平家物語において貴族の恐れた鬼界ヶ島とは何だろう

 軍記物語として平家物語をとらえたときに鹿ケししがたに謀議ぼうぎによって俊寛しゅんかんなどが流刑にあったとされる鬼界きかいケ島というものにあたります。場所的には薩摩より南方の奄美あまみ諸島、大隅おおすみ諸島、沖縄諸島にあるいずれかの島であろうことは理解できます。


 ちなみに平成の大合併がっぺいで島の丸ごとが一つの町になった鹿児島県の「喜界町きかいちょう」はこの鬼界ケ島島ではないということが解っています。ではいずれの場所なのでしょうか?なぜ貴族が明らかに恐れていたのかを考えると、ある候補の島が、私の目に留まりました。その名前は最後に述べますが、そこまでの推測の過程を先に述べたいと思います。


 何故、貴族が恐れていたのかは、その文章を書いた人物が、その場所を恐れていたということとも繋がります。平家物語は作者不詳さくしゃふしょうであり、琵琶びわを弾いて旅をしながら語った法師がいたとされますが、それを聞いて思い出すのは西洋の「吟遊詩人ぎんゆうしじん」です。

 なぜなら、今以上に当時のみやこから離れると、情報の伝達は遅れ、同時に不確かになっていきます。それは識字率ということにも、言葉の地域差(方言)があります。正確な情報の伝達ができず、途中で悪意や誤解のよって情報が歪曲わいきょくされるものです。

 世界中の情報がリアルタイムに集まり、その第一報の確度かくどが明らかにその後の情報より正確であろうと思われる時代はないと思います。なぜならそこには忖度そんたくや、情報の故意なる捏造を行う仲介者存在するからです。

 私が考えるに、ほぼ確からしい情報が、一般の私たちにも得られるようになって10年ほどであると思っています。ですから平家物語やその周辺の日記などは、不確かな情報とも言えます。しかし、そのなかであえて「鬼界ケ島」を恐ろしい場所にすることには、当時の貴族の中での統一見解があったと思われます。


 貴族とはたたりや迷信めいしんを恐れる裏には、何か後ろ暗いイメージがあるか、古い言い伝えでその危険性が伝わったものがあると考えます。祟りはじつはかなり簡単に特定できています。そういう人たちは尊称そんしょうを死後に送られていたり、神社などで祭られている場合が多くみられます。また同時に超人的な行動をした人物として伝説が伝わっている人もこれに該当すると思われます。

 それと同時に鬼について考えると、ある人、もしくは人たちを彼らの意思に反して貶めたり、滅ぼした場合にこの条件が発動すると考えられます。


 では鬼界ヶ島とは何なのかを考えるときに、古代史における日本国内の人口の密度というのが、推定されています。この時に面白い数字が見えます。

 縄文時代中期(おおよそ現代から7500年前から5500年前)における国内の人口の多い地域は実は、長野や群馬のあたりになります。

 意外に多そうな九州は過疎状態で1平方キロメートルあたりには10人以下しかいなかったという統計があります。また鹿児島では数十人単位で固まって人のなくなっている地域が存在し、まるでヨーロッパのポンペイのような場所が存在しています。

 またその後の縄文時代後期に入る頃には長野を苦中心とした地域でも人口密度の激減が見られます。

 これらのことをかんがみ、日本の古代史を見ていくと、火山の噴火というものが大きな影響を与えたとの考えが見られます。

 古事記こじき(この名前については別の鬼界に述べたいと思っています)にある神に淤母陀琉神おもだるのかみ綾惶根尊あやかしきねのみことなどがいます。意味は素晴らしい神といわれていますが、言葉の響きを聞くと全く別の印象になります。重い、だるい、あやかし、等の言葉には明らかに不穏な響きがあります。他にも国之狭霧神くにのさぎり国之狭土神くにのさづちなどを合わせると、暗く狭く、あやしい、重い、だるいこれらの言葉を持つ神がいます。

 このすべてを合わせて考える、ある自然現象をイメージします。火山噴火です。


 日本の古神道こしんとう(自然崇拝)において山自体が祭られているところが各地にあります。有名な所では富士山を祭る浅間神社せんげんじんじゃや阿蘇山を祭る阿蘇神社などが有名でしょうか?

 日本は大陸プレートの境界にできた火山国です。そして山岳信仰において〇〇富士という別名のある山にはほぼ、山のふもとと山頂に神社が存在します。

 これが山を恐れ、祟りを恐れた自然崇拝のうちの山岳崇拝の元となっているのでしょう。


 ではその中でも「鬼界ヶ島」が特別視されていたのかと考えると、今から約5000年ほど前に大噴火を起こした火山があることが解ります。

 この火山の噴火が地球の歴史から数えて、上位の3つに入るほどの大噴火だったそうです。そしてそれの起こった場所が先ほど述べた、奄美、大隅、沖縄諸島のいずれかの島であったと類推されます。

 そうして、それらの島々を調べていくと、一つの候補ではないかと思われる島に行きつきました。その島は火山島で、硫黄を多く含んだ土砂が雨によって海に流れ込むと海の色が白く濁ります。これは温泉が硫黄により白濁するのと同じだと思ってもらえるとわかりやすいと思います。 

 鬼と呼ばれる土地や島が硫黄と関係が高く、同時に火山が大噴火を起こした過去があるなら、それを伝説として代々受け継いでいた人たちには大いなる恐怖でしょう。

 そしてその条件を備えた場所が存在します。「薩摩さつま硫黄いおう島」この島が、私の調べた中で最も可能性があるのでは?と思われる場所です。


 実際の答えはわかりませんので、私の私見ということになります。 

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