第68話 決戦 1・2回戦
裁と地のウル
神の裁きの執行者であり
大地を司る天使でもある四大天使が一人。
こいつは俺と最も近い能力だ。
金属も大地に含まれる分野だ。
無理やり四つに仕分けた時に同じカテゴリーに入る。
あの大地震の張本人が目の前を飛んでいる。
獲物を見つけた猟犬の様に俺は飛び出した。
セドリックの部屋を何て言って
飛び出したのか、よく覚えていない。
覚えているのは
ドス黒い感情に支配された喜びと
全身に散らばった魔核がフル稼働した感触だけだ。
空中でデフォルトサイズになると
最大加速でウルに特攻する。
大気操作は無しだ
その分加速に注力した。
向こうもセンサー系で
突撃してくる俺をを感知している
こっちを見ていないが寸前で方向転換して躱す気だ。
奴が12枚の翼で制御してる
宇宙線を可視化することで動きを予測。
方向転換にあわせてホーミングし
ぶちかます
衝突時に体重を増加上乗せして
破壊力を上げるオマケ付きだ。
「どぉうわっ」
避けられる自身があったのだろう
見事に食らったウルは悲鳴を上げ
ビリヤードの玉の様に急加速して
ベレン圏外まで吹き飛ぶ
ナイスショット
これで人に被害の無い様に戦えそうだ。
それにしてもウルも俺も砕けない
強度は同程度だ。
これは有益な情報だ。
ウルは四大天使のなかではタンクを担当する。
物理防御なら四大天使一番だ。
そいつと俺が同程度なら
他の三人にタックルは有効の可能性が残る。
少なくとも当たり負けする事は無い。
他の奴にもタックルはやってみよう
今のウル同様、こっちを舐め切っている
当てられる可能性は高い。
11枚。
11枚の翼を完全展開し空中で制止するウル。
俺は体当たり時に掴んで引きちぎった奴の
翼一枚を手羽先のごとくむしゃむしゃ食いながら
ゆっくり近づく。
聖属性だ。
あんまり食わない方がいいな
「不味いんだな。火を通せば多少は美味くなるのか」
俺の挑発に顔は冷静だが思いっきり怒りが見える。
お前もパウルに弟子入りしとけ
風になびく銀髪のストレートロング
眼光鋭い切れ長の目
美形ではあるのだが
四大天使の中ではもっとも悪人面だ。
専用武器「大地の盾」を左手に生成
同じく専用武器の片手槌
「ファイナルガベル」を右手に生成
構えるとウルは言った。
「ヒマつぶしの残党狩りのつもり
だったが、これは大物が釣れたようだな」
俺は背中に手を回し創業祭を生成
ダラーンとだらしなくブラ下げる。
「奇遇だな、俺もだ。
お互い今日はラッキーデーだな。」
奴の黄色に光り輝くオーラが痛い程輝く。
本来なら防御・回避を選択する所だが
こいつには弱気は一切見せない
バリエアのみなさーん
使わせてもらいますよー
あなた達から貰った力を
俺もオーラを全開の振りして放出する。
余力を残すのは、相手に油断を期待してだ。
黒いオーラに紫電が走る。
やっと真面目に警戒したウルは構え名乗った。
「四大天使が一人・大地のウル参る」
真面目になった相手でないと挑発も効果が薄い。
ああ
ストレガ見てるか
人をからかう事ばっかり全力
俺のクセはこの時の為の練習なんだよ。
・・・・次からそう言おう。
俺は創業祭をこれ見よがしに突き出し、真顔で吠える。
「その辺の森の妖精・ゼータ行くぜ
刀の錆にしてくれりゃああああ」
全力の振りして
ゆっくり突っ込む俺は創業祭を派手に回す。
奴がその動きに注目した瞬間に創業祭を離し
最大加速で突っ込みウルに抱き着く。
これ使えるなベネット
創業祭に注意が行ったウルは
俺の接近を許してしまう。
必勝パターンだ。
武器での戦いよりも力のゴリ押し。
しかも今回のは
俺がされても対処出来ない
超ゴリ押し
「とっておきだぁ」
地道に作って体内に貯めて置いた
火薬、茶番で使った花火のテストから
最も燃焼力の高かった黒っぽい火薬をストックしてある。
そいつに点火し噴き出し口以外に俺自身が
爆発しないように力を通わせ強度を上げる。
余った力は重力制御で俺も含めて軽量化する。
「ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶっぶっぶうぶぶ」
「がっがっがっががっががが」
元の世界でも、これだけのスピードで
飛び立つロケットは無かっただろう。
お互い血肉じゃないので
Gなんざいくら掛かってもいいよな。
むしろGよりも、大気が裂けきれない
突入時の様に瞬間で俺達は炎に包まれる。
1秒以下で大気圏外まで来れた。
「フン、くだらん宇宙空間だろうが
なんだろうが私にダメージは無いぞ」
強がるウル。
力が同じなら広げようとする力より
抱え込もうとする力の方が強い
ウルは俺を振りほどけない。
自慢の黄金のオーラも
俺の黒いオーラと相殺しあって
互いに決定打になっていない
バカな奴だな。
確かにダメージは無い、しかし
ここに来たのはダメージを期待しての事では無い。
補給を絶つ為だ。
ゲームの設定通りなら
大地を司る天使、地に足を着けている限り
無限に攻撃と再生が可能だ。
美味い具合に単独で飛行してくれていた。
このチャンスを逃すワケにはいかない。
ナイス油断だ。
補給を絶ってから攻撃だ。
さて攻撃だが
勝敗は悪魔同士の対決と同じだ。
核の潰し合い
互いのオーラが決定打にならない
互角状態なら、もうこれしかない。
魔核。
この場合は聖核と言えばいいのだろうか
