第30話 伝説のクソゲー
帰る体など無い、メモリー上に展開された
プログラム、コピーされた人格。
それが今の俺だというのか。
しかし何か引っかかる。
果たして本当にそうなのか
今のはあくまで太郎の推論であって
その事実確認の方法は無い。
キリト軍団。
あいつらもメニューが開かないと言っていた。
あれはNPCでは無い。
それに死んだ時も死体が残らなかった。
光の粒子になって消えたのだ。
あれが死亡ログアクトではないのだろうか。
俺はその時の事を太郎に言ってみた。
「あ、じゃあベネットのイベントやったんだね
仲間になってる?」
キリト軍団はプレイヤーの振りをしたNPCだったって事か
ややこしい
「えーと・・・ベネットってどういうキャラなの」
太郎の話だと、事前のプレイヤーバランスが
神側に偏っていたため、運営の太郎は悪魔側に
行ってバランスを取る手筈だったらしい。
アモンも神・四大天使などと同じで
通常ならプレイヤーは操作出来ないキャラだ。
まぁデタラメに強いからなぁ・・・・
それで、ベネットはアモンのガイドする役に
なるカラクリだったそうだ。
そうかー
知らなかったんだから
しょうがない。
俺は悪くない。
「どこ?ここにいないの」
正直に言う事にする。
「それがさ・・・さっき捨てちゃったんだよね」
「捨てた?倒したんじゃなくて?」
「魔核を破壊すると他の悪魔が強化されそうな気がしてさ」
「おぉ流石、分かってるねー各個撃破で
どの順番で倒しても後の魔神の方が
強くなってるカラクリなんだ」
「そうか。だから魔核だけ捨てた」
「じゃあ復活して戻って来る・・・ね
周囲の物質を取り込んで体を再生させるから」
こんな予想ばかり当たるな。
「そんな気がしたんでな。周囲に物質の無い
宇宙空間に捨てた。お前に会ったのは
その帰りなんだ。」
「・・・。」
おい、なんか言え
「この場合どうなる」
「分かんないよー」
「ていうか宇宙空間の設定でどーなってるんだ距離無限大か?」
大抵の場合、どんなゲームでもそれ以上
キャラが上昇出来ないフィールドの天井を設定している。
「いや、担当外だし。そんな上方向に
行くイベントも無いし、分からないよ」
「・・・・ガイド無しか」
「そうなちゃうね」
しばらく沈黙が続く。
これから、どうするべきなのか
これから、どうなるのか。
その沈黙をプリプラが破った。
「あたし記念品もらってなーい」
そこですか。
うらやましい。
こいつのバカが羨ましく感じる日が来るなんて
「小梅ちゃん、あのね」
太郎が更に噛砕いて現状の説明をした。
やっと事態を理解たプリプラは激怒した。
「人の個性を勝手に使うなんて違法じゃない」
そんな法律はまだ出来て無い。
「その了承の下りも事前に記入して
もらった誓約書に書いてある・・・んだよね」
太郎は申し訳なさそうに言った。
「あのゲーム内におけるプレイデーターは
当社に帰属しますって項目か」
俺は誓約書の内容を出来る限り思い出そうとするが
ちゃんと読んで無かった。
大量に何か書いてあったが読むのが面倒くさかったのだ。
保険の契約書と同じでサインさせるのが目的で
理解してもらうのが目的では無い作りなのだろう
後々トラブルの際に
ちゃんと読んで無かったそっちが悪いって事だ。
「俺が書いた誓約書じゃないけど社は
多分そういう意味にする気だと思う」
「ずるくない」
ただで遊ばせてくれるハズも無い。
会社の方にも目的や利益があっての事だ。
「もうやだ。こんなの家に帰りたいよ」
それが、もう出来ないって話だったんだよ。
プリプラは泣き始めてしまい
俺達は、またしばらく沈黙した。
「これから、どうするのぉどぉなるのぉ」
泣きながら言ってる。
こっちが聞きたいトコロだ。
「自由・・・としか言えないかな。」
太郎自身どうしたらいいのか分からないのだろう
「自由って言ったって電源が切れたら
全部消えちゃうんでしょ!!」
プリプラは更に捲し立てる。
「いつ切れるの!いつまで生きていられるの!
