第17話 平和とは文字通り平なのかもしれない
ヨハンの入浴を終え、一休みしていると
聖刻サイレントモードで呼び出された。
昨日の二人部屋は今日エッダ&プリプラに
なるそうで、ヴィータは単独の部屋
ヨハンや長の居る大樹の中の一室に移動していた。
VIP待遇なのだろうか。
まぁ神だしな。
扉の前には護衛はいない。
ノックすると「入れ」と返事だ。
風呂上りのヴィータは薄着だった。
エルフより背が高い人族状態なので
彼らの服では色々と足りていない。
へそとか見えてるし。ふとももとか
うーん
なんだ・・・
本当ならラッキーな状況のハズなのに
本能が嫌がっている。
部屋の作りはヨハンの部屋とほぼ同じだ。
簡易な机と椅子が四脚。ベットは俺達のより
上質な物が置いてある。
流石に天幕のある柱付ではない。
ヴィータはそこに腰掛けていた。
机の上には水差しとカップ。
いずれも木製だ。
後、菓子の乗った皿がある。
「よう来たのぅ」
ヴィータは機嫌が良さそうだ。
それが更に俺の危険信号を増す。
「なんだ話って」
「まぁ座るがよい」
俺は手近の椅子を引くと
ヴィータはベットの上を手でパンパンと叩く。
横に来いという事か
俺は椅子を戻すとヴィータの隣に腰掛ける。
「で、なんだ話って」
さっさと終わらせたい。
ヴィータはキチンと正座になった。
なんだ?
俺も合わせて向き合う形で正座する。
「エルフの里でのヌシの行動、見事であった」
「おぅ」
「褒美を授けようと思ってな」
「いや、イイんじゃないのか」
首を横に振るヴィータ。
「正しい行いは正しく賞賛されるべきじゃ」
何でだ何で涙が出そうになる。
「・・・で考えたのだが今、出来る褒美となると」
そう言うとヴィータはおもむろに自らの上着に
手を掛け脱ぎ始めようとクネクネしだす。
「やはり、おっぱいかのう」
「コラ、やめなさい」
俺は慌ててヴィータの手を上から押さえる。
「今なら結構な成長具合じゃぞ」
それは分かる。
Dぐらい行ってそうだ。
「男なら誰しも見たい、揉みたいのじゃろう」
「舐めたいも入れてください」
「うーん、舐められるのは・・・ちょっと」
いや考慮するな。
「いや、違う。そうだが褒美とかじゃない」
そうだ。
モノじゃない。
「こういうのは褒美とかじゃなくてな
お互い気持ちの通じ合った好きな人同士でだな」
おっさんの説教か
「なら問題無いではないか」
嬉しそうに脱衣を続行しようとするヴィータ。
再度止める俺。
「待て待てコラ」
止めつつも考える。
据え膳食わぬは男の恥とも言う。
ここはDの食卓になってしまうべきか
いいですか天国の飯野さん
俺の選択、合ってますかね
「うう、最後かもしれないし好意に甘えるべきか」
「最後?」
不思議そうな顔をするヴィータ。
「近々どうせ俺は殺されるだろうし」
「殺される?!誰にじゃ」
驚くヴィータ
「・・・お前」
「なんで我が?!」
ここでヴィータが演技をする意味を考えるが
思いつかない。
「今は俺の方が強さが必要かもしれないが今後
力を獲得していけば、お払い箱だろう」
「そんな時は来ない!」
力強く言うヴィータ。
対して俺は冷静に続ける。
「恒久的に同時に存在することは不可能・・・だっけ
俺達どっちか、あるいは両方が消滅しちまうだろ」
「ぬっ」
自分で言ったんだぞ。
「それに悪魔連れて聖都にはいれるワケないだろ」
「・・・無理かの?」
「スキルなり、なんかのアイテムで鑑定するだろ」