天使にもある。
上手に隠してありデビルアイでも場所が特定できなかったが
接触したことで、音の伝わり方の差で異質な場所を探し当てた
こいつの聖核は首の後ろだ。
考えたな
胸をいくら切り裂こうと
頭を吹き飛ばそうと
これなら動ける。
更に、ここを狙うには背後からだと翼が邪魔になる位置だ。
ウルも同じように俺の魔核の場所を
探している様だが目が泳いでいる。
かなり焦っている様子だ。
分からないだろうな
つかガード無しで突っ込んでくる時点で
想定しろよ。
ヴィータが黙っていてくれたのか
俺の情報など聞くまでも無いとタカを括っていたのか
何にしろ色々迂闊だったお陰で助かった。
勝った。
最後に聞いて
いや
言っておこう。
「なぁお前、痩せた大地で育つ作物ってなんだか知ってるか」
「何を言っている?」
「お前が破壊の為にチャージしている間
あの駄女神は色々作物の収穫に尽力してくれたよ。」
バロードの痩せた大地を無骨に愚直に
泥だらけになって農夫達は頑張っていた。
頭が悪いかもしれない
知恵を絞るべきだっただろう
でもさ
でもさ
祈りそのものの価値に
頭の善し悪しで差がでるのか
出て良いワケ無いだろ
「人々はみんな嬉しそうだったよ。
お前さぁ大地を司るとか偉そうな事
言ってるくせに何やってんの」
荒れ放題の土地がいっぱいだぞ。
俺は返事を聞く気も無いので
言った後は聖核目掛け
悪魔光線最大出力ピンポイント照射で
ウルの聖核を焼き尽くした。
火に焼かれる紙のようにそれ以外の部分も崩壊していく。
大地の盾は残った。
が聖属性なので俺には使えない。
要らないな。
フリスビーの要領で投げる。
川に向かって平たい石を水平発射して
遊ぶような感じだ。
大地に戻すと碌な事が無さそうなので
このまま大気圏に弾かれどっかいっちゃえ。
角度を調整し大気圏内に突入を開始した。
その最中に脳内アラームが鳴る。
見えてるよ。
俺が相手に対して一番有利な条件で勝負を掛けてたように
相手も同じこと考える奴がいた。
大気の外に出る気は無い。
俺に大地から金属粒子を補給させる気も無い。
俺が地上から最も離れた今が
仕掛けるなら今が一番だ。
才と風のラハ
神の智慧の施行者であり
風を司る天使でもある四大天使が一人
そいつが
12枚の翼を広げ成層圏内側で待ち構えている。
ウルの異常に気が付いて飛び出してきたのか
四大天使同士のネットワークでもあるのか
うまいタイミングだ。
こいつに対しての必勝の策も
大気の無い宇宙空間に連れ出す事だったが警戒された。
もう無理だ。
今から逃げようにも完全に補足されている。
どの方向に逃げようとも、あのエルフの里を滅ぼした
凶悪な矢で撃ち抜かれるだろう。
やるしかない。
こいつに対しての大気圏内での有効手段。
残りの魔力で出来るだろうか。
俺を覆う炎が消えていく
もうすぐ奴のテリトリーだ。
俺は胸に手を当て祈る
三秒
いや一秒でいい
頼む、ババァル。
俺に時間停止を成功させてくれ。
『うふふ、仕方ありませんわね』
・・・・・。
幻聴だ。
それでも嬉しいな。
嬉しいなぁ
「ナァーフォーザッワア」
世界を動かす巨大な歯車が止まる。
キン
「ばっ馬鹿な?!時間停止だと」
エルフの里を滅ぼした例の矢は放たれた瞬間で停止している。
プークスクス
これでお前は下級天使程度だ。
四大元素
火・風・水・土
この中で唯一風だけが時間の経過を必須とする力だ。
時間が停止していても
火は火だし、水は水、土は土である事に
変わりは無く存在が許される。
しかし風はダメだ。
風で無くなってしまう。
停止している空気は風では無い。
停止空間に風は存在出来ない。
存在の力が無くなるのだ。
この世界に於おいては存在の力こそ最重要だ。
この世界産でない天使や悪魔は
仮の身体に宿らなければ数分と持たない。
この世界産の人であっても秘術を行使すれば
一瞬で失ってしまう。
何かを成す為の根源的な力だ。
それが今、ラハには無効だ。
「魔王だとでも言うのか?!」
驚きまくっているラハ
羨ましい、こっちにはそんな余裕ないぜ
急げ俺。
俺は残りの金属粒子を噴射する
悪魔及び天使の体内には時間停止は無効なので
噴射した金属粒子の反作用での移動だ。
止まった矢を躱してラハに肉薄する。
余程慌てたのかラハは回避行動を
翼の重力操作に頼った。
バカ
だから重力も今無効だろ。
「いいえ森の妖精です」
顔面と顔面が数センチまで来たところで停止限界が訪れた。
ラハの放った最大出力の矢の音と
俺の体当たりではじけ飛ぶラハの肉体の爆発音
それらが重なって大地を揺るがすスーパーソニックになった。
弓矢がメインウェポンのラハは後衛か
タックル効いたわ
後で聞いたが
ベレンのガラスというガラスが
この音のせいで割れまくったそうだ。
ラハの肉体が潰れ弾ける中に
キラリと光る聖核が紛れているのを捉え
悪魔光線で破壊した。
背中から落下しながら
木っ端みじんに砕け散るラハを見て
俺は捨て台詞を言う。
ここはこう言うべきだろう。
「ヘっ!きたねぇ花火だ」
俺はドスの利いた、ちょっと甲高い声で
そう言いながら自由落下に移った。
出展
ヘっ!きたねぇ花火だ サイヤ人の王ーっ子の名セリフ
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