第28話 背負うモノは色々ある
確保した俺の分のドラやきもどきを
あっという間に平らげるとババァルは我に返った。
「あら、いやですわ私ったら・・・。」
恥ずかしがっている。
かわいい
いいんですよ
女子はみんな
そんなもんです。
「ところで、ババァルはこれからどうするんだ」
「神との決戦に向けて精進いたしますわ」
「じゃなくて、今日これからだ」
「今日から頑張りますわ」
ええいポンコツ。
「いや・・・この街に泊まるのか
それとも仲間の悪魔が誰か迎えに来るのか」
「あら、それでしたらご心配無く
転移で身内の所まで移動いたしますわ」
ああ、そうだ転移使えるんだったけ
「それ、どこでも行けるの」
「教会とか、神の結界が強いところは無理ですわ」
成程
なんか納得だ。
さて帰るか。
まてよ・・・影の中の奴。
ババァルに気づかれること無く影の中に侵入出来た奴だ。
さすがにデビルアイの持ち主相手には
警戒もしている今、俺の影に移動は出来ないだろう
しかし、相手がただの人間ならどうだろう。
・・・ハンスが危ない。
「よしハンス君、帰りはいつも通り・・・。」
「・・・はい。」
俺が何を言い出す気か察する事が出来ないハンス君。
「肩車で帰ろうか。さぁ乗ってくれ」
ベネットの影に入る可能性も考慮したので
素早く背中に装備する。
その際、影の中を走査して何もいないのを
確認しハンスの足元でしゃがんだ。
「えっ?」
「えっ?」
「まぁ良かったですわねハンスくん」
真ん中の「え」はベネットだ。
油断ならん、やっぱり影に何かさせる気だったに違いない。
「さぁ早くハンス君」
「あ・・・・はい」
俺の真剣な眼差しにただならぬ気配を感じ取った
ハンスは訳の分からないまま言う通りにしてくれた。
「じゃ、またね」
「はい、御機嫌よう」
店内の客はもちろん従業員にもすごい注目を浴びる。
恥ずかしいが耐えろ
せめて店をでるまではこうした方が安全だ。
こういう時は恥ずかしがったら負けなので
俺は出来る限りの怖い顔で回りを威嚇しながら歩いた。
上のハンスはどんな顔しているのか分からないが
多分この羞恥プレイにきっと新たな自分を
発見してくれているに違いない。
そう思うことにしよう。
勘定は先程と同様の俺製金貨で支払った。
銀貨も作れなくは無いのだが、銀の方は
金と違って武器としての用途が多いので
そちらに回したかったのだ。
大量のお釣りが来た。
俺製金貨でひたすら両替だけしていれば
銀の入手なら、その方が効率が良いのかも
しれないが、どっかの国の奴が
昔500円硬貨に近い自国の安硬貨で
販売機荒らしを行った、せこい事件を
思い出して止める事にした。
あんな連中の様にはなりたくない。
「あの・・・アモンさんいつまで」
あ
忘れていた
「おぅスマンもう大丈夫だろう」
俺はハンスを肩車したまま街を往来していた。
半人化状態での体力は人間のそれとは比較に
ならない程大きい。
俺はハンスを下ろすと
なんでこんな事をしたのか説明した。
「そうですか・・・危ないトコロだったのですね」
俺がハンスを辱めるのが目的で無い事を
理解してくれたようでなによりだ。
ベネットに「残念だったな」と声を掛けるが
「何のことでしょうか」と、とぼけられた。
折角なので、帰りがてら女子達の喜びそうな
物をお土産に見繕っていく。
ベレンの町を出る時も、簡単な検査だけで
直ぐに出る事が出来た。
もう夜も更けて来たというのに
まだ、入って来る人が大勢いるのに驚いた。
本当に眠らない町なのか。
例によって人気の無い所まで
移動すると悪魔化してバロードの村に向かった。
バロードの村外れに着くと俺はハンスを下ろし荷物を預けた。
「アモンさん・・・。」
「ちょっとコイツを捨ててくる。まぁ朝までには
戻るからみんなによろしく」
