第60話 STREGA hanger out

太郎達の元を飛び立ちベレンへ向かう

俺は完全膝カックン耐性に見慣れない

反応がある事に気づいた。


始めは下級悪魔かと思ったが,どうも違う

なにかしら邪な感じだが正体が不明だ。


 興味本位と安全確認の為・・・

いいえ興味本位だけです。はい

行ってみよう。


反応はベレンとは方向が北にズレているが

俺の飛行速度なら大した時間の差は無い

どうせ今戻っても夜中で出来る事は夜なべだけだ。


その反応は森の中だ。

なんかエルフのいる森と違い

魔女でも出てきそうな雰囲気の森だ。


木々の枝葉に邪魔されてデビルアイ望遠モードで

対象を視認出来ない。

迂闊でも、もういいか

脳内アラーム鳴らないし

俺は170cm級の悪魔になって一気に対象の前に着地する。


「こんばんはー森の妖精です」


「きゃあああああ悪魔ぁあ」


ほう

この外見が悪魔だと知っているのか

と、ふとみれば対象は

なんと骸骨だった。


スケルトンお茶ーだ


俺は超嬉しくなった。

ここに来てやっとファンタジーっぽいのが出てきた。

思えば

この世界にはゲーム設定では居たはずのキャラが

出てきていない。

つうか多分存在していない。

ドラゴンもオークもゴブリンも居ない。

エルフは居たが性の対象外という

存在意義の無さだった。


「おぉスケルトンじゃあないか」


身長は150cm位でちょっと小さい

武装はおろか服も着ていない


「えっ・・・私が何だか知ってるんですか」


いわゆる萌え声でスケルトンは喋った。

脳内に響くのでは無く音声として喋った。


「なんだ女みたいな声出しやがって」


「おおおおお女ですっ」


おぉやった

普通のラノベなら2ページ目位に登場する

全裸女子だ。

24万字を超えてやっと出てきた。

遅ぇー

しかも全裸過ぎるー剥き過ぎだろコレー


「女ねぇ・・・・」


じっくりと観察する俺。

言われてみれば

確かに少し骨盤が大きい


「いやぁ見ないで」


カツンカツンと乾いた音を立てながら

有りもしない大事な部分を

骨の手で庇うスケルトン。


デビルアイで解析が終了。

発声方法は謎のままだった。


俺は地中の炭素を繊維状に加工して

真っ黒なローブを作るとスケルトンに放ってやる。


「じゃ、コレでも着ていろ」


ローブを受け取ったスケルトンは

上にしたりひっくり返したりして

構造を把握すると袖を通しフードも被った。


「あ・・・ありがとうございます」


どうみても死神が萌え声でお礼を言った。

たまらなくなった俺は

続けざまに地中から鉄を集めてデスサイズを作成した。


「ホレ、これもやる」


受け取ったスケルトンはそのまま仰向けに倒れる。


「きゃー重いぃぃ」


非力なんだな・・・。

解析結果から動力は魔力だ。

魔王由来では無いが魔王降臨による影響で

地域の魔素濃度上昇による副作用だ。

それが無ければただのガイコツで

意識も無かったろうに

俺はデスサイズを除けて起こしてやる。


「どの位の重さなら持てるんだ」


「どの位って言われても・・・」


スケルトンはそこいら辺の岩を

次次と持ちあげようとしては諦め

最後に漬物石の小さい奴ぐらいの石を持って来た。


「持ち歩くとなるとこの位かなぁ」


1kg程度だ。

うーん、金属ではキビしいか


俺は再び炭素を集めデスサイズ作成した。

刃の部分にはメッキ状に金属膜で

それっぽくした。

重量が足りなく本来の使い方は

出来そうも無い完全なコスプレ用小道具だ。


「こ・・こんな武器、私扱えません」


「うん、どうせソレ見た目だけで

全く切れないからOKOK」


表情が全く無いハズなのに

何か言いたそうな顔だ。


「で、名前とかあるの」


「・・・ストレガです。」


「あ、先に言うべきだ。ゴメン

俺はゼータ・アモン。悪魔だ。」


「いえいえ・・・あの私、

死んでいるんですよね。」


どうも生前の記憶が少しは有ったらしいが

日に日に薄れ、今では性別と名前くらいしか

覚えていないそうだ。


この姿で目覚めてから、およそ二週間程

この事も魔王降臨との影響を裏付けた。


俺は自分の推論をストレガに話してやる。


「アンデッドの魔物!・・・そうですか・・・

あの私これからどうしたら良いのでしょう」


「まぁ取り合えずダイエットは必要なさそうだな」


「ていうか、何にも食べて無いんですけど」


「歯以外の食事器官が一切無いしな」


アンデッド(死に損ない)なので食事も睡眠も必要無い。


「冗談はともかく、これから私どうしたいいのか」


困っている様子だ。

こういうアンデッドって何も考えず

ただ生ある者を憎み襲い掛かるモノじゃないのか


聞いて見たトコロ

全く闘争心は無いそうだ。


もしかして上位アンデッドなのか

一部のアンデッドは人より高い知性を持っている。


これも聞いて見たトコロ

全く魔法は使えないそうだ。

字は読めるが書けない

これは生前の学習によるモノらしい。


うーん、使い道が無い。

ヴィータやヨハンあたりなら

会っただけで成仏させそうだ。

たぶん俺より聖属性に弱いだろう。


飽きたので去ろう。

取り合えずの注意点をストレガに教えて置いた。

日光には当たらない事

人を避ける事

東の魔都を目指してアンデッドの仲間を探す事。


鎌は困ると言うので返してもらい

替わりに雷属性のスティックをあげた。

夜なべで作った内の一つだが

これが威力の低く戦闘では頼りにならない。

そのかわり必要魔力はその分低いので

ストレガが保有している魔力でも使用が可能だ。

身を守るための脅し程度には使えるだろう。


俺は使い方を教えた。

対象を定めて振るだけ

これでスティックの先端から

弱雷撃(冬場の静電気の強いやつ)が飛ぶ。


「ようし、俺にやってみろ」


「え、危ないんじゃ・・・。」


「大丈夫、俺には効かない」


「はいじゃあ・・・・死ねぇ」


バチッ


雷撃は見事に俺に命中した

掛け声に若干イラッときたが

まぁいい


俺は使い過ぎると動けなくなる事を注意し

原理を書いた紙も渡しておいた

後は勝手に精進してくれ


「じゃあな。ストレガ」


「さようなら。ゼータ、色々ありがとう」


ストレガはプレイヤーでも

そのコピーでも無さそうだ

それなのに自分の現状にパニックに

なっている様子は見受けられない。


人間、思っているより

結構たくましいのかもしれない。

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