島津藩の幕末史に出すぎている男西郷

 題字にも書いたのですが、西郷隆盛という人物は「幕末の島津藩の転機には」と言えます。

 転機と言えば、高崎崩たかさきくずれ、別名お由羅騒動にも、篤姫の輿入れにも、安政の大獄、寺田屋事件に禁門の変(蛤御門はまぐりごもんの変)にも、薩長同盟締結、戊辰戦争に征韓論せいかんろんに西南戦争(西南の役)と30年間の島津藩の重要事には必ずおり、それ以外にはという不思議極まる人物です。

 そう、彼の日常が全くブラックボックスであり、いくつかの逸話があるが、幕末期は、ほとんど遠島えんとうになっており、明治期も戊辰戦争の時と征韓論の問題の時以外はすっぽりと業績の消えてなくなっています。


 大久保利通が島津藩主藩主、島津忠義しまづただよしの父、島津久光しまづひさみつ(高崎崩れの斉彬の対立相手)に取り入るために、彼の好きな囲碁を一から習って近づくような、用意周到な一歩づつ足場を固めていくような人物であったのとは対極にあり、西郷が現れると《だいたいのことはかたづく》(西郷が京都に行けなかった寺田屋事件は止められなかった)。

 なにか水戸黄門や昔の若大将シリーズのように何でも解決しすぎる人物になっています。


 こんな都合の良い人物他にいるのかというと、いないわけではないのですが、それらの人物も、本当の姿が見えにくくなっています。例えば土佐の坂本竜馬、長州の高杉晋作、彼らも登場すると、場が収まり、坂本は暗殺、高杉は病死、そして西郷は敗戦時の自刃という消え方も鮮烈すぎるのです。


 実に都合がよく実に使い勝手の良い人物すぎて生活感が全く見えないというのが私における彼らの印象になります。

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