俺は背中の創業祭を親指で指さし言葉を続けた。
「コレ持ち歩くのは危険だわ」
蒸着で作成した疑似声帯は既に外してある。
コイツ特有の魔力の波動
まぁラジオの周波数みたいなモノだ。
それも俺の方でカットしているので
もうベネットの言葉を聞く事が出来ない。
影の一件で俺はベネットを信用出来ないと
完全に判断した、それだけでなく危険と認知した。
持って帰る気は無い。
ここで、ぶっ壊しても一緒なのだが
ハンスの前では何故か気が引けた。
俺は再び翼を起動させると一気に上昇する。
ハンスが何か言いたげだったが聞かずに飛び立った。
自分でも良く分からないが凄い頭にきている。
力いっぱいで上昇すると
3秒程で、もう成層圏に来た。
俺は外した疑似声帯を創業祭に
再び付けると、問いただす。
「テメぇ俺をハメる気だったな」
自分でも驚く。
俺は怒っているがクールに話すつもりだった。
だが、いざ口を開くと出てきたのは汚い罵声だ。
「お待ちを、言わなかったのには理由があるのです」
俺はキレた。
第一声が謝罪だったならばまだしも
言い逃れとは許せん。
「言ってみ」
「そうですね。今の段階で
どこまで説明できるかとなると
うーん、アレですが決してあなたとって
悪い話では」
最後まで聞く気は無かった。
俺は魔核を外すとありったけの力で
宇宙空間にぶん投げた。
「俺がどうしたいか知らないのに
いい話も悪い話を判断出来る訳ないだろうが」
俺は、とっくに見えなくなったベネットにそう吐き捨てた。
「考えるのを止めるまで漂ってろ」
第一声が謝罪だったなら
俺は許・・・・さないな
同じだったろうな
そんなに心が広くない。
破壊しなかったのには仮説に基づいた
考えがあっての事だ。
魔王のエネルギー供給が全悪魔の魔核に
行き届くならば、破壊された魔核にはどうだろう。
電球で考えると光らないワケだから
電気は消費されない。
ならば壊すより残した方が魔王の負荷になる。
さらに考えると壊した場合、残された悪魔への
供給量が増えて強化されるのではなかろうか。
そこいら辺に壊さず捨てれば周囲の物質を
加工して再生してしまう。
しかし、宇宙空間となると他の物質が無い
運よく隕石にでも当たらない限り
たまに水素原子がぶつかる程度だ。
体を再生する為の材料が無いのだ。
後は魔王からの力の供給が距離に関係するか
どうかだが、その辺は最悪でも壊した場合と
同じなので危険度は増さない。
そう考えたのだ。
せっかく栄えている街に訪れて気分良く
なるハズだったのに不機嫌にしやがって
出来る限りの遠投をするために加速したせいで
完全に宇宙空間に出てしまった。
服や装備品が心配だったので半人化から
悪魔化して体内に収納する。
これなら自由落下の際、大気との摩擦で燃える事は無いだろう。
甘かった。
熱い。
やばい溶ける。
慌てて翼を起動して制御しゆっくり降下する。
一度大気圏内に入ってしまえば後は自由落下に任せる。
アニメかするなら是非OPに
ってこれは前に言ったか。
落ちながら以外につまらないと感じていた。
初めての時は面白かったが二回目はつまらない。
スカイダイビングが楽しいのは
人間が自力で飛べないからなのではないだろうか。
ここで俺は完全膝カックン耐性に
反応がある事に気が付いた。
何千メートルだか分からないが
こんな上空でだ。
鳥が飛べる高さでは無い。
航空機があるはずも無い。
「・・・なんだ?」
同じ悪魔では無いかと推測しデビルアイで
接近する物体を捉えて俺は驚愕する。
接近する物体は俺だ。
いや
俺が操作するハズだった天使のアバターだ。
じっくり作り込んで細部まで覚えている。
間違い無い
俺が作ったキャラだ。
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