いつ死ぬか分からないのに何をしろっていうの」
あれ
「プリプラ・・・それは現実でも同じだ」
そうだ。
あの無理ゲー「現実」だって同じだ。
大声になり過ぎた。
明日、村長夫妻に謝らなければな。
あの後、更に激昂し始めた小梅を太郎は上手くなだめた。
俺は外に追い出されてしまったので
どうやったのかは知らない。
庭でボーッとしていると太郎が出てきた。
「すまないな」
俺は強引に説得しようとしすぎて
結局、冷静な話し合いにはならなくなってしまった。
その事を太郎に謝罪した。
「いいって。・・・灯りいる?」
輪っか出すつもりなのか
それは目立つし、見つかれば大騒ぎだ。
「いや、月明かりだけでも十分でしょ」
あの月もそうだ。
あれは有る。
テクスチャを貼っただけのモノでは無い。
ゲームの為だけにここまで設定する必要は無い
俺はまだ異世界の現実と思い込もうとしている。
仮にメモリー上に展開されただけの存在だったとしても
どうにも出来ないし、確かめようが無いし
分かったトコロでどうだって言うんだ。
やる事は変わらない。
もう、開き直りだ。
「太郎。俺はやるぞ」
太郎と自分にそう言い聞かせた。
「うん」
予想通りなのだろう、太郎は頷いただけだった。
「毒を食らわば皿まで、プレイしたからには
エンディングまでだ。」
「流石は伝説のクソゲー【たけしの挑戦状】をクリアした、たけしだ」
あれはもう二度とやりたくないなぁ
気になって仕方が無い事がある。
それがやる気の最大の原因と言っていい。
俺は太郎に自分の考えを話した。
「ベネットと話した事でな」
「うん」
「悪魔の目的が現代の世界そのものだったんだ俺はそう感じた。」
不思議そうな顔をする太郎。
俺は話を続けた。
「人々は際限無く増えつづけ、その大半は不幸を抱える。
幸せな支配者層はごく一部でそいつらだけ悪魔は操って
営業活動することなく大量の悪感情をむさぼる世界だ」
「・・・・。」
「幸せを神に感謝し、不幸を悪魔に呪うのが
本来の自然な流れのハズなのに、その世界では
幸せはそのままラッキーで不幸で神を呪っている
呪われた神は力なんて集まるハズも無く
衰弱しきって何も出来ない。全くもって
悪魔にとって理想の世界だ」
「それが現代社会と被ると思ってるんだね」
特に感情を含めず太郎は言った。
俺はまだ話を続けた。
「あぁ、悪魔側がほぼ勝利を収めた未来が
俺達の居た世界で、今ここはまだ戦いの
行方が定まっていない過去だと・・・
思ってるんだ」
そうだったのか
自分で言ってて知らなかった。
話しながらか自分の考えが分かった
俺はもう少し、する前に良く考えるべき
考え無しで行動する困ったちゃんなのかも知れない。
「うーん確か・・・吉岡さんが
そんな事言ってたかなぁ」
「・・・誰だ。それ?」
村長の家から物音が聞こえた。
俺たちは振り返って確認する。
何か落としたような、転んだような
そんな音だった。
しばらく様子を伺うが
それ以降何も聞こえなかった。
小梅がヒステリーで暴れてる様子では無いようなので
俺達は向き直って話を続けた。
「これも担当外だったからウロ覚えなんだけど
吉岡って人が原作の大まかなストーリーを書いてたんだ。」
「・・・そいつは現代社会をそう解釈していたって事なのかな」
あながち外れでは無い。
いや
それどころか大いに共感しますよ。おれはね
吉岡さん
誰だか知らないけど吉岡さん。
「じゃ、たけしはこのゲームを」
「あぁ悪魔側が勝利を収めない方向に動きたい」
ただ神側の考えもちゃんと聞いておきたい。
嫌だがヴィータと真面目に話さないとな。
その結果いかんでは
第三の選択も視野に入れないといけない。
「OKたけし。協力するよ」
「いいのか。電源の落ちるその日まで
小梅とイチャイチャしてたってイイんだぜ」
「それは肉体の有る方の俺に任せるよ」
そうですか
肉体が無いと始まらないんですか
爆破するぞこのリア充
「天使だからね。この一大事に抜けるワケにも
いかないし。エルフ族なら里にいれば
どっちの陣営が勝利しても大した影響は
無いよ。彼らは無宗教だからね」
あ
「それなんだが、今回のプレイの成り行き上・・・」
俺はベアーマンの一件を太郎に説明した。
聞き終わった太郎は頭を抱えている。
「何してくれんのもう想定外だらけだよ」
ここは【パターン2】でいいだろう
「俺は嫌だったんだ。ヴィータがやれって言ったんだ」
また村長の家から物音がした。
流石に気になる。
どうせハンスとヴィータに今後の話をしないとだし
小梅の様子も気になるし
俺達は庭から村長の家の中に移動する事にした。
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