そううなると先行している偽部隊も
引っかかるのでは無いか
何か突破する秘策でもあるのか。
それともそこまでの鑑定は出来ないのだろうか。
腕を組んでフームと考え始めるヴィータ。
なんてこった
本当に何も考えてなかったのか
俺の予想より小梅の方が当たっていたなんて
二重にショックだった。
「まず説明するとだな、ヌシと我、互いに人間状態
なら危険は無い、ただ力を使用するとなると近くにいる
のは危険じゃお互い消耗する」
俺は頷く。
それは今までの行動で体感的に理解している。
ヴィータの黄金の輝き、聖属性は俺には最も有効な
攻撃手段になるであろう。
効果はバツグンだ。
「人間界にいる間ぐらいなら消滅してしまいはせん
仮に消滅してもお互いの本体には何の影響も無いしの」
「本体?今ここにいる俺達は本体じゃないのか」
なんとも意外と言った表情でヴィータは答える。
「なんと。ヌシに説明が必要じゃったとは」
ヴィータの説明を要約するとこうだ。
自陣に本体がある
人間界には記憶・人格・力の一部を持ってきている
こちらで消滅しても自陣に記憶・人格が帰る
力の一部はこちらで使い切り
振動数が違うとかで本体そのものの出兵は
膨大な損失を伴う。
なので受肉・義体に先の記憶・人格・力を封入する方法が
一般的な降臨、今回の俺達もこの方法らしい。
これではまるで将棋・・・じゃない
VRゲームそのままだな。
義体の有利な点は
力の続く限り不滅・不変だそうで
最初から強いが成長もしない
固定レベルって事だな。
不利な点は
肉体では無い事から受ける刺激が鈍いせいで
繊細な操作が必要な複雑な術・技は不可能。
鉄は打てても服の修理は出来なかったな・・・。
戦闘メインの力技オンリーならこちらがイイそうだ
当然の事ながら俺は義体だ。
受肉はそのまま
肉体を持つ事で繊細な刺激と細かな力の操作が可能。
変化・成長を伴う。
ヴィータは受肉だ。
寿命がある事や、痛み、快楽などを伴う。
神側は快楽目当てで受肉する事が多いそうだ。
「エクザスなんぞ、ここぞとばかりに羽目を外すぞ」
神界では偉そうにふんぞり返る一位は恐妻家で
神界においては大人しくしているのだが
こちらに来た時は浮気し放題で
ほぼレイプまがいの行動を取るやんちゃ坊主だそうだ。
やんちゃで済むのか・・・さすが神。
しかし本妻のユノに全部バレていて戻った時には
お仕置きされている。
それも毎回だそうだ。
何故懲りない。
困ったのは二位のユノが来た時で
100%エクザスが悪いのに浮気相手に
酷い呪いを掛けたり、本人だけでは飽き足らず
子供にまで呪いを掛けるそうだ。
女は怖い。
それにしても、おい神共。
真面目にやる気あんのか
そんなんだから何千年経っても
膠着状態のままなんじゃないか。
「しかし、殺されるとかそんな風に考えて
おったとはのぅ」
お
貴重な真面目顔をしてる。
ヴィータは美形なので真面目顔だと
超絶美人だ。
よく見て置こう。
「よし、約束しよう。我はヌシを殺さぬ
ただ開放は出来ぬ、なんといってもヌシは
敵側最大戦力じゃ・・・許せ」
はぁ・・・ですよね。
「聖都付近の街で人化しておれば良い
我が勝利しても人化を解かねば消えはせん
敵が勝利すれば、おのずと開放される」
んーどうやって信じろと
まぁ聖刻がある以上
こっちは無条件降伏だしな。
信じるしかない。
頷いておく俺。
「しかし、それならば何でじゃ」
「・・・何が?」
「何故、抗わずに我に従った」
ベアーマンの件か?
