第69話 S県T宮
建物を破壊しては
いや、それだけならまだしも
巻き添えで死傷者が出てはいけない。
俺は残された力を使って
冒険者ゼータに変化し
なんとか広めの公園に着地
というか墜落した。
土を舞い上げ派手な音と共に
俺は10m程、地面に潜った。
振り続けた雨のお陰で
土煙は出なかったので
近所の洗濯物への被害は出ないだろう
良かった。
東の大火、西の地震
そして暴風雨が治まったと思えば
天が聞いたことも無いレベルの
大音響で鳴り響いた。
ベレン市民の漠然とした不安が充満している。
お陰で
心地よい恐怖・不安がゆっくりと
俺に注がれてい来る。
これなら直じきに動ける様に回復出来る。
バリエアで得た大量のエネルギーは
時間停止でほとんど使ってしまった。
後は動かなくても良い状態でなければ
怖くて使用できない。
と言うかそこまで行くのに
それだけ温存出来るものか
それだけ温存出来る余裕の
相手にこんな大技が必要になるのか
およそ実戦的では無いな。
風対策の今回限りだろう。
次は水でこれは準備時間が必要だ。
火を相手にするのは最後の最後でないとならない。
今、どちらか
あるいは両方に来られると非常にまずい。
早く安全な場所に身を隠さねばな。
丁度、地面に潜ったし
早速、金属粒子の補給に入るか。
センサー系は最優先だ。
俺は補給された力を補給速度を上回らない
程度使用し金属粒子の補給を開始した。
先も言った通り、今は
戦闘は避けなければならない。
近づいて来る人物をキャッチした。
サイズは・・・児童だな。
ん
微妙にヴィータみたいな黄金のオーラ
本当に微妙だが、問題は黄金で有る事だ。
人から発する劣化した銀色で無い
神・天使が直に出すやつだ。
にしては微弱過ぎる。
最下級の天使でも、
もうちょっと頑張ってるぞ。
逃げるか迎え撃つか
迷ってる間にそいつは到着してしまった。
俺の形で空いた穴を覗き込んで来た。
相手は見覚えの無い子供だ。
俺は無視して補給続行を続けると
子供は話しかけてきた。
「アモンなのか?!なんじゃその姿は」
俺の変化を見抜いた。
後その「のじゃ」口調
まさか
「お前こそ何だその姿は」
「借り物じゃ、本体は動けん」
「人が集まってきたら厄介だ。移動するぞ」
俺は補給もそこそこに穴から飛び出すと
周囲に人が居ない事を確認してから
子供を抱え、手近な大樹の上の方まで
跳躍して、枝に並んで腰かけた。
これなら、こちらが発見する方が速いだろう。
「確認するぞ。ヴィータお前なのか」
頷く子供は聞き返して来る。
「こちらも確認するぞな。アモンお前なんじゃな」
「この姿の時は冒険者ゼータだがな」
俺はカッコイイポーズを取って言った。
ヴィータはお気に召さない様子だ。
「変な名前と顔じゃのう」
「ところで、それ誰の身体なんだ」
ヴィータは説明してくれた。
本体は天使達によって教会で厳重に見張られていて
自由に出歩き出来なくなった。
なんとか外部に脱出するために教会を訪れた
人の中からヴィータと波長の合う人の身体を
強制的に乗っ取ったそうだ。
「なんて事をするんだ。この人さらい
親御さんがどれだけ心配しているか」
「これしか方法は無かったんじゃ話が終われば即開放する」
あれ
乗って来ないな
「なんだ・・・真面目な話か」
「当たり前じゃ、面白半分で、こんな事をするのはヌシぐらいじゃ」
ごめんなさい。
「ごめんなさい。」
「・・・よい」
話が終われば即開放
つまり俺に話があるのだな
まぁあるだろうな。
「で、なんだ話って」
「聖刻を解除する。その後にヌシは逃げよ」
なんだ。
「どっちもお断りだ」
「四大天使がヌシの存在に気が付いた。
必ず襲ってくる。聖刻は危険じゃ
我の管理下を離れた場合、
ヌシがどこに居ようと必ず仕留めてしまう」
「今しがた地と風は片づけた。残りも近日中に始末する。」
目を見開き驚く児童。
「なっ・・・なんじゃと」
「感知できないのか?さっきの
バカでかい音は風を始末した時の音だ」
「本体ならともかく、仮の身体では
あまり出来る事は少ないのじゃ」
身体能力も依存するようだ
えっちらおっちら歩いていたしな
その間に二体始末されたワケだ。
「すまぬ・・・そなたを見誤っておった
一対一でも少し劣ると思うとった。
それが、この短時間で二人も・・・。」
策に依ったがな。
後、ヌシから「そなた」になったぞ。
冬でもないのに
「まぁお陰でスッカラカンだ。今は補給を最優先だ。」
呆気にとられている児童に俺は続けた。
「お前の力が必要だ。なので聖刻はこのままだ。
