私、明坂あゆみは、とても快適な 日々を過ごしている。


「月影の死神‐晩鐘パラノイア‐」というゲーム内に転生してしまった私は、毎日がデスゲームだった(実際には 始まる前 だったけど)。


知力をつくして、死亡フラグを回避しようとしたら、破滅フラグが立ってしまっていた。でも、その恐怖からやっと解放されたのだ。


はじめは、中学卒業という学歴で 生きていかなければならない絶望的な状況だった。この頃は、まだ『行方不明者』扱いをしてもらっているとばかり思っていたのだけれども、帰ってきてみれば『死亡届』が受理されていた。


世間では『遺体無き殺人』として、大きな ニュース となっていたそうだ。

(まさか。ゲーム内で過ごした1年間が、こちらでも 同じように時間が進んでいるだなんて……)


――そう。私は中卒どころか、真っ白な戸籍となってしまっていたのだ!



それが どういう事でしょう? いまでは、毎日が『推し活』です。

(お給料のほとんどを、推しキャラに あててます!)


ぐふふ。


たかだか 16歳の小娘、と思うなかれ。

お給料はなんと、20万円も頂いているのだ!(月給くもですが、なにか?)


そうなのだ。(無職の?)私に、お仕事を紹介してくれたのが 命の恩人でもある美羽さまでした。(ありがたや²)



その内容とは―――― ―― ………今のところ、ブサカワ猫の世話だけです。



そして、私が生活している場所はというと。

東京タワーの『7不思議』に入っている、誰も入れないといわれている『秘密の部屋』でした。


セキュリティ対策は万全らしいけど……。なんだか、幽霊とか出てきそうな部屋なのよね。ゲーム内で夫だった、卵頭ランドウ 公崇キミタカが出てきそうで怖いです。――あの体験は、今でもトラウマになっている。



それから。あのお話の つづき だけれども、、、


「死んだ娘が、3億円で売れた――」と家族に喜ばれて、とても複雑な心境だった。

その気持ちを汲んでか、美羽さまが、さらに、1億円を追加していただけた。


舞い上がる両親、札束に頬釣りをする姉とか、小躍りする弟には、マジ泣けた。


(そういうことじゃないんだよ……)


とりあえず、私が思い描いていた再会を再現するために、母親に抱き着いた。


「おかーさま! どうか無理をなさらず、お身体をご自愛して、(余生を)お過ごしくださいませ!」など言ったのが悪かったのか、ゲーム内でのキャラクターの口調がそのまま出てしまっていた。


母「はぁ? あんた、なに言ってんの」

父「おい、あゆみ。 頭でも打ったのか?」


――と、妙な心配をかけてしまったのだ。



そして、智也にはビデオレターを送ることにした。


智也というのは、こちらの世界で初めてできた恋人のことです。

いまでも、海へ潜って、私の身体を探してくれている。


私想いな、とてもカッコイイ 彼氏なのでした。



……。


今は、推し活に忙しいから。

ごめん。

また、後で動画を撮るから。


そうだ!

ブサカワ猫のナトリも 一緒に はいってもらおう。

(ひとりじゃ、ちょっと恥ずかしいから)


そんなことを考えながら、

「月影の死神‐晩鐘パラノイア‐ex」という ゲームを起動した。

追加要素で、新キャラが増えるだなんて フツーじゃないわ。


でも、オープニングアニメーションが 追加されているのは、ちょっと嬉しいわね。


モブキャラだけど、虹夜さんが車でねられるシーンも描かれている。


でた! 公崇さんだ……。




ん? いま、目が合ったような気がしたのだけれども―――、


気のせいよね……。


私は、画面の向こう側から、




手を 伸ばしてくる 公崇さんに ――――、





思わず、手を伸ばしてしまう……。




――と、そのときだ。



 ドンッ! ドンッ! ドンッ!



突然、大きな音が響いた。





まさか、この展開は――――。




閑話◇おわり

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