第32話 取り上げられるのは大事なモノだ
「なんとも有意義な先行偵察じゃったの
褒めて遣わすぞや」
そう言ってヴィータは俺の頭をなでなでしてきた。
「教会に立ち寄って偽騎士団が来ていない
情報を得たのは分かる・・・じゃが」
「じゃが?」
「魔神13将の3・4位はどうして知ったのじゃ」
「そりゃ魔王に会ったからな」
俺とハンス以外が凍り付く。
あまりのヤバ気なリアクションに
俺はわざと聞こえる様な小声でハンスに耳打ちする。
「これも言って無かったのか」
「・・・すいません」
いやハンス君は別に悪くない。
「たけ・・・あアモンそこで魔王を討ち取っていれば」
「全て解決じゃった」
ワナワナと震え出す二人。
ヤバい
悪魔脳加速処理モード
最適解を導け
以下の思考は0.5秒で行われた。
パターン1【おっぱい】
「いやーあまりの巨乳に下の武器ばっかり勇んじゃって」
却下!
絶対ダメ
パターン2【後で考える】
「フッ・・・これも策なのだよ」
今言えといわれたら
どう誤魔化すんだ
これも却下だな
パターン3【ポルナレフ】
「何を言ってるのか自分でも分からねーが
恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。」
ごめんなさい
このシリーズのファンなんです。
やばい
最適解が出てこない
どうしたら良いのか分からず
困っているとハンスが助け船を出してきた。
「申し訳ありません。私のせいなんです」
珍しく大声だ。
いや最近は声大き目な事が増えたな
「魔王の影の中に魔神が護衛として
隠れていたのです。そうとは気が付かず
私は変な気を起こし・・・・アモンさんが
止めてくれなければ私は今頃・・・。」
おぉ
イイぞぅハンス君
「アモンさんだけだったなら
きっと今頃・・・私を守る為に
こんな大事なチャンスを・・・・。」
そうだそうだ
お前のせいだ
さーてどうやって責めてやろうか
ん
ん
いや
ここは
恩に着せるかフヒヒ
こういう時は
恩に着せない恩の着せ方がベストだ
「ハンスを連れて行ったのは俺の判断だ
俺じゃあ教会に入れないからな。」
口調もゆっくりはっきりと
普通に
急がず怒らずクールにと
「だから責任は全部俺だ。」
ここはSEさんに「シャキーン」って入れてもらおう。
さぁ俺のせいだ
でも責めないで
「ごめん・・・事情を全部聞いてから
意見すべきだよね。」
後頭部をポリポリするカルエル。
「うむ・・・そうじゃな。」
おやぁ
ヴィータさまぁ
どうしちゃったのかなぁ
いつの高飛車な態度はどこいっちゃたのかなぁ
いいんだよ言ったって
ハンス一人の命と全世界のどちら大事かぐらい
責めろよ
どうした
こいよクソ女神。
とにかく続きを聞かせろとなった。
ふぅ
凌いだ。
良かった。
それにしてもハンス君がキラッキラした目で
俺を見ている。
なんか、俺がやらせろと言えば
尻の穴を差し出してきそうな雰囲気だ。
いわないけどね
近づく夜のハンスを隣で感じていたくないからね。
そうしてカルエルと出会ったトコロまでを説明し終えた。
「そうか・・・それでベネットを」
カルエルもベネットを捨てた事情を理解してくれたようだ。
「ん、持って帰って来てはいけないモノを
その時その時で判断しておるようじゃな
正直その影の魔神がついて来ていたら危うかったわ」
「魔神13将、序列10位【影のダーク】暗殺と
諜報にかけては随一ですからね」
低っく
10位って影低いな
薄いとかは俺も良く言われるけど
えー
諜報ってもっと上位にじゃないとマズいだろ
「それに・・・時空魔王:ヴァサー
彼は魔界でも3本の指に入る」
ん
なんでばさーなの
名前を言わず魔王で説明したけど
なんでばさーなの
違うし
「んにゃ、俺が会ったのはババァルって名乗ってたぞ」
