第31話 今後の方針
太郎は小梅の様子を見に女子部屋へ
俺はそのまま男子部屋に行く
話を始めるのは太郎が戻ってからだ
まてよ、太郎のこっちでの名前は
俺が付けた名前【カルエル】で合ってるのか
ハンス達の前では太郎と呼ばない方が
混乱させないだろう。
うーん
名乗らせればいいか
「なんじゃ・・・騒がしかったようじゃが」
なんかヴィータの様子が変な気がしたが
こいつ小梅とそんなに仲良かったっけか
まぁ、適当に大丈夫だと言っておいた。
そうこうしていると太郎が入って来た。
「皆さん初めまして。私は天使カルエルと申します」
合ってた。
太郎は改めてハンスとヴィータに挨拶をした。
二人も挨拶と自己紹介をする。
ハンスはもう知っているので、ヴィータにも
伝わってはいるのだろうが、ここで自分から
俺達三人の中身と関係をざっと説明した。
ヴィータは特に驚いた様子も無い。
やはりハンスから聞いていたのか
あるいは聖刻から得た俺の情報で知っていたのだろう。
しかし、けじめと言うかなんと言うか
自分の口で打ち明ける方が良いと思ったのだ。
「ふむ、悪魔と天使とエルフがお友達とはの」
そういうお前は女神。
こんなにいるのに人間はハンス君だけだ。
がんばれ人類代表。
「プリプラは?」
一緒に来るものかと思っていた小梅の姿が見えない。
俺はカルエルにそう聞いた。
プリプラと言われ一瞬、誰だソレと言う顔を
したが直ぐに気が付いたカルエルは答えた。
「疲れているみたいだから寝かせておこう」
まぁ居なくても問題は特に無い。
あいつ自身がどうするか、それによって行動に
影響を左右される人物はいない。
「じゃ始めるとするか・・・ハンス君
ベレンの街で起きた事はヴィータにもう話したか」
「いいえ、アモンさんからの方が良いかと思いましたので
街並みとお土産の説明ぐらいしか」
「そうか、じゃ最初からだな。」
俺はまず偽聖騎士団がベレンに立ち寄っていない事
そこを飛ばしてもう聖都に入っている可能性について話した。
「フム、その3・4位の魔神ならば可能じゃの」
ヴィータからは驚きも、焦りも感じられない。
冷静に努めているのでは無く、本当に冷静だ。
この辺りは流石は女神、大物だ。
「勇者ガバガバ様の身に危険が迫っています」
それに比べ、冷静に努めているのがバレバレなハンス君だ。
一刻も早く駆け付けたいのが見て取れた。
「その事なんですが」
カルエルが割って入る。
俺達三人の話は本当に三人についてだったので
俺もカルエルの持っている天使側の状況については
初耳だ。ちゃんと聞いておかねば
「もうバリエアに入っています。
明日、歓迎式典が催される予定です。」
「なんですって。」
「ほう、早いのぉ」
ハンスは驚き、ヴィータは感心している。
俺は特に何も言わなかった。
「勇者は先程、私が彼女の故郷の村まで送り
届けました。アモンに会ったのはその帰りです」
「無事なのですか、ガバガバ様は」
ハンス君、必死だ。
話の流れ的に無事なのは分かりそうなものだが
大丈夫という確信が欲しいのだろう。
「実は危ないトコロでした。騎士団を見るなり
剣を抜いて襲い掛かかりそうでしたよ。
そこで止めて説得して隠れてもらう了承を
得ました。・・・彼女、直情的ですね」
何故そこで俺の方を見るんだ。
「・・・良かった。」
安堵の息を漏らすハンス。
余程、心配だったのであろう
文字通り胸をなでおろしている。
「ガバガバとやらには悪魔を見抜くスキルがあるのか」
俺はカルエルにそう聞いた。
「うん、邪な者とそうでない者を見抜く目があるよ」
「俺も見破られるかな」
俺にはそれが問題だ。
「バレバレだね」
笑ってそういうカルエル。
まぁ薄皮一枚の下は悪魔だからな、
そこで完全人化して、もう一度聞いてみた。
「これでもダメか」
顔色を変えるカルエル。
「やっぱり、たけちゃんはスゴいよ」
