端だったし。燃え尽きれなくて」

「そうか。高専に行くよりは堅実だな」

「ひどっ。そんなに私、馬鹿じゃないし」

「ああ、勉強が嫌いなだけだもんな」

「あっ。うん。否定しない」


「ねえ。お風呂へ入るの手伝って」

「えっ。なんで」

「足がつけられなくて、昨日は軽くシャワーを浴びて寝たんだけど、試合もあったし気持ち悪くて」

「じゃあまあ、準備はするよ」

 ほっとくと、無茶しそうだし諦めた。


 浴槽を洗えば、この家、給湯は自動だ。

 洗って流した後、浴槽の栓を確認する。

 給湯ボタンをピッと押す。


 ゴボゴボと言いながら、お湯が入り始めた。

 この分ならすぐたまりそうだ。



 で、戻ってくれば寝ているし。

 勝手に楓の部屋に入りタオルケットを取ってくる。

 楓の部屋はすごく男らしい。

 雑貨というものがほとんど無い。


 テニス用品と雑誌そして漫画。

 机の上には、教科書の姿が気配もない。

 ため息をつきながら、部屋を後にする。


 とりあえずかぶせるが、暴れてタオルケットを飛ばすから、体の下に巻き込んで腹回りを中心に巻き付ける。


 1時間くらいだろう。楓が目を覚まし目ぼけ眼で周囲を確認する。

「あっ樹だ。なんで?」

「何でじゃ無い。人を電話一本で呼びつけ、ご飯を食べたら風呂へ入ると言って、人が準備している間に寝たんだろ」

 そう言うと、額に手を当て考え始める。


「大丈夫なのか?」

「うん。大丈夫。おなかは減っていないから。汗をかいたしお風呂へ入る。手伝って」

 肩を貸して、風呂場へ移動する。足首までビニール袋をかぶせてテープで巻く。

「こっち側の足はお湯につけるなよ。後で拭こう」

 そう言って、服を脱ぎ出す前に出て行こうとするが、襟首を引っ張られる。


「何言っているの、手伝うんでしょ一緒に入ろう」

 そう言って、服を脱がされる。

 まあ今更だし、抵抗はしない。


 捻挫した方は、膝から上だけ洗って、ぬるめのお湯で流す。

 楓は上機嫌で体を洗い、その後僕の体を上機嫌で洗い始める。

 その間僕は、楓の足を持つ係。

「はい。今度は反対側」

 持ち手を変えて、楓の右側から左側へ移動する。


「おっきくなっているね」

「そりゃなるさ」

「ふふっ。うれしい。樹が私を必要としてくれている」

「何だよそれ?」

「んん。そうね。付き合い始めたのも私がお願いして、賭けに勝ったからだし。エッチしたときもそう。いつも、望んでいるのは私。でもいま、私の体をみて欲情してくれると少しは樹にとって必要なのかなとか思って。うれしいの。見ても良いし触っても良いよ。今ちょっと激しいのはだめだけど」

 そう言って笑う楓。


「楓? 本当に大丈夫なのか?」

「うん? 何が。何かおかしい?」

 そう言って鼻歌交じりに、僕の半身を洗う。


 それからまあ、エッチはしたが。


 服を着てから、ビニールで覆っていた所を、かたく絞ったタオルで拭う。


 玄関を出て、戸締まりをする様に言って玄関を出る。

 ガチャッという音が聞こえたので、安心して家へ帰る。

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