第52話 子供好きとロリコンの境界線を誰か教えてくれ
さて、勇者捜索隊を捜索だが、
何日後にどこかで落ち合うとかしておけば良かった。
と、今更ながら後悔した。
携帯電話から始まった習慣で
今の人は待ち合わせが適当だ。
「・・・一回ベレンに戻るか」
闇雲に飛んでも見つけられそうも無い。
日も落ちている。
報告を含め一度ベレンに戻る事にした。
領主と大司教、後、預けっぱなしの
俺の荷物も気になる。
ベレン付近の森で低空飛行し
森の中で半人化して、そこからは徒歩だ。
まだ明るいので目撃される恐れが多い
光学迷彩みたいに不可視化したいものだ
今度試してみよう。
ベレンに入る為、いつもの検閲だが
なんか行列が凄い。
並んで待つ気にならない。
そっと空から侵入したほうが早いんじゃないか
ふと行列に指示を出している衛兵を
見ると見覚えのある顔だ。
酔っぱらいAだ。
向こうも俺に気が付いた様だ。
「おう、元気そうだな」
俺は気軽に声を掛けたのだが
相手の反応は予想外だった。
「ここ、これはアモン様」
酔っぱらいAはなんか敬礼っぽい仕草で畏まる。
「どうした?変だぞ」
そう話しかける俺に酔っぱらいAは
周囲をキョキョロしながら小声で教えてくれた。
「マズいですよ。今や最重要人物なんですから
雑な口を利いてる所を上司にでも見られたら
処罰されちまいますって」
根回しは上手くいっているようだ。
俺もハンス君みたいに低音効かせて話した方が
いいのだろうか。
酔っぱらいAに先導されて
衛兵用の別門から中に入れてもらった。
ズルだが、助かる。
途中、すれ違う同僚も皆
例の敬礼っぽい動作をする。
俺も同様に返した方がいいのか
酔っぱらいAに聞いたのだが
軽く頷くだけにしてくれと言われた。
下の者が上に対して行う動作らしい。
中に入ると衛兵用の馬車だ。
自由に歩きたいと言ったのだが
頼むからコレで移動してくれと
言われ、仕方なく乗る。
荷物が預けっぱなしのホテルに向かってもらう。
ホテルに入り、フロントで部屋番号を申し出ると
既にチェックアウト済みだった。
まぁそらそうだ。
何日経ってるんだ
結局、俺はベットで寝てないぞ。
畜生め
荷物の行方を聞いて見るとバルタん爺さんが
まとめて持って行ったとの事だ。
教会にあるのだろうか、
馬車に戻り教会に向かってもらう。
教会は屋根の修復が始まっていた。
足場が組まれている。
なんか、ごめんね。
馬車はここで帰ってもらった。
俺は教会の入り口に手を掛けようとしたが
中からいきなり開いて、頭をぶつけそうになった。
完全人化なので完全膝カックン耐性が使用出来ない。
不便だ。
「おぉ、これは失礼いたしました。」
「いえいえ、こちらこそって、あ」
出てきたのはバルタん爺さんだ。
その後ろにはなんか偉そうな服を着た中年が居た。
・・・・ババァル処刑未遂の時に
ステージには居なかった男だ。
「これはアモン様。」
「どーも、丁度いいや」
俺は荷物の在りかを尋ねると何とも
マズいと言った表情になるバルタん爺さん。
まさか、捨てたとか言わないよね。
気まずくなったバルタん爺さんを
察したのか後ろの中年が発言してきた。
「ん、アレは君の荷物なのかね」
「はぁ・・・えーっとこちらは」
俺に様づけしないという事は
相当偉い人物なのだろうか。
「いずれローベルト・ベレン7世を名乗るお方です。」
バルタん爺さんがそう紹介してくれた。
今はまだ幼名のロディで呼んでくれと
中年は親しげに言ってきた。
なんか、この親しげさがやだ。
「失礼だとは思ったのだがね
危険な物が無いか確認させてもらったよ」
なぜロディが言うんだ
バルタん爺さんが説明するような事のはずだ。
「いえいえ、当然の行為でしょう
で、危険な物何かありましたか」
ロディは目をギラギラさせながら
あの品物軍団はどうやって入手してきたのか聞いて来た。
迂闊だった。
エンチャントインキを始め
この世界では流通していない
魔法具の試作品だらけだ。
俺は背中の創業祭を素早く少しだけ引き抜き
即、戻す。
キン
甲高い金属音が響いた。
「私が女神の周りで何を担当しているのか
ハンスから聞いていますか」
いい訳を考えるのが面倒くさい
脅しで誤魔化そう。
青くなるロディとバルタん爺さん
んー?
