第40話 チャッキー死す再び
「兄貴、大変だ。チャッキーが死んじまった。」
中略
「ランポス!!!」
若干、顔色が悪くなってきたチャッキーに俺は尋ねた。
「どこいら辺まで覚えてる?」
都合良く、脅かす手前までだった。
里で一休みさせてもらってから
二人を聖都バリエアまで送る事にする。
「何か騒がしかったようですが」
バルコニーから一連のコントを眺めていた
ババァルは心配そうに話しかけてきた。
「あぁ、えーと」
「すっげぇえ!コレがエルフの里
超ーエコロジーくなくなくない!!!」
軽くババァルに説明する俺の横でチャッキーは超元気だ。
すっかり日も暮れて来たので
今日はこのままエルフの里に世話になり
明日ヨハンとチャッキーをバリエアまで送るコトにした。
チャッキーの宿泊の件は快諾された
ヨハンと里長の友情のお陰で不便は全くない。
さてメシだが、俺は別行動に移る事にした。
エルフの食事の主なタンパク源がアレなんで
やっぱり肉が食いたい。
後、風呂も入りたい。
昼間、確認した感じでは設備はそのままだ。
もうすぐ食事の時間だというのに
いそいそと出かける準備をする俺をヨハンが見つける。
「ん?兄貴ドコいくんだ」
別に隠す事では無いので正直に言う俺。
「肉が食いたいから別行動だ、じゃあな」
肉と聞いてギラギラした目になるヨハン
連れていけと言い出した。
そういえばハンスも食ってたな
キミのトコの宗教は肉OKだっけな
つか女神からしてかぶりついていたし
「大きい声じゃ言えねぇんだけど、こいつら
よく虫とか食えるよな。人間じゃねぇよ」
まぁ亜人種で人間では無いわな
断る理由は無い
むしろ皮剥ぎとか血抜きとか手間が掛かるので大歓迎だ。
一頭から取れる肉は結構な量なので
どうせ一人では食い切れないのだ。
「働けよ。」
「もちろんだぜ。」
食卓に並んだタンパク源を凝視して
悲鳴を上げ、食堂に軽い騒動を起こした
ババァルとチャッキーもついて来た。
まぁいいか。
森に入ると毎度の狩場まで行き
繁殖期などが分からないのでメスは避け
イノシシに似た生物の大人のオスを選んで狩猟する。
俺は手首から指先までを中空構造にし
奥に玉を形成、圧縮空気で打ち出す。
狙いは獲物の頭部だ。
一発で仕留めた。
なぜこんな面倒をかけるのか
悪魔光線なら準備は要らないのだが
悪魔光線だと消し炭みたいになって
食えなくなるし最悪爆発だ。
美味しく頂く為に、色々試したが
これが一番、肉を傷めない
追いかけまわしたりとか時間も
掛からないのだ。
「組手でソレ使えばあんな一方的にならなかったのに。」
「カンを取り戻したかったんだろ
大体、殺すなら空から悪魔光線だ
殴り合いじゃ勝ち目が無い。」
解体作業は見たら気絶すると言って
ババァルとチャッキーは風呂場近くで待機している。
魔王と勇者PTの一人が
そんな事でいいのかとも思ったが
得手不得手は誰にでもあるし
確かにこれはグロい
手伝いはヨハンで十分だった。
皮剥ぎと血抜きと内臓その他を分離し
ロレツの回って無いボクサーが
練習で殴りそうな状態になった。
ここまでくれば肉屋でもお馴染みの
状態なので大丈夫だろう。
俺は地中から集めた金属で巨大な串を作り
丸焼き準備OKだ。
江戸時代のタクシー、かご屋のように
ヨハンと肉を担いで戻ると、
なんとエルフの料理長タムラさんが来ていた。
肉料理に興味があるとの事で見学したいとの事だ。
見学だけなんて遠慮しないで
良かったら食ってってくれと言ったのだが
やはり壁があるようでタムラさんは考え込んでいた。
「まぁ気が向いたら遠慮無く言ってくれ」
そう言って俺は焼きの作業に入る。
焚火で炙るだけなのだが
この状態でも50kg近くあるんじゃ
ないだろうか、それをグルグル回すのは大変な作業だ。
男三人で交代で焼いた。
半人化した俺と改造人間ヨハンはともかく
痩身のチャッキーにはキツいんじゃないかと
思ったが、そこは流石に腕力はある。
軽々回していた。
「回せば回す程ーーーっ」
変わらないから
つか肉汁が飛び散って危ないから
エルフの里の豊富な香辛料と
弛まぬ俺のトライアンドエラーによって
このイノシシもどきの肉料理は
各段にレベルが上がっている。
元の世界に持って行ってもイイほどだ。
皆、ガツガツ食った。
俺も食べる時は完全人化だ。
案の定、凄い空腹だった。
なんだかんだで今日使用したエネルギーは
多かった様だ、悪魔状態の時は
飢えは無いが人の時は体の状態が如実に分かる。
人で満腹になっておけば
恐怖エネルギーが無くても存在可能なのだろうか
別のエネルギーの様な気もするが
少し実験してもいいかもしれない。
いずれ審判の日が来て決着する。
その時はババァルが魔界に帰り
エネルギー供給を自分で行わなければ
ならなくなるのだ。
まぁ生き残れればの話だし
電源が落ちて、全てが消えるかもしれないが
生き続ける前提で動いて行こう。
悩んだ挙句、タムラさんは意を決し
ほんの一かけらだけだが肉を食してみた。
うまいかどうか良くわからないが
初めての味だと言って
また考え込んでしまった。
この人はなんかエルフっぽくなく
人間に近いモノを持っている。
俺もそこに親近感を感じているのだろう
将来、エルフの里の肉料理が誕生するかもしれない。
食事の後は風呂場に向かい久々の入浴だ。
バロードの村では井戸水で体を拭くだけで
風呂桶が存在していなかった。
野郎三人の前で堂々と服を脱ぎ始める
ババァルを慌てて制止し
やっつけ作業ながらもつい立てを作り
風呂を男女に分けた。
ヨハンとチャッキーは残念そうだったが
貫頭衣の下のボディの破壊力を知れば
とても落ち着て風呂など入れない事を
俺は知っている。
こうして賑やかに夜は更けていった。
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