俺とハンス以外が凍り付く。
あまりのヤバ気なリアクションに
て
また最初に戻るのか
この流れって
ベネットは今回の魔王はババァルだと言っていた。
そう呼ばれた魔王も否定する様子は無くキョトンとしていた。
そうキョトンとしていた。
もしかして今回の魔王はカルエルの言うヴァサーで
ベネットは俺達をハメる為にババァルと偽った可能性も
確かに残る。
あの巨乳美女は本体ではなく俺と同じ人化した姿だ。
俺がその気になれば他人の姿にだってなれる様に
人化した姿からは中身の特定は出来ない。
しかし、何の為に偽るんだ。
可能性としては
実はもっと上があるが、コレを最高と戦力を見誤せる
一種のブラフとしてくらいしか思い浮かばない。
ただ魔王は戦力0だ。
階位を見誤らせるメリットがあるのか
その戦力0もベネットの話だけだ
全部うまく乗せられているかも知れない。
ちょっと捨てた事を後悔するが
同時に捨てて良かったとも考えた。
相手は技のベネットだ。
戦いなら俺が強いが、化かし合いとなると
多分、勝負にならない。
現にこうして今も振り回されている。
「まっ待つのじゃ。今回の魔王はババァルと
聞いたが、まさか二人も来たのか」
ヴィータも焦りを隠せない。
一番強い暗黒魔王ババァルだけでも
相性最悪なのに、更にもう一人
・・・・・。
何番目に強いんだっけ
確かプリプラが言っていたが適当に聞き流していたので
全く覚えていない。
とにかく、もう一人となると
絶望的状況とヴィータはそう考えたのだ。
もう一人とは俺は思っていなかったが
その可能性もあるのか。
「えーとですね。年の頃は」
ハンスが魔王の外見の特徴を説明し始めた。
だからソレ意味無いって
って変化出来ない人間には無理な発想か
何者かを特定する手がかりだと普通は思うわな。
「もの凄く豊かな胸をお持ちでした」
ばかぁああああ
それは言うたらアカン
ヴィータの瞳が急速に冷めていく。
「あ、それならババァルですね。私の
予定・・・想定とは違うようです。」
ここでチラりと俺を見るカルエル。
この意味はプレイヤーバランスを取る為
事前に設定した運営側では魔王ヴァサーを
出現させる設定になっていた。
カルエルは魔王を「彼」と表現していた。
つまり男性、男性型魔王。
真の姿はともかく、通常の状態では男の外見
それ以外のアバターは用意されていなかった。
だから巨乳の若い女性。
この証言に当てはまる魔王。
それにババァルのアバターが合致してのセリフという事だ。
ババァルのデビルアイは俺より上位だった。
なので手下に偽装させたという可能性はほぼ無い。
魔神13将:1位より上位なのだから
魔王なのは間違い無い。
これは単純に太郎の記憶違いか
太郎がログインした後、
何らかの理由で運営が予定を変更したかの
どりらかであろう。
そして、これはもうはや俺の祈りの様なモノだが
太郎の話、想定が根本から間違っている。
ここは現実の異世界で
ゲームは限りなく酷似しているという可能性だ。
「・・・アモンよ」
ヴィータが何やら深刻な様子だ。
「我の所に戻ってきたのは、やはり聖刻のせいか
魔王の元に帰りたいか。」
なんで魔王が巨乳だと、俺がそうなるんだ。
・・・・。
なるのか。
いや
認めたら負けだ。
「なんで、そうなるんだ。」
俺は努めて冷静に言った。
冷静に見えているはずだあ。
俺は冷静だぁ。
「胸がデカい方が良いのじゃろう」
そうです。
いや違う。
俺は冷静なまま答えた。
「関係無い」
ヴィータはいつもの顔に戻ると勝った様に言った。
「言うたな。胸なぞ関係無いと」
あれ?
「安心したぞや。」
もしかして
おれは、おっぱいを封じられたのか
おっぱい封じって何だ。
それ封じられるとどうなるんだ。
あれ?