完全人化だから悪魔オーラ出てないはずなんだが
「でででえは逆に感謝して欲しい
バルタと私しか中身を知らないい
秘密をほほほ保護したと言ってもいい」
やばい
ビビらせすぎたか
俺は頭を下げ感謝の言葉を告げた。
二人の撫で下ろす吐息が聞こえた。
具体的にどういう根回しをしたのか
ハンスに聞いた方がいいなこれは
「女神抜きでは入手不可能な物ばかりですよ」
俺がそう言うと
がっくり肩を落とすロディ。
「はは・・・やはりそうかね」
恐らく価値の高さは理解しているようだ。
・・・・餌に使ってみるか
「とは言え、ベレンは女神に大きな貢献を
しているのも事実。これに褒美の品があっても
なんら不思議ではありませんね」
再びギラギラした目になるロディ。
おい、後継ぐ前にポーカーフェイス覚えろ
「約束は出来ませんが女神に口添えは
しましょう。どういった物を希望しますか」
「希望など恐れ多い、何でも賜れれば家宝間違い無しだ。」
んー何がいいかバルタん爺さんに後で聞くか。
荷物はこれから教会に持って来ると
いう事になった。
俺は教会の中に入ると以前と様子が
変わっている事に気が付いた。
以前は広いスペースだったが前後に仕切られ
奥の祭壇を遮る様に壁と扉がある。
その前にヴィータの衣装の下位バージョンを
着た若い美人のお姉ーさんが数人
扉を守る様に立っている。
「今日の謁見は終わりです」
「予約は受け付けでお願いいたします」
口々にそう言って
俺を追い出そうとしてきた。
野郎相手ならどんな目で見られても
何とも無い俺だが
女性に拒絶たっぷりな視線されると
とてもツライのだ。
たまらず俺はハンスの名を叫んだ。
俺の叫びを聞いて飛び出してきた
ハンスに例の低音ボイスで一括された
姉ーちゃん達は平謝りになったが
それはそれで申し訳なく
俺は不機嫌になった。
「何なんだ、あの姉ーちゃん達は」
「すいません。まだ慣れていないのですよ」
どうもあの姉ーちゃん達はヴィータの
世話やら手伝いをする侍女的存在らしい
それにしてもハンス君なんで普段は軽い声なんだ。
「衛兵共はVIP待遇してくれたぞ」
「流石、良く訓練されていますね」
「後、俺は何て言って根回しされてるんだ
なんか、みんなビビってるみたいなんだが」
それについてハンスはこう言った。
死を慈悲の隣人とし
灼熱の瞳と鋼を曲げて遊ぶ手を持ち
いかなる空をも駆け抜ける。
女神に悪意を持って近づく者を
同じ力で排除する者
もし彼がその要件であなたの元に
訪れたのなら、遺言だけは聞いてもらえるので
準備しておくように
・・・何の歌詞だよ。
「で、悪意以外は私が受けると」
ハンスはニコやかにそう言った。
「自分だけ日の当たる世界ですか」
そんなやり取りをしながら
奥の祭壇から二階のヴィータの部屋に上がった。
「おい、ヴィータ入るぞ」
そう言って扉を開けるとそこに立っていたのは
なんか、懐かしいヴィータだ。
エルフの里に到着する前ぐらいの
少女状態のヴィータだった。
「お帰りーアモンお兄ちゃん」
くるっと回転して
ロリッロリな声でヴィータはそう言って来た。
「・・・おい、何してんだ」
「ふふふ、カワイイじゃろう」
こいつ聖刻で聞いてやがったな。
今いちコレのON/OFFが俺には分からない。
「ヴィータもぉお兄ちゃんの膝の
上で頭なでなでして欲しいなぁー」
拳を握りしめプルプル震え出す俺。
「ふふふ、どうじゃロリコン魔神
こういうのが良いのじゃろう
思い起こしてみれば確かに
この位の時のが優しかったかのぉ」
膝の上に乗せ両の拳で
こめかみの辺りをグリグリ
が
いつもの俺だが
ここは敢えて挑発に乗ってみよう
俺自身がどこまで耐えられるか
分からんが勝負だヴィータ
俺はヴィータの脇腹に両手を差し込み
優しく抱き上げるとベットの上に座り
膝の上に乗せた。
自分でも鳥肌が立つほどの優しい声を出す。
「ごめんよーヴィータちゃん寂しかったかーい」
うわーキモいわ
「はわわわっわああああ」
ヴィータも、これは予想外だったようでかなり慌てている。
毒を食らわばだ
こうなったら徹底的にやってやる
死ねヴィータ
