第62話 火と風の天使
俺の手の平にはキレイな真珠ようのな球体
ババァルの魔核だけが残った。
形は保っているが、もう機能していない。
ババァルは魔界へ戻ったのだ。
俺は魔界には行けない。
永遠の別れだ
死と表現してもいいよな。
無限に活動可能な気にさせてくれる
外部電源を失った俺は
自分の体内の残されたエネルギーだけで
今活動している。
活動限界のカウントダウンが続いているのが
感覚的に分かった。
心理的プレッシャーは想像以上だ。
不安が俺を襲う。
西に向けて大気が大移動を開始する。
魔都の急激な高温度は急激な大気の膨張を引き起こした。
ここいらも暴風圏になる。
俺はババァルの魔核を体内にしまう。
そこで脳内アラームが再び鳴り響く
俺は咄嗟に気配を殺し
意味があるのか分からないが
対象との間に障害物を挟む様に
大き目の木に身を潜めデビルアイで確認した。
真っ赤に燃える炎は
巨大な風のドーム内に
収まっている。
大陸の半分を覆う巨大な
圧力なべのような状態だ。
ドーム内の温度は何千度になるのか
調べる気も起きない
あらゆるモノは灰になるだろう。
その赤く輝くドームから
更に明るく輝く赤い光と
緑色の光が飛行して
こちらに向かって来ている。
俺は恐怖を押さえるのに必死だった。
天使対策は万全だった
ただそれはゲームの設定範囲内での話だ。
大陸を吹き飛ばす
これは四大天使
神側最高戦力を誇示する表現だけで
実際の攻撃力は戦闘機や戦車程度のハズだった。
兵器レベル
個体の戦力でそれ以上になると
もうゲームにならない。
大陸を吹き飛ばす
さすがにこそまではいかなかったが
大陸の半分を焼き尽くす
戦略核兵器レベルだ。
そんな攻撃は想定外だ。
それが二体もだ。
見つかって戦闘になれば
俺は確実に負ける。
「全くチャージに時間が掛かり過ぎだよ
今回の駄女神じゃしょうがないけどね」
ミカがそう言った。
褐色の肌にショートの金髪。
青い瞳の大天使。
ゲームの設定通りなら
こいつがミカだ。
まぁ赤く輝いているのだから炎の天使だろう
これで火以外の力使ったらイメージに合わない。
こんなトコロはゲーム設定通りなんだな
「ミカ。仮にも神ですよ。
目の前に居なくとも最低限の敬意は
持って下さいね。」
一方の緑色に輝く天使
こいつがラハだ。
ウェーブの掛かったロン毛
髪の色は青と緑の中間
信号機の青みたいな色だ。
そいつがミカに釘を刺すが
内心同じだ。
ヴィータをバカにしている。
彼等は全く警戒していない
周囲の感知を行っていない
その必要は無いからだ
彼等を傷つける事の出来うる存在は
彼等だけだろう。
俺は自分が致命的な勘違いを
していた事にここで気が付いた。
悪魔側が勝利した未来が
元の俺達の世界。
そう思っていたが
俺の世界に居たか?
あの魔都で
見かけた多種多様な種族は
居たか?
居ない
滅んだ?
いつ?
誰に滅ぼされた?
なぜオーベルは
審判の日を待たず
無理にでも早目に勝負を掛けた。
神側も同じだったんだ。
信仰しない者達を滅ぼせば
全て滅ぼせば
世界は信仰で満たされる事になる。
勝利確定だ。
織田信長系だ
信じぬなら
殺してしまえ
もっとKILLっす
そう言う事だ。
俺達の世界は神側が勝利した未来だったんじゃないか。
「それにしても東西に分かれていた
魔神が東に戻って来てラッキー
だったよね。ほぼ一網打尽じゃん」
ミカはご機嫌にそう言った。
なんてこった
俺が戻れって言ったばっかりに
返事をしないラハは突然
空中で制止する。
遅れてミカも止まる。
「どうかしたの?」
そう言うミカにラハは答える。
「亜人風情が貴様等の汚れた祈祷など
神に差し出せるモノか。ふざけるな」
そう吐き捨てたラハの手に
弓が出現する。
眼下に向けて弦を引く
矢は光で自動装填だ。
あ
あの位置はエルフの里じゃないか
放たれる矢は一瞬で里に着弾する。
光を伴わない爆発。
瞬間的巨大暴風によって
全ての長の木は砕かれ
建物とエルフ
全ての破片は空中に舞う。
「・・・やり過ぎじゃない」
「ミカが怠慢なのです」
そう言いながら二人の天使は
ベレンの方角に飛んで行った。
去ったのを確認すると
俺は戻って来ないのを祈りながら
そーっと里まで低空飛行で移動する。
里は無くなっていた。
戻る木を無くした精霊が
大量に彷徨っている。
どうする事も出来ない
俺は呆然と立ち尽くすだけだった。
しかし
デビルアイが動く者達を補足する。
プラプリを始めとする精鋭戦士が数名生き残っていた。
俺は彼等の救助・治療を行った。
ハンスにやった改変だ。
邪道だが今はそんな事を言っている時では無い。
「ああアモン。ありがとう」
そう言われたが
喜べない
この悲劇も
これも俺のせいじゃないのか
生存者の救護は一通り終わった。
しかし
緊急事態が去ったトコロで
今度は冷酷な現実が彼等を襲う。
樹木化した長の木が
全て折れてしまった。
生存者の中に長は居なかった。
「もう、僕たちの部族はお終いだ」
力無く項垂れるプラプリ達。
俺は長の話を思い出し
他にもエルフの集落があると言ったが
いわゆる血縁でない木には宿れないそうだ。
「・・・どうなるんだ」
俺はそう言ったが
そんな事を具体的に知っている者が
居るハズもない
滅んだ事のある経験者なんて
言葉上だけの存在だ。
「そうだね・・・保持している力が
尽きれば霧のように消えるんじゃないかな」
長の木があった場所の辺りを
大量の精霊がフワフワと漂っている。
それを見つめながら
真面目なプラプリは自分の推論を言った。
俺は何て事を聞いてしまったんだ。
自分が情けなく恥ずかしい。
俺があの時飛び出せば
恐怖を払って
飛び出していれば
間に合ったかもしれない
いや、間に合っても
俺は敗北し
その後で同じ事だったろうな
間に合う・・・?
最近聞いたフレーズだ。
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