第63話 水と地の天使
だめ元だ。
言うだけ言ってみよう。
「一本だけある。」
「?」
俺の言葉に首を傾げるエルフ達。
行ってみた方が早い。
俺はデフォルトサイズになって
生き残りのエルフ達を飛んで運ぶ。
ついてくる精霊を振り切らないように
気を使いながら慎重に移動した。
「たけし!一体何が起きてるの」
プリプラの木の元で
東の空を呆然と見上げていたカルエルは
俺を見つけるなりそう言ってきた。
「後で説明する・・・プラプリどうだ?」
木の元までエルフを運ぶと
俺はそう聞いた。
その間にも精霊達はプリプラの木に
次々と飛びついていく。
「・・・信じられないハハ、プリプラ、君なのかい」
嬉し涙を流し木に手を添えるプラプリ。
プラプリに手を添えられた
プリプラの木は
大量の精霊にたかられ
クリスマスツリーより派手に光っている。
全滅は免れた
なんとかなるそうだ。
良かった。
俺は起こった出来事
見た事をカルエルとエルフ達に話した。
「僕はここに居た方が良さそうだね
四大天使も上位天使がいるなら
流石に問答無用で攻撃はしてこない
と思う。確証はないけど・・・。」
カルエルはそう言ってくれた。
俺は一も二も無く頼んだ。
「いや、頼むそうしてくれ」
不安に駆られるエルフ達に少しだけ安堵が広がる。
カルエルは日本語で小声で俺に話してきた。
「やっぱりおかしいよ
そんな攻撃は実装してない
これじゃゲームにならないよ」
「事実を事実と受け止め
そこから最善を模索していくでござるよ。」
だよなダーク。
「なんで急にヲタク口調」
クスクスと笑う太郎。
いや
ヲタクじゃあなくてだな
悪魔忍者がな
『だっさーい』
うるさい手前は
黙って精霊と戯れていろ
本当にありがとうな小梅。
「でさ、たけし」
「うん?」
「四大天使、残りの二人は見てないの」
愛と水のブリ
裁と地のウル
東に集結
残りの悪魔
汚れた信仰
オーバーブースト時間が掛かる
西の果て海沿いのバリエア
・・・・・まさか
おいおいおいおいおいおい
仮にも聖都だぞ。
人だって沢山居るんだぞ
「嘘だろ。やめてくれ」
俺は咄嗟にそう叫んだ。
皆
俺の気が違ったとでも思ったのだろう
ドン引きだったが
すぐに
それどころでは無くなった。
地響き
大規模な範囲で大地がうなり始め
すぐに揺れとなって俺達を襲う。
数分だったと思うが
何時間にも感じた
皆、恐怖に凍り付いた。
地鳴りから揺れまでの時間差を
考えると震源地はかなり遠い
にも拘わらず
これだけ揺れた。
震源地の被害は一体どれだけの
規模になるというのだろう。
「見てくる。ここは任せた」
俺は返事を聞かず
飛び立つ
バリエアが見える高さまで一気に上昇する。
その最中に見た。
西の方角からベレンに向かって
二つの光が飛んで行く。
キレイな色の光だ。
水色と黄色の二つの光
それらが飛んできた方角
バリエアがあったハズの場所からだ。
数十メートルにも及ぶ
高さの津波がバリエアを飲み込み
人はもちろん
建物も全てを砕き破壊し
それらを巻き込んだまま
海に戻って行くトコロだった。
立派な王城も
格式高い教会本部も
テントや掘立小屋だらけのスラム街も
皆
平等に
分け隔てなく
本当に平等に
無くなった。
「ゲカイちゃん・・・。」
俺は全速で飛んだ。
「ヨハン・・・チャッキー・・・。」
生きていてくれ
ゲヘナ
ソドム
ゴモラ
ポンペイ
バビロン
悪魔は罰しない
人に罰と称して
手を下してきたのは
いつだって神だったじゃあないか
あいつら
人の命なんて
何とも思っちゃいないんだ。
俺はバカだ。
聖都なら安全だと思っていた。
タカを括っていた。
改造人間ヨハンなら
大丈夫だと思っていた。
俺は魔刻を思い出し
咄嗟に起動する。
勇者の現在の状態が
手に取るように俺に流れ込んでくる。
生きている。
高い心拍、興奮状態。
どこまでバリエアに近づいていたのか
分からないが
とにかく津波の範囲までは
行っていなかったようだ。
「ガバガバ!バリエアに急げ
生存者がいたら保護してやってくれ」
『誰?!・・・神様?』
その逆だ。
つうか殺戮者の元締めが
その神だろうが
そう言いたいのを堪えて用件だけを言った。
「ハンスも連れてけよ
あいつの治癒魔法が頼りだ!!」
救助に神の力が必要とは
なんとも皮肉じゃあないか
皮肉と言えば
人間の俺自身が感じた
四大天使への恐怖が
悪魔への俺へのエネルギー供給になった。
タコが自分の足を食って生き延びる
それを実践した形だ。
そして最も皮肉な事が
今起きている。
魔都は一瞬にして灰になったので
恐怖は無かった。
苦しまなかったのだが
今のバリエアは違った。
地震と津波は一瞬で命を奪わない
苦しみながら
大量の人々が
落ちてきた瓦礫に潰され
溺れ、冷たい海水に体温を奪われ
今
こうしている間にも
どんどんどんどん死んでいく
どんどんどんどん
エネルギーが流れ込んでくる。
死の恐怖
最も純度の高いエネルギー
高度な知性を持つ
高い自制心を待つ洗練された人類の
恐怖が
もう食えないってぐらい
あ
うまかっ です。
後にして思えば
この時、俺は壊れたんだ。
いや
やっと
まともな悪魔になれたんだ。
出展
うまかっ です:PSソフト「バイオハザード」かゆうま
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