おっぱいを封じられてしまった主人公アモン。
彼はこの危機を乗り越える事ができるか?!
次回デビルバロン33話
「それでも俺はおっぱいがイイ」
ご期待ください。
などと予告風に考えてみたが
何の効果があるのかさっぱり分からない。
後々後悔を味わう事になるのだろうか
いや
無いだろ。
あってもその時、後悔すればいいや。
そんな事を考えている俺にカルエルは日本語で言ってきた。
「たけし、設定が変わってるみたいだ。」
その設定外なんだが
多分これからする話はもっとビックリだぞ太郎。
「じゃ、取り合えずベレンを拠点化する方向でいいな」
皆、頷く。
お前らもプリプラの意見なんてどうでもいいのね。
俺が言うのもなんだが少しあいつ可哀想だ。
「じゃ勇者もベレンに持ってこようぜ
悪魔達はガバガバを処刑する気だからな
片田舎に隠れているより、より強固な守りの
ベレンに来てもらった方が安全だし
何より共同戦線を張る事になりそうだ。」
ハンスの顔が輝く。
「そうですね。それが良いと私も強く希望します」
ヴィータも異存はない様だ。
「じゃな、早い方がよかろう」
そう言ってヴィータはカルエルを見る。
察したカルエルは即答した。
「では、朝一で私が迎えに行きます」
それが一番だ。
皆、頷く。
やっと作戦会議っぽくなってきた。
ここで爆弾投下だ。
「よし。ハンスと勇者が揃ったら二人で
魔法の練習をしてもらおう。魔法が使えれば
強大な戦力になるからな。二人なら必ず使える様に
なるハズだ。なぁカルエル。」
「・・・え?」
ほら想定外だろ。
ハンス本人は使えないのはもちろん
勇者だって使えないのだ。
彼は「魔法を知らない見たことが無い」と言っていた。
同じPTのメンツで仲間の使用する魔法を知らない
なんて事はあり得ない。
彼のセリフから勇者も魔法を使えない事は確実だ。
「勇者が魔法を使えない?」
カルエルは目を丸くして驚いている。
驚いてもイケメンだな。
製作者のセンスの高さは芸術家並みだな。
「聖都では使っていたのか勇者は」
念のために確認を入れておこう。
「平和だったから・・・使う機会自体が無いし」
カルエルしどろもどろだ。
「稽古ぐらいするだろ。武人なら」
「確かに城の中庭で剣の稽古は良くしていたっけ」
俺は日本語でカルエルに言った。
「太郎、この世界に一般的な魔法は無い」
「いやそれじゃゲームにならないっしょ」
天使面が剥がれて素になった太郎。
「本来なら魔法のエキスパートたるエルフ族が
力押ししか出来ない原始的な種族に蹂躙されていた。」
ベアーマンの一件は話してある。
あの時は反論しなかったが
そもそも俺が介入しなければエルフ族は
どうなっていたことやら。
「そうだ、この設定も変えた結果なのか」
知らないと言ってるのにイジワルな質問だ。
だが、子供エルフの怯え泣く声を
たまに思い出す俺としてはちょっと意地悪もしたくなる。
なんでエルフから魔法を取り上げた。
魔法無しのエルフにはもう耳しか価値が無くなる。
「・・・おかしい」
まぁ後でゆっくり考えてくれ
俺は魔法教育の方に話を戻しハンスとヴィータの了承を得る。
ベネット襲来の際にじっくり見させてもらった
ヴィータのお手本を魔法として完成させてみせる。
これは僧侶も勇者も使えないとおかしいだろ。
パパスだって使えたぞ。ぬわーーっっ!!
それで明日の予定は
カルエルは田舎に勇者をお迎え。
俺はタムラさんから貰った種で農耕の指導。
ハンスその手伝い。
ヴィータは不敵な笑みで期待しておれと言っていた。
何をする気だ。
みんなそれぞれ忙しいな。
ん
あれ、誰か忘れているような
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