まぁそれ以外でも理由はひとつだ。
「従った事など一度も無い」
俺の返答が理解出来ないのか
首を傾げるヴィータ。
「俺は、いつでも俺のしたい様に
していただけだ。それがお前の命令と
合致していただけの話だ。」
笑顔になるヴィータ。
ヤバい
かわいい
そんなばかな
「ふふ、やはりご褒美じゃの」
そういうと上着を捲り上げるヴィータ。
今度は止めるのが間に合わなかった。
豊穣の女神
言葉に偽り無しだ
豊かな実りがそこにはあった。
「・・・・。」
頭の中が真っ白になる俺。
「童貞には刺激が強いかの」
「どどどどどどどどどっど」
「乱暴にするでないぞ」
え
触ってイイの
舐めるのはダメなんだっけ
じゃ
えっと
あー
いけないと思いつつも
吸い込まれていく
ええい
行ってしまえ
ソロモンよ、私は帰ってきたぁ
そっと手を伸ばし
指が触れた
「・・・あ♡」
その瞬間ヴィータは黄金の輝きをフラッシュさせる。
バッチーン
俺の指は根元から
ちぎれて飛んだ。
「え?」
「えっ?」
俺の後ろの壁に貼り付いた俺の指が
血のラインを引きながら壁を滑り落ちて行く。
なんで
完全人化してるのに
俺の指
指は
指が
ああああ
激痛が襲って来た。
「つんぎゃあああああああああ」
「うおー済まぬ」
痛いすんげぇ痛い
止めてくれ何でも喋る
落ちた俺の指を拾うと
ヴィータは素早く回復の奇跡を施してくれた。
激痛は治まり指の感覚が戻って来た。
俺は指を動かしてみて
元通りなのを確認した。
痛みが消えると変わりに怒りが出てきた。
「おい、これのドコが褒美なんだ」
「あ、ちょ、いや・・そのーなんじゃ」
真っ赤になって慌てるヴィータ
ワザとでは無い様だ。
説明を聞くと、どうやら神力は
微力でも悪魔にダメージが入り
人間には無害だが
過剰になれば人間もダメージを食うらしい
「済まぬ。その初めてで気分が高ぶってて」
真っ赤になったまま早口で言うヴィータ
人を童貞呼ばわりしておいて
自分はそれか
かわいいじゃないか
「んっん、今度こそぉぉ落ちついてぇ」
咳払いをして上着を脱ぎだすヴィータ。
冗談じゃ無い
マジで殺される。
なんて危険なおっぱいだ。
ミサイルになっていないので安心したが
警戒が甘かった。
「十分です。ありがとうございましたーーー」
俺は逃げ出した。
やっぱり本能が感じた危機は間違いなかった。
今後は素直に従って逃亡しよう。
俺はプリプラの部屋に逃げ込んだ。
「なんかー騒がしかったみたいだけど」
ああ小梅
お前のペッタンコに癒される日が来るとは
ああ安全なんだね
平和で平な胸
「な・・・何よ?」
俺の視線に気が付いたプリプラは
腕で胸をガードし警戒した。
「ああ、済まない」
涙を拭いて、俺は部屋に来た目的を告げる。
今後の旅に着いてくるかどうかだ。
「えーどうしようー」
まだ、決めてないのかこいつ
「行くなら長に言わないと、許可とか要るんじゃないか」
「えー・・・」
ホントこいつ「えー」しか言わないな。
ベッドが二つ有り、その間に簡素なテーブル。
ベッドを椅子替わりにテーブルの上のフルーツ蜂蜜漬けを
エッダちゃんがつついている。
「エフル語では・・・無いようですね」
体を伸ばしてフルーツに串を刺すエッダちゃん
結構豊かな胸がチラチラと・・・。
普段ならガン見するハズの俺だが
流石に今の俺には恐怖しか湧いてこない
思わず手で視線を遮り顔を背けてしまう。
くそ
なんでこんな事に
おのれヴィータ
なんてトラウマを植え付けてくれたんだ。
俺の仕草の意味に気が付いたエッダちゃんは
慌てて体を起こし手で胸元を押える。
「ごめんなさい。はしたないですよね」
「いいえ、おくつろぎ所申し訳ない
プリプラ、朝までに決めておけよ」
おやすみの挨拶をして俺は退散する。
それにしても部屋まで持ち込んで食ってるとは
いくら別腹とは言えどんだけ食うんだ。
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