京都は本当に千年の都だったのか

 『なぜそんなことを言うのかというのか?』という根拠を話してみたいと思います。

 

 先の話数でも述べた通り、平安時代から明治になるまで京都に都があったとする考えに私が感じた不自然を述べていきたいと思います。


 まず2013年に鴨川水系かもがわすいけいが台風により大氾濫だいはんらんをおこし、嵐山を中心に大水害が起こりました。

 京都は昔から鴨川の氾濫に見舞われていたようで、白河上皇しらかわじょうこう(院政期の人物で、あり時の権力者)が「自分のままならないものが三つある。一つは荒法師あらほうし(比叡山を中心とした僧兵の強訴ごうそ、そしてサイコロの出目、そして鴨川の水」この3つが自分の力でもどうにもならないとの記述がありました。

 強訴とは神輿などを担ぎ、仏の威光を笠に着て自分たちの要求を通すことです。白河上皇のころは仏教的には「末法まっぽう」の時代と言われ、ある種の世紀末思想の時代であったともあります。

 また鴨川水系は京都のまちを網の目のように走り、京都の東西を南に向かい流れています。前述の嵐山の洪水は今の灌漑、防波堤の技術があってさえなお起きた災害です。同時に水害後に疫病が発生するメカニズムも今のような医学、衛生学を理解していなければ、何かの祟り《たたり》、鬼の仕業とかんがえてもむりはなかたったでしょう。

 では堤防技術が発達し、水害が少なくなるのはいつからでしょうか?私は明治以降と考えています。コンクリートや大規模な土木工事がなければ不可能に思えます。

 なら政治が安定していた「江戸時代」でもよいのでは?という考え方もできますが、基本江戸時代は地方分権で、その上に大きな川(信濃川や利根川。木曾三川)を考えれば長い橋を立てるには基礎工事の必要になりますし、上記の川は天井川てんじょうがわとよばれ、水面が現在の堤防の外土地より高くなっています。

 ちなみに2023年に新潟県の信濃川にある2つの分水路、大河津分水おおこうすぶんすいが出来て100年、日本海に近い関谷分水せきやぶんすいが出来て50年という節目の年でした。


 また愛知県西部は東海道から外れており、木曾三川きそさんせんの氾濫に備えて、若干高い土地に家を建てる輪中集落わじゅうしゅうらくで有名でしたが、私の実家の近所にも50年以上前に2年続けて堤防が切れて大水害を起こした川がありましたので、50年以上前の家には、家の軒下に小船などを常備している家もありました。

 同時に衛生学的にも、赤痢せきりなどの集団伝染病のニュースを見た経験もあります。日本の衛生学、医学はほんの50年ほど前には、現在の開発途上国と言われる水準と大きく差がなかったとも言えます。


 当然ですが平安期から江戸末期の医療水準も西洋医学が入り、細菌学や病原菌の特定のできる顕微鏡もしくは、もっと微細なものまで見ることの出来る「電子顕微鏡」の普及まで待たなければなりませんでした。

 それらは水害などの後に流行する「はやり病」とされ医学の知識の乏しかった時、衛生学の観念のなかった時代には、様々な病気を大流行させることになります。

 果たしてその可能性の非常に高い、迷信を強く信じていた人たちは、そこにずっと住むことはできたのでしょうか?

 にほんでは、「け」と「はれ」と「けがれ」の3つの状態が人には存在すると、民俗学の授業で習いました。

 「け」とは日常の営みに必要なものでこれは、続けていくと「け」が徐々に消耗していくのだそうです。そして人間が疲弊し亭舞う状態を「けがれ=け が枯れる」といい、その状況を変えるための行動が「はれ(ハレの日とか、晴れ着の語源)」を行うことで、気分をリフレッシュさせるという観点があったそうです。


 京都には三大祭というものがあり、「時代まつり」「葵祭」「祇園祭」とありますが、この中の祇園祭が病気と大きくかかわる祭りになります。

 京都の今宮神社これは創建そうけんが西暦1001年ころ、疫病に備える神社としました。しかしその土地には元は別の神社がありました。

 「紫宮神社しのみやじんじゃ」という疫病に対する神社がありました。またこの紫宮神社は他にも全国各地に存在しています。


定期的に起こる水害と、それに付随する疫病。神社を新しくしてもなくならない水害と疫病の中、本当に祟り《たたり》や穢れ《けがれ》を嫌う人たちはずっとそこに住み続けたのでしょうか?

 

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