「お兄ちゃんもヴィータに会えなくて
とーっても寂しかったんだよぅ」
愛でる
優しく頭を撫でる。
・・・小さい頭だな。
「わわわ我が悪かった止めるのじゃー」
いやだね
このまま死ね
てめェは俺を怒らせた
「かわいいよーヴィータちゃんんんペロペロペロ」
ヴィータの頭に頬ずりをしてやる。
俺の限界も近い
「助けるのじゃハンスー」
とうとうヴィータはハンスに助けを求めた。
ふとハンスを見てみるとハンスは
ハンカチで目頭を押さえている。
なんでお前が泣く。
挨拶代わりのドタバタが終わって報告だ。
「なのでカルエルは探せていない
こっち何か情報は入っていないか」
無いそうだ。
これは一回9大司教パウルを先に
押さえて置く提案をした。
「それなんですが・・・・。」
ハンスが何やら困った顔だ。
「そうじゃ、アモンも言ってやってくれ」
聞いて見ると、なんと空位扱いになっている
「武」の座にハンスを据えようと
パウルが動いているらしい。
ハンスは乗り気では無いそうだ。
「ヨハン様はまだ存命中ですし・・・。」
とは言え
悪魔と契約して若くなりましたー
などと報告出来るハズも無い。
そう言う意味合いでヨハンは「死んだ」と
自分から表現したのだ。
俺はそう言ってハンスを説得した。
それに今の立場に明確な役職は無い。
残りの9大司教にしてみれば
神の代弁者として問答無用で
上位にいられるより同じ立場に立てる方が
都合が良いだろう。
「とは言えヨハン様はまだ存命中ですし」
どうもハンスはヨハンに遠慮している様だ。
「もしかして俺に殺してこいって言ってる?」
そう言う俺に向かってハンスは
首と手を物凄い速度で横に振った。
「それにヨハンもハンスが継いで
くれたらって言ってたぞ」
ハンスがあまりに煮え切らないので
もう俺は嘘をつくことにした。
得意では無いが
このぐらいなら事後承諾でヨハンも口裏を
合わせてくれるだろう・・・多分。
そして、その言葉はハンスの中の
何かの撃鉄を下ろした。
ハンスの糸目が珍しく見開き瞳の奥に閃光が走る。
「本当・・・ですか」
「こういう事に嘘はつけないだろう」
俺以外は
「分かりました!受けます私が武を継承します」
キメの低音ボイスでハンスは立った。
拍手する俺とヴィータ。
なんかヴィータがニヤニヤと俺を見ている。
こいつ分かってるな。
「で、パウルさんには、具体的に
どー対処すればよろしいでしょうか」
瞬間でいつもの軽い口調に戻るハンス君
ついでだ話すか
「聖都はベレンに移すって事でよろしく」
「はい、聖都はベレンに・・・えええええ」
驚くハンス。
厳しい表情で俺に釘を刺して来るヴィータ。
「謀反はならんと言うたじゃろ」
俺は冷静に答える。
「謀反じゃない。バリエアはもうダメだ」
「「なっ?!」」
お、珍しい
ハンスとヴィータのリアクションが一緒だ。
「なんですって、そんなバカな・・・。」
「・・・・。」
信じられないと言った表情のハンス。
考え込むヴィータ。
「ヴィータは行ってみた方が
理解が早いかもな、だがオススメしない
お前、具合悪くなるぞ」
俺は昼間のバゼル騒動の一件を話した。
「末端の神父ですよ。バリエアには9大司教が
後4名、その中には最高指導者フィエソロ様だって・・・。」
ハンスは椅子から腰を上げ、そう言ったが
ハンスの話を遮るようにヴィータが話す。
「が、居てもその有様なんじゃ」
ハンスの狼狽えっぷりにちょっと同情した俺は
追加情報も言っておいた。
焼石に水だとうは思うが
「ヨハンとチャッキー、後一名
特殊な能力者の三人で悪魔の排除は
始める予定だが・・・・。」
「だが?」
続きを促すヴィータ。
これはトドメかもしれないな
「今日、魔王が聖都内に転移してきた
ババァルとも話したんだ。その後
魔都に戻ったけどね」
椅子に戻るハンス。
戻るというより椅子に尻もちを
突くような状態だった。
「排除が上手くいくとしても
ほぼほぼ戦場に近い状態になる
当然、荒れる。建物はもちろん
信者・住人の心身もな」
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