3話

「ただいま」


返事はない。うちは母も父も海外に行っているために、家には俺しかいない。

ちなみに、うちの母は世界的なピアニスト、父はそのマネージャーをしている。


ただ、母は俺に音楽を強要してこなかったため、中学の吹奏楽が初めて音楽にかかわった。そこから二年間で俺は世界的に評価されるようなクラリネット奏者になった。


家に帰ったら、まずキッチンに行く。さっと手を流してから米を炊く、 当然一人暮らしに優しい無洗米だ。炊飯器のボタンを押してから、上に息服を着替えまたキッチンに戻ってくる。


本来なら三人で済むような家に一人で住んでいるために、自然とスペースが余っている。


冷蔵庫から卵を二つ取りボウルに割る。少しのしょうゆと牛乳、砂糖を入れ混ぜ合わせる。油をさっと回したフライパンに卵液を流し込み、形を整える。コツは初めは大きく動かし、卵液が固まってきたら、あまり触らず手首をトントンとして形を整えることだ。個人的にはバターやチーズは重くなるため使わないほうがいいと思っている。

そうして出来上がったのはオムライスだ、まだ母の味には遠く及ばないが一人で食べる分には十分おいしい。


特にすることもなく、YouTubeを見ながらご飯を食べる。


ふと携帯が震え始める。画面には姫百合千沙の名前。


「もしもし、こんな夜にどうしたんだよ。」


「なんだっていいでしょ、私と白来との関係なんだから。」


「はいはい、で、用件は。」


「明日、吹部の体験会に行くから放課後予定空けといてね。どうせ白は暇でしょ、これは決定事項だから、もちろん拒否権はないのですよ白君。そして夜は白の家でご飯食べるわ。」


「飯のほうは了解だけど部活のほうはいやだよ、俺はもう楽器やらないって決めてるんだ。それにもう俺が音出せないの知ってるだろ。」


「知ってるよ、でも誘ってるの。なんだかんだ白、私が頼んだ時断らないじゃん。」


「入部はしないからな、あくまでお前の付き添いだ。」


「それでよいのだじょ、白君よ、ばーい」


「だじょてなんだよ、それに日本人なのか外国人かどっちなんだよ、おやすみ。」


騒がしい電話だったな、それでも一人暮らしの人にはそんくらい騒がしいほうがちょうどいい。


千沙は俺が一人暮らしなことに気を使ってなのか週に1.2回は家に来て一緒に夕飯を食べていく。中三の時はそのあと勉強を見てもらっていた。その恩もあって俺は千沙の頼みを基本的には断らない。


千沙もそれを知ってるのかたまにいいように利用されたりもする。


例えば一緒にカップル限定のパンケーキを食べにいたっり。一緒に近くの繁華街のクリスマスツリーを見に行ったりだ。


はぁ、明日は忙しくなりそうだ。

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