「たけちゃん止めぃ」
興奮したカルエルは俺を賞賛しガバガバの前で
悪魔化するならこの状態で説明してからに
した方が良いとアドバイスをしてくれた。
勇者の残りのパーティは天使指揮の元
各々、城周囲の街に潜伏しているそうだ。
「お前ら天使は何人居るんだ
なんで見す見す入城を許した。」
入城前に術を破って阻止とかできそうなものだ。
俺はカルエルにそう質問した。
「天使は上位は僕だけ、後は数人の下位天使が
城の奥でごく一部の上層部と居るだけなんだ。
城のほとんどの人は天使が滞在しているのを
知らない状況なんだよ。」
寿命MP魔法の秘術と同じ扱いなのか。
「それに城下町の人々は既に術中に落ちてからの
入城だったんだ。強引にいけば僕等の方が
悪魔と思われかねない。」
秘密にしていたのが裏目に出たのか
そんな中で勇者だけでも逃がしたのは
良くやったと言うべきか。
それに非戦闘系とは言え魔神13将が二人だ。
四大天使クラスに出張ってもらわなければならない。
ここで俺はずっと気になっていた事を
カルエルに聞いた。
四大天使はどこで何してる。
ヴィータにも聞こうと思っていたのだが
こちらは望み薄だ。
魔王も俺をわざわざ探しにウロついていた位だ
パワーリソースが供給先の居場所を感知出来ない。
これは神側も同じだろうと思っていた。
そうでなければ悪魔に頼らずさっさと呼べばいい。
それをしないという事は、魔王と同じように
神も四大天使を含む天使全般に意志疎通は
口頭に頼るしかないのだ。
「こんな大変な時に四大天使はどこで何をしているんだ」
「・・・全くだよね」
カルエルは困った様にそう言った。
その言葉から俺は予想した。
恐らくプレイヤーバランス修正の為に
すぐに登場出来ない仕組みになっているのだろう。
「お主の上司は誰じゃ。何と命令されておるのじゃ」
ここでヴィータが口を挟んできた。
「え?・・・上司」
焦るカルエル。
ギクッという音が聞こえてきそうだ。
知らないんだろうな
替わりに俺が答える。
だって俺が設定した本人だもん。
「天使長、ミカは平和維持の為に
地上にカルエルとその部下を派遣した」
手に余る緊急事態の時の連絡方法は
カルエルには無かったような。
しかーし、その悪を許さない正義の目は
常に地上を見ておられる。
ピンチの時はその炎の神剣レイバーンを手に
颯爽とデュォワっと光と共に現れてくれる
ハズなんだが・・・。
「なんと・・・よりにもよってミカ嬢か」
がっくり項垂れるヴィータ。
えーなんでー天使で一番偉いんだよ
一番強ーいんだよ
なんで
なんでガッカリするの
「せめてラハ坊だったならばのうトホホ」
今まで動じなかったヴィータが
トホホとか言ってる
え
ダメなの
メイと五月が
レアだけどレアじゃなかったーって踊るぐらい
ハズレなのミカって
「ミカの何がダメなんだ」
俺はストレートにヴィータに聞いてみた。
知らない人ならば誰しもが感じるであろう疑問だ。
「ん・・・まぁ一言で言えばオヌシの女版じゃな」
「それは・・・。」
「あぁー」
残り二人の微妙な反応がスゲー嫌だ。
詳細は知りたくない。
「せ性格はひとまずどうでもいいだろ
連絡は取れないのか。」
聞いて来たのは来たのはオヌシと突っ込まれた。
ぐぬぬ
そしてやはり連絡を取る手段が無い事が分かった。
なんていうか情報伝達が両陣営ともずさんだ。
というか昔はこれが普通なのか。
「カルエル。スマホかなんかで話できないの」
「仮にあっても基地局も衛星も無いでしょ」
「いやさ、ホラこう特別な鏡の前だと時空を
超えて時差もなく会話できちゃったりしないの」
「そんなの出来る訳ないじゃん。真面目にやってよ」
しかし、俺の女版だっていうなら
喜んで駆けつけて無双をはじめてもよさそうなモンだ。
やはり来れない枷があるのか
あるいは
全く興味が無い