お前には悪いが四大天使は手痛い敗北で天界に
帰ってもらう。これは刺し違えてでも実行する」
黙り込む児童。
止めても無駄だぞ
これだけは
「こんな事を言えた義理ではないが
頼むアモン。残りの二人も倒してくれ」
ありゃ
「お前にしちゃ好戦的だな」
「信じてくれとは言わぬが我はあんな手段は・・・・」
東西の惨劇の事か
「お前の命令じゃない事くらい知ってるよ」
ハッと顔を上げる児童。
「大方、戦神か全能神あたりだろお前の
保護をそっちのけでチャージ攻撃を
優先させやがって神界に殴り込めるなら
四大天使の後に行ってぶん殴ってやりたいぜ」
そこで児童は泣き出し抱き着いてきた。
俺は落っこちない様に支える為に抱きとめた。
しばらく泣かせてやる。
危ねー
ナイスアドバイスだ。ストレガちゃん
「ぶぅえっぐ私・・はああああ
あぅんなシっナリオかいてな
あああああん!!!」
「分かってる分かってるよしよし」
おいおい借り物の身体だぞ
少しは手加減しろ
脱水症状が心配だ。
何分くらい泣いたんだろう
やっとこヴィータは落ち着いた。
「済まぬ・・・見苦しかったのぉ」
「ああ、みっともないったらありゃしないぜ」
なんか睨でる
俺も真似して睨返す。
「更にこんなお願いをするのは身勝手も承知じゃが」
「民には被害は出さない現に二人始末したけど
出してないだろ」
「・・・もう言う事は無いのぉ」
「俺の方には沢山ある。後で聞いてもらうからな」
俺はキッパリ言っておいた。
「残り二人を始末した後お前のところに行くからな」
雲は完全に晴れ
風も穏やかになった。
まだ戦いが残っているのに
こんな呆けていいのかな
しばらく
枝の上で並んでボーっとしていた。
ヴィータは機嫌が直ったのか鼻歌を歌い出した。
あの「ヒーローの歌だ」
よっぽど気に入ったのか。
「のぉ」
「何だ。」
首を回すのでは無く傾げる感じで
俺の方を向くヴィータ。
「この歌は・・・何の歌なんじゃ」
子供の頃に大好きだったヒーロー物の主題歌です。
前にも説明し損ねたっけな
「こいつか・・・こいつはな・・・。」
不意に完全膝カックン耐性が反応する。
俺は枝の上で身構えるが
この反応は・・・。
重力操作で華麗にジャンプし
一気に俺達の所までそいつはやって来た。
「聖属性?!お兄様離れて」
ストレガだ。
枝に着地と同時に左手の平を突き出す。
射出する気だ。
「待て、違う止めろ」
「お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない」
引き出し多いねストレガちゃん
「また変な者を拾ってきおったな」
「協力者だ。煽んな」
「何ですか。子供のくせに」
「いや、違う。見た目だけで中身はな」
「お兄様?!ロリコンなの?」
「はい、いや違う」
「小便臭い小娘を拾ってくるとはヌシのロリも重症じゃのう」
「困ったよねて、違う」
「わわ私がしょしょしょ」
「ストレガ。ちゃんと言ってみてごらん」
「変態!」
「変態じゃな」
「もっと言ってくれ」
枝が折れて落ちるまでバカ騒ぎが続いた。
説明を聞いたストレガは平謝りだが
ヴィータも珍しく頭を下げた。
「今の我はこやつの力になれん
どうか助けてやってくれ」
「多大な恩があります。命尽きるまで
助力を惜しみません。約束します」
いや命はとっくに尽きてるよね。
まぁこれは野暮か。
そこで突然
児童がフラフラとよたつき始める。
「イカン。憑依の限界時間じゃ
済まぬが、この身体の持ち主の親に」
転ばない様に抱き上げると俺は言った。
「ああ、任せろ」
「後・・・最後に」
「なんだ」
「アモンの顔が見たい」
ああ、冒険者ゼータ顔だったな。
俺は瞬時にアモン人型にチェンジしてやる。
ヴィータは嬉しそう微笑むと言った。
「そっちの顔の方が好き」
「お前だけだ。そんな事言うのは」
そこでこと切れ
児童は寝息を立て始める。
「待ってろよ。ヴィータ」
俺は児童を抱きかかえ
意味も無く空を見上げた。
完全膝カックン耐性が後方から
接近する数名を捉える。
普通の人間だな。
振り返った俺にヤングママっぽい人が
こっちを指さし叫んだ。
「衛兵さん!いました」
こうして
俺の手配書に
人さらいの罪状が追加された。
出展
お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない 有名な都市伝説
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