この場合はすごくマズい。
俺は嫌な事は努力をしてでもやらない派だ。
「・・・四大天使抜きで進めるしかないのう
いよいよになれば流石に出てくるじゃろうて」
ここでふと気がついた。
「カルエル。そう言えば勇者を送って行ったんだよな」
「うん。生まれ故郷の村だって言ってたよ」
「目立たなかったのか」
内緒の天使が勇者を担いで飛んでいれば
いくら夜を選んでもあれだけ光っていれば
人目を避けられないで大騒ぎになる。
「うん、馬になって行ったから」
そうか、神獣には変化できたっけ
いくつ選択肢があって
え
でも馬じゃなくてユニコーンを選んだはずだが
そう言った俺の返事にカルエルは答えた。
「角の部分は装飾でごまかしたよ」
「そうだったのか。・・・じゃあここでも
無理して人間の振りしてないで馬でいいじゃん」
「部屋入れてもらえないでしょ。やだよ馬小屋なんて」
「そうでも無いぞ、無料でMP全回復
一日刻みだから年も取りにくい。」
名作RPGのボケだったが
当然、誰も突っ込んでくれない。
それから話は真面目に今後の行動方針について
どうするべきかという話題に移った。
「聖都へは来るなというのじゃな」
「はい、現状では偽女神が既に民衆に認知されて
しまっているので、今行っても危険なだけです。」
ここで俺は疑問が頭をよぎる。
この間、ハンスに聖書を読んでもらった時の苦痛だ。
神に対する祈り、それも大勢からのとなると
俺なら瞬間で頭が爆発する自信がある。
術で化かしても本体は悪魔なのだから
祈りには耐えきれないハズなのだ。
完全人化なら耐えられるが、完全人化では
悪魔の術が行使できない。
俺は素直にその疑問をカルエルに聞いてみた。
カルエルは納得して頷きながら答えてくれた。
「なるほど、だから偽女神は人だったのか」
偽女神は悪魔本人が化けているのではなく
術でたぶらかされた人間を身代わりに立てている。
悪魔本人は祈りを捧げられる事が少ない側近に
そして最終的な狙いは政治の中枢を担う人物と
入れ替わってしまう事だろう。
悪魔もちゃんと考えている。
これならば苦痛を味わう事無く、本来はヴィータに
集まるハズの祈りが無駄に関係無い人物へと
注がれていってしまう。
今、聖都に行ってもヴィータはパワーアップできない。
ここはカルエルの意見に同意だ。
そして俺は別の提案をしてみた。
「ベレンを拠点にすればイイんじゃないか」
中間都市ベレン。
まだバリエアに行ってないがベレンも人が多い。
教会も立派で大きかった。
「ここはベレンを無視して聖都に直行した
悪魔側の行動の逆手を取ろう。」
これは教会もベレンを治める為政者も面白くないハズだ。
あれだけの都市なのに無視されたとは内心
ニコニコしてはいられない。
それに帝国の支配がどれだけ強いのか未知数だが
野心を抱いている者がベレンに居れば面白い事になる。
俺は作戦を簡単に説明した。
「謀反を起こすのは反対じゃ。民が苦しむ」
「純粋に国や人々を救いたいと願う者には
そのまま純粋に協力してもらえばいい
政権をひっくり返すワケじゃない。
野心を抱く者にはこう説得すればいい
ベレンに訪れた方が本物の女神だって証明されれば
教会を含む聖都のメンツはまる潰れだ。
今後の色んな交渉でベレンは大きなカードを
持つ事になる。しかも表面は敬謙な信徒の振りしたままだ
こんな美味しい話はないだろ」
カルエルは感心してくれた。
ハンスは微妙な顔になった。
ヴィータは苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「オヌシ・・・悪魔じゃの」
俺はどんな顔をしていたのだろうか
多分、笑顔だったんだと思う。
その表情で答えた。
「それも爵位級のな」
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